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シーズン1 チャプター1 おれわるい スライムむすめ じゃないよ
023 デパートメントとタイラー
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車に乗ったおれと小粋。今回は前みたいに150キロオーバーで公道レースをしないらしい。シートベルトを締める余裕があるほどだ。
ただ小粋の目の色は違う。なにかとんでもないことをしでかしそうな面持ちだ。
「タイラー、あの女と会ったんだろ?」
「あの女? それより、タイラー?」
「クラリスだよ。あのクソアマ、すべて自分の思い通りに進むと思いこんでやがる」
「だからタイラーってなんだよ」
「あ? タイラントって言うと不機嫌そうになるから愛称だよ。女っぽいほうが好みか?」
「ああ、そういうことか。タイラーで良いぞ。良いあだ名だ」
タイラーことおれは、図らずともニヤけてしまう。素晴らしいあだ名じゃないか。長距離砲の助っ人外国人選手みたいだ。
「んで、なんの話だっけ?」
「結構マイペースだよな、タイラーって。クラリスの話だよ」
小粋は呆れ気味におれへそう言う。クラリス……そういえばクラリスが命令してきたから異世界人のアイツらをぶん殴ったんだよな。って、結局アイツの思い通りに進んじゃっているじゃねーか。
「良いか? デパートメントは胸糞悪い場所だと思えば良い。異世界人がロスト・エンジェルスやその他の国から拉致してきた怪物たちを売り飛ばすところだ。どう思うよ、タイラー」
「まず怪物の定義が分からんな。スライム娘のおれ、鬼のオマエは分かるにせよ」
「人面鳥、吸血鬼、ゾンビ、蛇女……その他無数ってところかね」
「“人権”がねえと?」
「そうだ」
そうこうしている間におれたちは目的地へたどり着いた。
小粋は転生者の3人組から抜き取った招待状をおれに渡してくる。
「一応言っておくけど、あんま騒ぐなよ? 勘ぐられるとまずい」
「だいたいなにしに行くんだよ? ぶっ壊すだけだったら静かにしてる理由もないだろ?」
「見てれば分かるさ」
返答をはぐらかす小粋。そんなわけで東京ドームを半分にしたような広さの会場へふたりは入っていく。
「うお。オークションとかじゃないんだな」
「値段は予めついてる。さて、愛しの彼女を探しに行くか」
そう言うと小粋はおれから離れてしまった。なにをしたいのか分からないヤツである。
デパートメント。ここでは様々な怪物たちが手錠をつけられてアクリル板ケースらしきものの中に入れられている。ほとんどの怪物たちに生気はない。確かに胸糞悪い場所だ。
また、小粋が言ったように『人面鳥』や『吸血鬼』、『ゾンビ』に『蛇女』と空想上でしか存在できない怪物たちがうようよいる。まあスライム娘もそういう意味では大概ではある。
そして小粋の思惑を考えていた頃、おれはある少女に目を奪われる。
「……なーンか思い当たる節があるんだよなぁ」
おれの目を奪ったのは、なんてことのないスライム娘だった。やはり生気はなく、人間のフォームから溶けかけてしまっている。
でも、いまのおれを5年間ほど若返らせたら、たぶんこんな見た目になるんだろうな。
ただ小粋の目の色は違う。なにかとんでもないことをしでかしそうな面持ちだ。
「タイラー、あの女と会ったんだろ?」
「あの女? それより、タイラー?」
「クラリスだよ。あのクソアマ、すべて自分の思い通りに進むと思いこんでやがる」
「だからタイラーってなんだよ」
「あ? タイラントって言うと不機嫌そうになるから愛称だよ。女っぽいほうが好みか?」
「ああ、そういうことか。タイラーで良いぞ。良いあだ名だ」
タイラーことおれは、図らずともニヤけてしまう。素晴らしいあだ名じゃないか。長距離砲の助っ人外国人選手みたいだ。
「んで、なんの話だっけ?」
「結構マイペースだよな、タイラーって。クラリスの話だよ」
小粋は呆れ気味におれへそう言う。クラリス……そういえばクラリスが命令してきたから異世界人のアイツらをぶん殴ったんだよな。って、結局アイツの思い通りに進んじゃっているじゃねーか。
「良いか? デパートメントは胸糞悪い場所だと思えば良い。異世界人がロスト・エンジェルスやその他の国から拉致してきた怪物たちを売り飛ばすところだ。どう思うよ、タイラー」
「まず怪物の定義が分からんな。スライム娘のおれ、鬼のオマエは分かるにせよ」
「人面鳥、吸血鬼、ゾンビ、蛇女……その他無数ってところかね」
「“人権”がねえと?」
「そうだ」
そうこうしている間におれたちは目的地へたどり着いた。
小粋は転生者の3人組から抜き取った招待状をおれに渡してくる。
「一応言っておくけど、あんま騒ぐなよ? 勘ぐられるとまずい」
「だいたいなにしに行くんだよ? ぶっ壊すだけだったら静かにしてる理由もないだろ?」
「見てれば分かるさ」
返答をはぐらかす小粋。そんなわけで東京ドームを半分にしたような広さの会場へふたりは入っていく。
「うお。オークションとかじゃないんだな」
「値段は予めついてる。さて、愛しの彼女を探しに行くか」
そう言うと小粋はおれから離れてしまった。なにをしたいのか分からないヤツである。
デパートメント。ここでは様々な怪物たちが手錠をつけられてアクリル板ケースらしきものの中に入れられている。ほとんどの怪物たちに生気はない。確かに胸糞悪い場所だ。
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そして小粋の思惑を考えていた頃、おれはある少女に目を奪われる。
「……なーンか思い当たる節があるんだよなぁ」
おれの目を奪ったのは、なんてことのないスライム娘だった。やはり生気はなく、人間のフォームから溶けかけてしまっている。
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