上 下
14 / 49
シーズン1 いざMIH(メイド・イン・ヘブン)学園へ

014 しぶいイケオジがなんで生娘に!?

しおりを挟む
「ま、メビウスさんがどっちを選ぼうと、その選択は尊重してやらんとな」

 警察署長が現れたのを見て、モアとジョンはメビウスが如何にして少女になってしまったのか説明するのだった。

 *

「──ちゃん。お姉ちゃん。起きて」

「……ああ」

 最近はウトウトと眠ってしまうことは減っていたものの、きょうは加齢によるそれが起きてしまった。捕まっておいて眠りこけるなんて何様のつもりだ、と言われても仕方ない。
 そんなわけでメビウスは目を覚ます。目の前には金髪のぐるぐるメガネの孫娘モアと、最近やたら会う気がするジョンがいた。

「悪いな。気がついていたら眠っていた。歳はとりたくないものだ」

「ははッ。メビウスさん、その見た目で年齢のこと言ったら煽りにしか聞こえませんよ?」

「見た目の問題ではないのだよ。肉体と魂が同化するのであれば、すくなくともそれは数ヶ月程度の時間が必要だ」

「まあ予想がつかないのが未来じゃん? おじいちゃんがお姉ちゃんに収まる可能性だってあるわけで」

「どうだろうな。さて、釈放されたのか? わしは」

「だから“わし”なんてシワシワ一人称ダメだって言ってるじゃん! 時代に合わせていこうよ!」

「理不尽な話だ……。さあ、帰ろうか」

 一連の話が終わり、メビウスはある種当然の摂理として帰宅しようとしたときであった。
 一応押収されていて、いまジョンが持っている携帯電話が鳴った。メッセージのようだ。

「クール・レイノルズ……。メビウスさん、浮気っすか?」

「手合わせの打ち合わせをしていたのだよ」

「だったらおれと喧嘩しましょうよ。おれも喧嘩好きっすもん」

 そうやってメビウスとジョンが談笑している中、モアは顔芸のごとく口を開けていた。

「どうした? モア」

「え、なんでおじいちゃんが大統領の連絡先持ってるの?」

「そりゃ、教え子だからかのう」

「……自然な感じが良いよね」スマートフォンでメビウスを捉え、「じゃなくて! おじいちゃんはジョンさんや大統領の師匠だってこと?」

「そうだよーん。魔術のイロハは全部叩き込んでもらったな。おれらメビウスさんを崇敬してるんだからさ」

「やば……。軍人としてすげえのは知ってたけど、そんなに強かったんだ」

 なんというか、尊敬の眼差しというよりは恐怖の感覚のほうが強そうだ。最近までジョンの正体にも気がつけなかったほど鈍いモアではあるが、強者へは一定の敬意を払うのが流儀らしい。

「それで? このおれジョンを手合わせ要員に選ばなかったわけは?」

「ああ。やはりヤツの口からしっかり訊きたいのだ」

「なにを?」

「反社会的勢力『スターリング工業』とのつながりの全容だ。あの企業もどきのNo.2として、ヤツはたしかに在籍していたはずだからな」

「へえ……。クールの野郎をぶっ潰すつもりですか?」

「ヤツが説明義務をしっかり果たせば、その危険性はあるまい」

 蒼龍のメビウスの碧い目が、眠っていた覇気を取り戻した、とジョン・プレイヤーは確信した。

 かくして、メビウスは単身でクール・レイノルズのもとへ向かっていく。

「メビウスさん、目つきがガチだったな~」

「あたしたちは行かなくて良いんですか?」

「おれァ仕事があるし、モアちゃんが行くかは自分次第だ。まあもっとも……連れてってくれねェかもな」

 耳が聴こえやすくなったメビウスは、その会話を拾っていた。

「モア、悪いがジョンの言う通りだ。わし……私ひとりで向かわせてもらいたい」

 師弟喧嘩に孫娘を巻き込めるか、という話である。これから起こることは、いわば戦争級の殴り合いだ。そんな場所に最愛の孫を連れて行くわけにはいかない。
 というわけで、メビウスは大統領府へ飛び立っていくのだった。

