もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら

東山統星

文字の大きさ
47 / 80
チャプター2 実力と陰謀の学び舎、メイド・イン・ヘブン学園

047 怪物の手

しおりを挟む
この学校には陰謀がある。いつだか、誰かがいった言葉だ。
その言葉、その意味は、いままさにルーシが体験していることであり、そしてメントの表情からも、メントの目が泳ぐように動いていることからもわかる。
メントは何度も何度もルーシへ電話をかける。

「ルーシ!! パーラが……」

ようやくつながった電話口は、果たして誰を救うというのか。もう彼女のことは救えないかもしれないのに。

『……ニュースのとおりなら、もはやパーラの安全保障はできていない証明となる。私たちは致命的な失敗をした。いますぐパーラが入院している病院へ行くぞ。メリットにも伝えておいた』

ルーシは寝間着から、黒のツヤのあるスーツに紫のインナー、そしてトレンチコートを羽織って、つい最近子分になった峰へ電話をかける。

「峰。いますぐ軍用ヘリコプターチョッパーを用意しろ。軽機関銃と刀、ナイフもだ。刀は日本刀が好ましい。切れ味が良いからな。私の命令とともに出撃できるようにしろ」
『……どのような意図がお有りで?』
「我々は大義名分を得た。ネクスト・ファミリーによる一般人襲撃事件を見ただろ? 3人家族の獣人たちのニュースだ。父親と母親と思わしき者が殺され、娘がかろうじて生き残った。だが意識不明の重体だ。それを行った連中をぶっ叩くのは正義だろう?」
『まさかCEO自ら鉄砲玉のような真似をするつもりではないですか?』
「私の無法者としての人生は使い捨ての駒としてはじまった。だいたい……友だちをあんな目にあわせやがったヤツらは私の手で皆殺しにしねェと気が済まねェ」
『……承知しました。しかし、COOへも伝えておいたほうがよろしいのでは?』
「その判断はオマエに任す。とにかく、一刻も早く手配しろ」

ルーシは電話を切り、家から出ると、目をつむり、頭に流れ込んでくる法則を最適化する。

「重役出勤は通用しねェ。多少体力は削るが……」

パーラの居場所を特定し、ルーシは瞬間移動のように病院前へ姿を現す。
そしてそこには、ガタガタと唇を震わせるメントと、あまりにも非情な現実に表情を強ばらすメリットがいた。

「……もう確認する必要もねェが、改めて情報を洗うぞ」ルーシは普段の張り付いた笑顔を捨て去り、「きのう未明、パーラはマフィアに襲撃された。ご両親はふたりとも死亡。情報筋によると、パーラとパーラのお母様は強姦されたともいう。あえてパーラだけ生かされたのは、ウィンストン・ファミリーによる恐喝だろう。だが、そのパーラすら意識不明だ。つまり、私たちは……」

「…………ウィンストン・ファミリーへの報復とマフィアへの報復をする必要がある、ってことか。親友をあんな目にあわせやがったクソどもへ、相応の仕返しをするわけだ」

メントは涙すら流しているように見えたが、それでも怒りを強めることでその感情を抑えようとしている。

「そういうことだ。いま、パーラは集中治療室にいるだろう。私たちはそもそもあの子へ会うこともできない。だが……パーラは絶対に死なねェ」

「……なんでそう言い切れる?」メリットは怪訝そうな顔だ。
「ひとつ。殺す意味がねェからだ。これはあからさまな見せしめ。かろうじて死なない程度の暴行を加えたんだろう。ふたつ。パーラはこの私が死なせねェ。どんな方法を使ってでも、アイツを悪夢から甘美な世界へ帰らせてみせる」
「……確証があるとでも?」

「ああ……」ルーシは狂気が踊るような表情で、「私もよくそういったことをやっていたのでね。報復カエシはソイツひとりに行われるものではない。ソイツにとってもっとも大切な人間を惨殺することで成立するんだよ」

「……」メントとメリットは黙り込み、うつむいてルーシと目をそらす。
「ともかく、役割分担だ。私は実行犯を潰す。オマエらふたりは命令者を潰せ。メリット、オマエの魔術なら割り出すことができるはずだ。時間との勝負、敗北は時間が消えたときだ。ヤツらだってもう飛ぶバックれる準備はできているだろう」

ルーシはトレンチコートの内ポケットから拳銃を取り出し、が100パーセントになっていることを確認する。

「……それは、まさか」メントは緊迫感を隠せない。
「オマエらまで裏社会に関わる必要はねェ。そうだな……あくまでも学生の範囲内で報復カエシをしろ。そうでもしねェと……パーラがかわいそうだろ? これからアイツを支えられるのはオマエたちしかいないかもしれない」
「クソガキ、アンタはやっぱり……」
「想像に任す。だが、上等じゃねェか。畜生どもには相応の対価を支払ってもらおう」
「……根暗、行こう」
「……いわれなくとも」

