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異常者たちの哀歌

人は本当の愛を見つけるために恋をする

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普遍的なラブストーリー。それを思い描いて、それを叶えたものはどれだけのものか。当たり前を当たり前にやることは難しいことなのだ。人は本当の愛を見つけるために恋をする。そんな言葉を地で行くような女子だっているのだ。
彼女は誠実であった。少なくともそうなるように心かけていた。誠実に恋をしたら誠実な愛を貰えると思っていたから。だがそれはゆめ物語であった。
「もう別れよう。」何回聞いた事か。直接も電話もメールもSNSでも。その度に傷ついてきた。何もかもを捧げるような恋は、たった一言で破綻する運命なのだ。別れてしまえば他人だ。。愚直なまでに相手を信じて、愚直に裏切られ、愚直に相手を切り裂く。もうそれは一種のルーティンなのだ。裏切られて裏切られて、それでも人を信じ続ける。そんな彼女は
未来の目覚めはいつも最悪だ。だいたいは別れ話から始まる。いつからかこうなったのかは思い出せない位だ。
吸いなれない煙草を吸う。健気なまでに今の好きな人、リーコンについて行こうとしているのだ。つい肺に入れてしまってむせるものの、これが案外癖になる。
彼女には友だちはいない。正確にはいるのだが、その友だちとは紆余曲折があって絶縁状態だ。多いフォロワー数がその事の虚しさを感じさせる。
リーコンとは会う約束をしている。終始無言のまま慣れた手つきで化粧と着替えを終わらせる。
今度こそは上手くいくはずさ。自分を慰める言葉は時々惨めさを加速させることがある。散らかり切った部屋を出て、約束の場所まで向かうのだった。

「大智。デートって何着てけばいいんだ?」
「さては貴様童貞だな?」
「痛い所をつくんじゃあない。ホームラン王なら女ウケのいい格好だって知ってるだろう?」
大智は首を捻って、疑問形な様子だ。
「女ウケのいい格好?何それ?服なんて女の子に買ってもらえばいいじゃん。」
大智は別に金が無いわけではない。バイトはしてなくても、学年順位が上位にいるから、奨励金で生きていけるくらいには収入がある。だが、天然ジゴロ気質は貢ぎによってできている。そもそも服がないのなら買ってもらえばいいと言うのは、彼にとっては当たり前の発想だった。
「ヤクザな野郎だな。ろくな死に方しないぞ。」
吐き捨てるような嫉妬をぶちまけると、今度はイリイチのところに向かうのだった。
彼の部屋はとても綺麗だ。6畳の部屋には、パソコンとゲーム機と机があるだけ。台所も片付きすぎて、生活感を感じられない。
「何着てけばいいって…。そのまんまでいいじゃん。」
リーコンは普通に着替えていた。短パンにtシャツと、若干シンプルすぎるところがあるが、高校生としては普通の格好だ。
「デート楽しんでこいよ。」
時間に遅れると慌てて出て行ったのなら、イリイチの懸念を消し去るために第六感で感情の動きだけを追うことにする。
「なにも監視する程じゃないだろ…」
それ以外やることが無いなら、朝からゲーム。ロシアにいた時から平和な時間があったらやりたいと思っていたゲームをするのだ。
「なんで後ろから湧くんだよ。くそ。またキルレが1にいかねぇ。」
仕事は殺し屋で、趣味も趣旨は違うものの人殺し。当人は楽しいからいいのだ。同時並行で感情を追うことも忘れない。
「案外動きがないな。情状不安定とはなんなんだよ。あのライミー英国人野郎め。」
今は失脚して地下に潜っている負け犬野郎は、やはり嫌がらせが好きなようだ。感情の動きはごく普通。平均の域を出ていない。
「…!動いたな。」
感情が怒りに向いていく。リーコンはどうも狼狽えているようだ。これは…
「女子だな。このままじゃまずいぞ。殺し合いになる。リーコンは狼狽えてる場合じゃないだろ。」
とは言っても今のところは何も出来ない。一旦察知能力を最小限に抑え、経過を見守ることにする。
「マルボロソフト、タール12mg。完璧に近い煙草だ。」
1人で煙草レビューごっこをし始める始末。いよいよ現実逃避は本格的になってきた。
そうして吸っている間に舌打ちをする。
「リーコン。遅すぎだ。エロゲじゃねぇんだから、選択肢まってんじゃねぇよ。」
ようやく止めに入った所で第六感を強める。なるほど。好感度は下がってはいないな。爆発は避けられたようだ。
「全く…。ココ最近ろくなことが無い。」
自分の不運に気が付きつつあるが、まだ終わってはいなかった。
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