幼きマフィアの頭領(ボス)は、きょうも銀の髪をなびかせ学校へ行く

東山統星

文字の大きさ
上 下
14 / 18
第1幕 We Will Rock You~馬鹿騒ぎの始まり~

014 魂と肉体

しおりを挟む
「キャメル・レイノルズという役割……」
「そう。所詮10歳児の戯言だと思ってくれても結構ですが、私はそう思っています」

 どう考えても10歳児の言うことではないが、キャメルは反論できない。それがすべてだろう。
 と、話し込んでいれば、

「おお、待たせたな」

 クール・レイノルズがやってきた。キャメルは彼を一瞥するが、やがて目をそらしてしまう。ルーシが語ったことをどう捉えたのかは分からないが、彼女なりに思うこともあるのだろう。
 そんなクールの背後から、少女が現れた。おそらく、パーラという少女だ。
 金髪のロングヘア、猫耳、赤い目、ルーシやキャメルよりやや高い身長。愛嬌たっぷりの表情。そんな子だ。

「キャメルちゃん!」
「あ、ええ。パーラ」
「キャメルちゃんがいるってクールさんが言うから、着いてきちゃった! せっかくデパートにいるんだから、アニメグッズ買いに行こうよ! ……あれ?」

 パーラは、ルーシを眼中に捉える。

「そこの子、誰?」

 ルーシは適当に返事する。

「ええ、ルーシ・レイノルズと申します」
「えーっ!? キャメルちゃんの妹?」
「いや、歳は6歳くらいしか変わらないですが、叔母と姪の関係です」
「ってことは、クールさんの娘さん?」
「そうですね」

 16歳か17歳のガキ相手に、へりくだるのも一興なのかもしれない。ルーシは薄く邪気のない笑みを見せ、そしてパーラの目をしっかり見据える。

「んー、良く分かんね! でも、ふたつ言って良い?」
「なんですか?」
「敬語使わないでよ! 私、誰かから敬語使われるの、苦手だし! あと、ルーちゃんって呼んで良い?」
「ああ、うん。良いよ」ぶっきらぼうだ。
「じゃあ、ルーちゃん! さっきメントちゃんって友だちからさ、銀髪の幼女にぶっ飛ばされたって訊いたんだけど、それってルーちゃんがやったの?」
「まあ、正当防衛ってヤツだよ」
「だったら良いや! メントちゃんも短気だからさ~。すぐヒトに喧嘩売るんだよね~。いつか痛い目見る、というか、いつも痛い目見てるのに、学習しないんだから!」
 (友だちなんだよな? なんでそんなフランクにけなせるんだ?)
「どうしたの~?」
「いや、友だちは大事にしたほうが──」
「大事にしてるよ~。メントちゃん、私がいなきゃ駄目なんだから! ところでさ、ルーちゃん」
「なに?」
「せっかく可愛いんだから、もっと派手な服着てみたら? なんなら私といっしょに服買おうよ!」

 会話が苦手なのだな、とルーシは心の中で毒づく。まあ、きょうデパートに来たのは服を買うためだし、パーラの私服は高校生相応のおしゃれさを持っている。ここは彼女に着いていくのが賢明かもしれない。

「そうしようか。ああ、お父さん。この学生服で良いや。ここの部分が焼かれちゃっているからさ」
「あたぼうだ。元の服に着替え直しな」
「うん、ありがとう」

 そんなわけで、ルーシとパーラ、ついでにキャメルとともに洋服を買いに行く。

(女物の服なんて良く分からねェからな……。コイツらの意見を参考にしつつ、露出が少なくて機能性の高いものを買うか)

 なにせ、元は男性だ。女性用の服や、ブラジャーやらその他諸々なんて知ったことではない。しかしそれを悟られても、良いことはない。ルーシの演技力が光る場面がやってきた。

「ルーちゃんさ、どんな服が良いとか決まってるの?」

 パーラがそんな質問をしてきた。ルーシは頭をかしげ、考えるふりをする。

「まだ決まっていないな。父からクレジットカードは借りたし、買い物はできるけど」
「じゃあ、私がコーディネートするよ!」
「なら、私もしてみようかしら」

 キャメルが割り込んできた。彼女流の子どもっぽい服を買うつもりはないが、まあ参考にするのも悪くないだろう。
 と、ここでルーシはふと思う。

(子どもっぽい服?  25歳の野郎が、幼女の皮被っているだけなんだぞ? 別に、服なんてなんでも良いじゃないかよ)