「え? おじいちゃんいなくなっちゃった」

 モアがポカンと口を開けていると、ジョンが発奮したかのように説明を始める。

「すげェ……!! やっぱり空間支配は健在なんだ。なにも存在しない場所を引き裂き、空間移動を自在に行うメビウスさんの移動術式……!! すげェなぁ。やっぱあのヒトすげェよ」

「空間移動? 空間支配? じゃあ、おじいちゃんはどこ行ったんですか?」

「そりゃもちろん、クールの居場所だろ」

「へ? それって20くらいワープしてることになりますけど?」

 20キロメートル。おおよそハーフマラソンと同じ長さである。なお、そのマラソンの平均タイムは2時間弱といったところか。

「全盛期は100移動できた御方だぞ? モアちゃん、メビウスさんを過小評価し過ぎだ」

「そこまで来ると意味分かんないです……。あたし、まだおじいちゃんへの愛情が足りなかったかも」

 *

「おい!! なんだよいまの魔力は!!」

「カイザ・マギアは使われていないんだよな!? ただ魔力に睨まれて気絶してるのか!?」

 最初から魔力を全開で進んでいったほうが楽だ。クールがメビウスの魔力を感知できないはずがないのだから。
 しかし弊害もある。防御していない相手からすべての魔力を抜き取る術式『カイザ・マギア』を使っていないのにも関わらず、淀んだ魔力が自由解放されている大統領府前公園の木をへし折り、わしに睨まれたと錯覚した者が倒れ込む。
 とはいえ、危害を加えようというわけではないので、公園のベンチに座りながらクールが出てくるのを待つ。

「オラァ!! 誰じゃ大統領府前公園を荒らしたバカタレはァ!! おれへの宣戦布告か!?」

 日陰に入ってのんびりしていると、そんな大声と6枚の炎の翼が見えた。そしてその翼のひとつはメビウスを焼き殺すために凄まじい速度で伸びていく。

「……。ふむ」

 メビウスの右手の爪が、空想上の世界にしか存在しない“龍”の爪に変わる。腕にはうろこが生え始め、数パーセントほど龍王……いまの姿では龍娘となった。
 そして一直線に伸びてくる炎の翼に向け、メビウスは右腕を思い切り振るう。
 ボオ……。という音は炎がしなびたことを決定づけた。
 ここで背丈が高くて男前な茶髪の教え子クール・レイノルズはメビウスの正体に気がつく。

「メビウスさんじゃないですか!! しぶいイケオジがなんで生娘に!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

琥珀と二人の怪獣王 二大怪獣北海道の激闘

なべのすけ
SF
 海底の奥深くに眠っている、巨大怪獣が目覚め、中国海軍の原子力潜水艦を襲撃する大事件が勃発する!  自衛隊が潜水艦を捜索に行くと、巨大怪獣が現れ攻撃を受けて全滅する大事件が起こった!そんな最中に、好みも性格も全く対照的な幼馴染、宝田秀人と五島蘭の二人は学校にあった琥珀を調べていると、光出し、琥珀の中に封印されていた、もう一体の巨大怪獣に変身してしまう。自分達が人間であることを、理解してもらおうとするが、自衛隊から攻撃を受け、更に他の怪獣からも攻撃を受けてしまい、なし崩し的に戦う事になってしまう!  襲い掛かる怪獣の魔の手に、祖国を守ろうとする自衛隊の戦力、三つ巴の戦いが起こる中、蘭と秀人の二人は平和な生活を取り戻し、人間の姿に戻る事が出来るのか? (注意) この作品は2021年2月から同年3月31日まで連載した、「琥珀色の怪獣王」のリブートとなっております。 「琥珀色の怪獣王」はリブート版公開に伴い公開を停止しております。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...