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欲求不満野郎

また次を。また次を

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「まるで張り合いがない。雑魚め」
学園最強。超能力者として生まれ、超能力者として生きる全てのものにとってその座は全てを投げ捨ててでも欲しい称号だった。思惑は違うとも、脳力は違うとも、性別は違うとも、それでも学園の生徒である以上、それ一つだけは統一した意思であった。
横浜校、かつてのお荷物校は変貌した。金の力で日本のみならず海外からもトップスターを集めることによって、12校の中でもトップクラスの時価総額をたたき出すことに成功した。まさに革命であった。
そんな学園で最強を目指し、学年の抗争を勝ち抜いた男がいた。そいつはたったの1人で、他の超能力者たちを蹴散らして行った。
999回目の勝利。もはや彼の爆走を止める輩は存在しない。上も下も右も左もこの世の全てを勝ち取るところまで来ていた。
記念すべき1000回目の勝利は誰から奪おうか。実際の所誰でもいい。もう彼より上は
そいつは女のように見えた。華奢な体付きに中性的な見た目。身長も自分より一回り小さかった。だが、目付きが違う。骨のありそうなやつだ。他の有象無象どもとはひと味違う。
暗い夜だ。最強をこの夜をもって生み出す為には不足はない。
闘いはあっという間だった。全力をもって挑み、そして全力をもって敗北した。悔しさや屈辱はなかった。たった1人で学園全体に挑み、勝ち続け、そして今日をもって終わりになった。
華奢な男、光義経、彼の瞳は夜のようだった。絶望に浸っているようにも、また新しい朝を待っているようにも見えた。
「終わりなき夢。終わらせてくれる現実はどこにあるんだろうな。」
悲しみにくれている訳でもない。むしろそれがくると確信しているかのようだ。


「全体1位か。ヘビーだな。」
大智は驚きを隠せていない様子だ。よりも更に強い男となると、もうそれは彼の哲学を大きく超えていた。
そしてやっていることも滅茶苦茶だ。2年生において1番の実力者であろうイリイチに懸賞をかけることによって、無理矢理こちらから手を出させようとしている。相手は生徒会会長だ。政治力では適わない。
「どれだけの実力者か確かめたいものだ。リーコン。誰か都合の良い鉄砲玉を用意できないか?」
「都合のいいヤツっていうのは畑から生えてくるみたいだ。反体制派たちに連絡を取ってみよう。」
生徒会会長。一見すると名誉ある地位についていて、周りから尊敬の意を寄せられているようだが、人間が郎党を組んでいる以上、不満は湧いてくる。その不満を仕事として扱っているイリイチからしたら、それは当たり前であるし、いないと困るのだ。
「いいねぇいいねぇ。3学年4位を中心に8位、12位、15位と連合軍が出来上がっているぜぇ!」
「情報を制す者が全てを制す!討ち入りは明日の夜決行だ!」
ヤツらがどれ程のものかオブザーバーしようか。
夜はやってきた。準備は周到だ。連合軍が集まるところにカメラを設置。フルHDのカメラは肝心なところを逃さない。ポップコーンとコーラを用意し楽しい楽しい狂言は始まる。
「よぉ、大将。今日をもってお前の天下は終わりだ。呼び出しに応じてくれてありがとう。心置き無く、人生初の殺人をクリアしてやんよ。」
「それは困るなぁ。前座で真打ちが終わったら、その後がつまらないじゃあないか。」
「ほざけ!こっちは4人いるんだぞ。これが本番だ。」
「中身のないやつほど数字を気にするものだ。だがまぁいい。こちらは1人で構わない。さぁ、掛かってこいよ、猿どもよ!」
闘いが始まった。まず仕掛けたのは連合軍の猿の1人。自分の超能力を仕込ませた日本刀で切り掛るのであった。それを軽やかに鮮やかに美しく躱す。そして自らの刀を鞘から出したならば、それはまた綺麗に身体を2等分する。こんなに優しい闘いは見たことが無い。相手にすら与えずに死を与える。確かに強い。だが…
「こんなものなのかな?真打ちの力ってのは。」
そんな疑問に問いかけるように、超能力を使用した闘いというのを見せてくれた。まるで魔法だ。休む間もなく次々に、相手の身体を壊していく。中々、いや、今まで見たことの無いバケモンだ。
「いいなぁ、こいつ!天才的だ!」
間抜けな猿の1人が空を飛ぶ。人類の長年の悲願もこの出鱈目な学園ではよく起こりうることだ。
「天夜叉か。だが残念。俺も似たようなことは出来るんだ。」
なるほど。確かに似たようなことだ。空を飛んでいるというよりは、大きくジャンプしているようなものだが。
空中高くに上がった2人は再び地上に戻る。空にはカメラがないのが残念だ。
「飯は食ったか?睡眠は?最後のオナニーは済ませたか?お猿さん。」
「ぐぁanjgpa!」
「日本語も喋れないとは、本当に猿だったんだな。動物愛護団体に見つかる前に、焼却しておこう。おい!武蔵!あとを頼む」
「御意。我が主人。」
狂言は終わり、コーラとポップコーンもなくなった今となっては、感動のあまり拍手を送るしかない。
「拍手をありがとう。楽しんでくれたようで何よりだ。」
ファンサービスを済ませると彼は彼方に消えていくのであった。
「さぁ、諸君…また次を創ろうか。」

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