上 下
7 / 80
チャプター1 銀髪碧眼幼女、LTAS(エルターズ)に立つ

007 初シャワー♡

しおりを挟む
 ルーシ・スターリングはシャワーを浴びていた。
 真っ白な身体。未発達ながら引き締まった身体。左腕にはトライアングルのタトゥー。右腕には龍の和彫り。首元にネックレスのタトゥー。腹部にフリーメイソンの象徴のような目の玉。両足には虎の和彫り。とてもではないが、10歳の少女の身体ではない。

「やることは多いな。服がねェし、髪も切らなきゃならない。ひとつずつクリアしていこう」

 シャンプーで髪を洗う。背中が隠れるほどの長髪であるため、時間がかかる。きれい好きなルーシとしては入念に洗いたいのだが、どうしても男だったころの短髪になれてしまっていると、少々苛立ってしまう。
 対照的に身体を洗うのは簡単だ。150センチほどの身長しかないので、丁寧に洗ってもそこまで時間はかからない。デリケートゾーンには陰毛は生えていないし、中身も男時代だったら大喜びするような見事なピンク色だったため、ややテンションをあげながら全身を洗う。

「さーて……服を替えたいな。全身が隠れるのは良いんだが、寒い上に血がついてやがる。しかし10歳程度のメスガキの服なんて買ったこともねェしなァ……」

 そんなわけで同年代の友だちが欲しくなってくるが、それはないものねだりである。アル中天使にコーディネートしてもらうことも一瞬考えたが、どうせやたらと露出の高い服を買おうとしてぶん殴るだけだと感じたので、ひとまずはひとりで購入することにした。

「……全員寝ちまったか。夜通し飲んでいたしな」

 クールは爆睡していた。ルーシと飲み比べ対決をしていたのだが、最終的にスピリタス1気飲み勝負となり、彼は2本目を飲んだ時点で倒れた。たいしてルーシは4本目で限界を感じ、18歳から10歳になったことを改めて自覚したのだった。

「だが、また飲みたくなってきたな。残った分を全部飲むか」

 時刻は午後3時。デパートの開店時間がおそらくは午前9時ごろであるため、6時間もの時間が空いてしまう。インターネットもゲームも本もある世界なので、ルーシは置かれていたノートパソコンを開き、ウイスキーをストレートで飲みながら、紙巻煙草を咥える。

 そんななか、
「起きてたのか。アニキといっしょに酔いつぶれたと思ってたが」
 ポールモールが声をかけてくる。

「ああ、慢性的な不眠症でね。最低でも2週間起きていないと眠れないんだ」
「2週間? 不眠症の域を超えてる気がするな。というか、よくそれで死なないな」
「ま、身体が慣れているんだよ。1度寝始めると30時間は起きねェしな。しかも優秀なボディーガードがいないと安心もできない。と、いうわけで、勝負だ」

 ルーシはウイスキーの瓶とグラスをふたつ置く。ポールモールはニヤッと笑い、グラスを持った。

「アニキよりは酒強ェぞ、おれは」
「そっちのほうが面白い。1本じゃ足りないくらいに飲みまくろうぜ?」
「上等だ。10歳のガキには負けねェぞ」

 ルーシとポールモールは飲み始めた。

 25本目。時刻は5時30分。ルーシもポールモールもやや酔ってきた。

「よォ……なかなかやるじゃねェか。こんなときは腹割って話そうぜ、ポール」
「ああ……まず、オマエは何者なんだ?」
「私は……前世の記憶があるだけだ。おぼろげだがな」
「ほう……前世でも無法者やってたのか?」
「まあな。たくさん殺してたくさん奪った。だが……求めているもんはそれじゃなかった」

「へェ…………。ああ、眠たくなってきた。オマエの勝ちだな」
「ああ、泥水になってこい」

 勝敗は決した。いままでで一番の強敵だっただろう。前世でも酒に強いヤツはいたが、ルーシ自体が弱くなっていること、ポールモールがかなりの酒豪であることを鑑みれば、かなりやりがいのある勝負だった。

「……さて」

 今度こそパソコンを開く。インターネットで調べることは、この国における幼女の服装だ。

「悪目立ちせず、機能的で、寒くなく、軽いものだな」

 生前はスーツかアロハシャツなどを中心に着てきたが、女子になったいまとなればその服装は通用しない。ふたたびスターリング工業のCEOとなったのでスーツは購入予定で、腕時計やネックレス、ピアスとブレスレットは最低限揃えたいものだ。
 とはいえ、それらはあくまでも裏社会にいるときの格好で、表にいるときにはあまり派手な服装はできない。

「デザインが良いと高くて機能美がなく、悪目立ちしなさそうなヤツは地味だな……。だいたい、おれはカネ持っていねェってことにいま気がついた」

 生前は学校からカネをもらって投資で増やしたが、いまはもとになるカネがない。手持ちの現金は100メニーほど。日本円換算で10000円である。安めの服ならば揃えられるだろうが、そうしたらカネが消え去ってしまう。
 そこでルーシは検索ワードを変える。「高校 特別給付」と。

「ヒットしたな。資本主義国家らしく、学校までカネのニオイがしやがる。どれどれ……」

 魔術を扱う高校では、主に3つの入学方法があるとされる。
 ひとつは学力試験で合格すること。もっともポピュラーな入学方法らしい。
 もうひとつは推薦入学。学校、あるいは有力な魔術師に推薦してもらうことで入学できる。
 そして最後。ごく一部の学生にしか当てはまらず、ごく一部の学校しか採用していない方式。

「学校側が生徒に金を支払い、広告塔として知名度向上が可能なほどの実力と……セブン・スターズ? へ推挙できるほどの総合力を求められる……セブン・スターズってなんだ?」

 すぐさま検索ワードを変える。「セブン・スターズ」と。

「セブン・スターズとは、ロスト・エンジェルス連邦共和国における最高戦力である……同国におけるもっとも優れた魔術師を7人選出して構成されるため、セブン・スターズと呼ばれる、と」

 読み勧めていくと、理論上はガリアやブリタニカ、ルーシ帝国といった大国の魔術師軍集団をひとりで壊滅させることができるほどの実力を有しているらしい。軍集団は数十万人ほど。中小国が総動員した軍隊と同等程度の数字だろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...