メントとメリットは闘いへ向かっていった。
彼女たちだって、ルーシの正体に気が付けないほど盲目ではない。この時点で、ルーシがLTASエルターズ連邦軍最新の拳銃を持っているのを知った時点で、もはやルーシがそういった世界に住んでいるのは確定的なのだ。
だが、ルーシは気にしない。そんな些事はどうだって良い。

「怪物の手は、所詮人を殺すことしかできねェ。だが、それが必ずパーラを救うはずだ」

後悔はある。
パーラがなぜあそこまでウィンストン・ファミリーと関わるのを恐れていたのか。彼らのNo.2を潰したのに、なぜパーラは浮かない顔をしていたのか。実力と陰謀の学校MIH学園の陰謀が、ルーシたちと潰し合いをするほどのマフィアであることにどうして気がつけなかったのか。
しかし、その強い後悔すら、いまのルーシには関係なかった。

「楽しいねェ。これからいっぱい暴れられるんだ。たくさん殺して、たくさんの恨みを容赦なく踏み潰し、たくさんの畜生どもの人生に終止符を打つ。これがに与えられた定めだ。他のヤツらには絶対にできねェ」

峰が手配した軍用ヘリコプターチョッパーが降下してきた。ルーシは愉悦に狂った表情で、そのヘリに触れる。

「CEO、お疲れさまです!!」
「ああ、ご苦労。オマエらは下がって良いぞ。運転手もだ」
「え?」

ルーシの目つきを見て、これ以上の意見は命に関わることを知った彼らは、去っていった。

「ヘリ動かすなんて何年ぶりだろうな……。だが、案外簡単に動くものなんだよな。よし」

搭載されていた密閉型ヘッドホンをつけ、ルーシはヘリへ乗る。

「自動操縦ありか。良いねェ。装備もばっちりだ。軽機関銃、刀、ナイフ、エナジー拳銃。行こうか」

爆音とともに、開けた場所からヘリは飛び立つ。

「マフィア同士の喧嘩に宣戦布告は要らねェ。そして正義はこちらにある。あとは……どれだけ暴れられるかだな?」

目的地──ネクスト・ファミリー本拠地である高層ビルへたどり着く。場所はノース・ロスト・エンジェルス。富裕層の街だ。なので、ルーシは気を払い、とりあえずミサイルをビルへぶつけた。

「おお、爽快だな。だがこのくらいじゃぶっ壊れねェよな?」

ミサイルを撃ち続ける。さすがマフィアの本拠地といったところだろうか。倒壊することはなさそうだ。
続いてナパーム弾。ミサイルでこじ開けた壁へ向けて、弾をもって構成員を殺していくという算段だ。

ルーシは気が狂ったように、いや、彼の本性が現れたように猛り笑い、
「やはり一方的な暴力は楽しいなァ!! なにもできずに死んでいく連中の無様な顔!! だがてめェらは死んで当然のクズどもだ!! 刺される覚悟なく、無法者なんてできないもんなぁ!? さあ……本番開始だ」

そういったころには、ルーシはヘリを自動操縦でビルへと突っ込ませて、彼自身は「銀鷲の翼」を展開して風の流れを支配しながら数10メートルにも及ぶ翼とともに、軽機関銃による掃射を開始する。
このときになれば、さすがにネクスト・ファミリーのチンピラどもも異常事態に気が付き、武器をもってルーシを撃ち落とそうとした。
だが、無意味だった。ルーシは確実に彼らの頭を撃ち抜き、流れ弾も再生能力で無義にしてしまう。

「もっと骨のあるヤツはいねェのか!? てめェらじゃ役不足なんだよなぁ!!」

ルーシは左側の翼をビルへ差し付ける。それはもはや、包丁でとうふを切るように、あっさりとビルを二分割した。

「もう後戻りはできねェなあ……。だが、罪はてめェらが背負うんだ。なんの心配も要らねェ!!」

真二つになったビルの下部へ、ルーシは降り立つ。うめき声しか聞こえない。ルーシはそれらをひとりずつ、丁寧に殺していった。

「やかましいんだよ、虫けらが」

ここまで殺したのだ。ネクスト・ファミリーもなんらかの対策を考えるはずだ。
そして、ルーシは殺気を感じ取る。
なんらかの攻撃が起きた。ルーシは寸のところでそれを交わす。

「へェ。すこしは骨のありそうなヤツが出てきたじゃねェか」
「セブン・スターズ候補員フィリップだ。ネクスト。ファミリーと同盟を結んでいるのでね。仕方なくオマエを消しに来た」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...