もしも最強の無法者が銀髪碧眼幼女になったら

東山統星

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チャプター1 銀髪碧眼幼女、LTAS(エルターズ)に立つ

009 メインヒロイン(笑)

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 身長わずか150センチ。幼い顔。サラサラした銀髪。青い目。張りのある肌。当然邪魔なひげもムダ毛も生えてこない、至って普通の10歳の幼女。
 そんな幼女ルーシは、クールというナイスガイであり姉弟分である男の持ってきた教科書を読みながら、天使──ただしアル中かつアホでポンコツを極める、ピンク色の髪の毛をした女ヘーラーの奇妙な踊りの中心部にいた。

「アニキ、あれいったいどういうことなんです?」
「さっぱり分かんねェ……。つか、ダンスのキレが悪いな。酒の飲み過ぎじゃねェの?」

 ルーシは気にすることなく教科書を読みすすめる。理由は単純。この世界の住民であるクールへ「給付金入学」を聞いてみた結果、それは基本的には推薦入学と変わりがなく、学力試験も科せられるらしいからだ。
 ついでにクールの母校を聞いてみると、「メイド・イン・ヘブン学園」という学校へ高等部と大学部に在籍していたらしい。急速的な成長を続ける彼らの国「ロスト・エンジェルス」随1の名門校であり、その歴史は100年。独立直後から存在していたらしい。

「調べりゃわかるものだな。たまには勉強も悪くねェ」
「る、ルーシさ~ん……さ、さすがに疲れてきたんですけれど……」
「世界で一番うめェ酒が飲みたいんだろ? だったらおれの身体に魔力を開発すべきだ。ちゃんと交換条件は与えたんだから、サボッたら承知しねェぞ?」
「ヘーラーにはわかる……こんな妹はいないって……。天使を酒で釣るような10歳の妹はいないって……神なんて最初からいなかったんだ!!」
(天使がそんなこといっていいのかよ。粛清されるんじゃねェのか、コイツ)

 とはいえ……。

「よーしよーし。なにやら身体に異物が入ってきた気がするぞ。あと一時間頑張りな」
「は、は~い……」

 数多の薬物を使ってきた生前のルーシですら知り得ない感覚。超能力者として様々な問題に直撃し、そのたびに身体へなにか新しいものが流れ込んできたこともあったが、それとも違う感覚。これが魔力である。

 *

「あー、昔の相棒が勉強は息抜きだって言っていた理由がわかってきたぜ。小学校中退でも、案外なんとかなるかもな」
「……そ、それはよかったです。けれども……世界で一番おいしいお酒は本当にあるんですか?」

 ヘーラーは熱病でも出したかのように、その場に寝転がって動けなくなった。

「ああ、あくまで主観になってしまうが、あれが一番だと思う。ちょっと待っていろ」

 ルーシは個室から出ていき、表のバーに向かう。しかし客として飲むわけではない。CEO特権で、裏側にある多数の酒を持ってくるだけだ。

「一応頑張ったんだし、本当に良い酒をくれてやるか」

 ルーシが生前活動していた寒い地域では、その分酒へのこだわりを持つ者も多い。男性の死因の上位にアルコール中毒があるほどである。そんな国の贅沢、最高級の700ミリウォッカを手に持つ。
「こんな高けェのをくれてやる日が来るとは……。つか、酒の味とかわからねェんじゃないか?」

 天界の事情は知らないし、そもそもそんな世界があるのかも眉唾だが、ルーシへ魔力を注入できるあたり、すくなくともこの世界の住民ではないのは事実だ。そんな者が酒の旨味を理解できるのだろうか。
 まァ、別に自分の金ではないので、どうでも良い話だな。

「ほら、アル中」
「……こ、これはっ!!」驚嘆を隠さない。

 値段にして1500万円ほど。こちらの金に換算すると15万メニー。最上級の贅沢品である。

「おお、わかるみてーだな」
「……このロスト・エンジェルスへ来てから数多のお酒を飲みましたが、こんなにもおいしそうなお酒ははじめです。きっと私は神に愛されているのでしょう!!」
「先ほど神を否定していたヤツの言い分とは思えんな……。ま、好きに飲めよ。祖国じゃストレートで飲んだが、第2の祖国ではコーラとかレモンで割って飲むヤツもいたな。ひとついえることは、すくなくともラッパ飲みするようなもじゃ──」

 グラスに注いでそのまま飲む。氷を入れて飲む。ジュースや炭酸水で割って飲む……通常のウォッカの飲み方はこういった例があげられるだろう。ましてやこのウォッカは工業用アルコールのような安物ではない。富裕層が記念日にすこしずつ飲むようなものだ。
 それらを踏まえ、天使の飲み方を見ていこう。

「ああ!! マジうめえ!! やはり酒はラッパ飲みに限りますね!!」

 ルーシは思わず首を横に振った。コイツがどんな理由でロスト・エンジェルスに来たのかは知らないが、どうせ天界とやらでも無駄飯食いだったのだろう。
 空気が読めず、人の忠告も聞けず、頭が弱く、アル中で、ピンク色で、失禁済みで、25歳にもなって処女。

 非情で無慈悲なルーシは、この国に来て、銀髪碧眼美少女になって、2度目の同情をした。

「……まあ、好きにやってくれ。吐かねェようにな。クールの子分どもに掃除させるのもかわいそうだ」
「失礼な! 私は天使なので吐きませんよ! 当然うんちもしません!」
「しかしションベンは漏らすと。おまけにクソしねェだと? どおりで口が臭せェはずだ」
「て、天使は口臭くないですよっ!?」
「……いや、その、おれもあまり言いたくないんだ。口臭は当人も自覚していないことも多いしな。しかもオマエは女だ。おれも女になってから余計に歯磨きに気を使うようになったし、かなりデリケートな話だってことは分かっている。だが……ひとついわせてくれ。オマエ、最後に歯磨きしたのいつだ?」
「……5か、1ヶ月くらい前かな~。夜は眠くなっちゃうし、朝は忘れちゃうし……。で、でも、私は浄化術式を使っているので、匂いは無いはずですよ?」
「……これから1日3回歯磨きしろ。あと、おれのフリスクやるから」
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