 やはり葛藤がある。それを解消できるかは分からないが、ルーシはふたりへ訊いてみる。

「ねえ、お二方」
「な~に?」
「なにかしら?」
「仮に、肉体と魂が一致しない場合、どうなると思う? 肉体に魂が追いつくのか、それとも肉体は魂の器にしか過ぎないのか」

 明らかに10歳の幼女が尋ねることではないが、同時にただの10歳児だと感じられても困るので、ルーシはそんな質問をしてみた。
 キャメルとパーラは明らかに悩んでいる様子だった。突然、こんな質問されて悩まないほうがどうかしている。
 そんな中、先に返事したのは、キャメルだった。

「そうね……。私の意見だけど、魂と肉体は別物だと思うわ。いくら肉体が入れ替わっても、魂は朽ちない。それに、魂と魔力を混ぜて起こす魔術もあるもの」
「なるほど。キャメルお姉ちゃんらしい意見だと思います。パーラはどう思う?」
「んー」
「別に直感で良いよ。あとから意見変えても良いし」
「んじゃあ、私はキャメルちゃんの逆! 確かに魂と魔力を混ぜる術式もあるらしいけど、それと肉体は関係ないっしょ! だってさ、毎日魂とは違う身体を見るわけじゃん? そしたらさ、いつか身体が魂と同化すると思う!」

 意見が見事に割れた。突発的に尋ねたので、ここまできれいな答えが返ってくるとは思ってもなかったが、どうやらこのふたり、なかなか頭がよろしいようだ。

「じゃあさ、ルーちゃんはどっちだと思う?」
「私?」
「言い出しっぺが、なにも考えてないことないでしょ!」

 パーラはあいも変わらず、満面の笑みでそう訊いてくる。

「そうだな……。今のところ、いつしか魂と肉体は同化すると思っているかね」
「私といっしょじゃん! いえーい!」

 ハイタッチを求められたので、とりあえず返してみる。
 そんな話をしているうちに、服屋の前へ着いた。
 そして、ルーシとキャメルは咄嗟に身構えた。彼女たちはパーラへ、「下がっていて」とだけ伝える。

「え、なんで?」
「店内、良く見てみろ。店中のヒトが伏せている」

 強盗事件である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

無職で何が悪い!

アタラクシア
ファンタジー
今いるこの世界の隣に『ネリオミア』という世界がある。魔法が一般的に使え、魔物と呼ばれる人間に仇をなす生物がそこら辺を歩いているような世界。これはそんな世界でのお話――。 消えた父親を追って世界を旅している少女「ヘキオン」は、いつものように魔物の素材を売ってお金を貯めていた。 ある日普通ならいないはずのウルフロードにヘキオンは襲われてしまう。そこに現れたのは木の棒を持った謎の男。熟練の冒険者でも倒すのに一苦労するほど強いウルフロードを一撃で倒したその男の名は「カエデ」という。 ひょんなことから一緒に冒険することになったヘキオンとカエデは、様々な所を冒険することになる。そしてヘキオンの父親への真相も徐々に明らかになってゆく――。 毎日8時半更新中!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

エンシェントソルジャー ~古の守護者と無属性の少女~

ロクマルJ
SF
百万年の時を越え 地球最強のサイボーグ兵士が目覚めた時 人類の文明は衰退し 地上は、魔法と古代文明が入り混じる ファンタジー世界へと変容していた。 新たなる世界で、兵士は 冒険者を目指す一人の少女と出会い 再び人類の守り手として歩き出す。 そして世界の真実が解き明かされる時 人類の運命の歯車は 再び大きく動き始める... ※書き物初挑戦となります、拙い文章でお見苦しい所も多々あるとは思いますが  もし気に入って頂ける方が良ければ幸しく思います  週1話のペースを目標に更新して参ります  よろしくお願いします ▼表紙絵、挿絵プロジェクト進行中▼ イラストレーター:東雲飛鶴様協力の元、表紙・挿絵を制作中です! 表紙の原案候補その1(2019/2/25)アップしました 後にまた完成版をアップ致します!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

戦車で行く、異世界奇譚

焼飯学生
ファンタジー
戦車の整備員、永山大翔は不慮の事故で命を落とした。目が覚めると彼の前に、とある世界を管理している女神が居た。女神は大翔に、世界の安定のために動いてくれるのであれば、特典付きで異世界転生させると提案し、そこで大翔は憧れだった10式戦車を転生特典で貰うことにした。 少し神の手が加わった10式戦車を手に入れた大翔は、神からの依頼を行いつつ、第二の人生を謳歌することした。

処理中です...