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シーズン2 小卒が高校生に!?-A Kind of Mgaic-
P7 妹? ラキナの登場
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結局、一文無しだ。
ラークは公園のベンチにて寝転がりながら、タバコに火をつける。身体はガタガタだが、かろうじて動ける。
そして、煙に喉を犯され、ゲホゲホと咳き込む金髪幼女がそこにいた。
「タバコなんて吸うモンじゃねェな」
年齢と性別が違うのならば、それはもはや別人だ。いっそのこと禁煙してしまおうか。
そして、知育玩具でも買い与えられたかのように砂場で城を作る白髪の少女も同伴している。
最前の記憶が正しければ、この少女はラークの『妹』だ。
(放ってもおけないな。なぜか)
というわけで、
「ラキナ、帰るぞ」
「もう少し待ってよ。ロスト・エンジェルスの旗を掲げないと」
「別に良いが、それならおれはオマエ置いていくぞ?」
「せっかちだな~ラークは」
「オマエにおれのなにがわかるんだい?」
「妹だもん。全部だよ」
なかなかクレイジーな少女だ。一方的に妹と名乗ってきて、全部知っていると豪語する。
だからラークは、なんとなく聞いてみる。
「おれがきのう食ったものもわかるのか?」
「ガリアパン一個でしょ? 値段は二メニー。食べた時刻は夜の9時28分。2分で完食。お金がないから、それだけしか食べられなかった」
「子どもにストーカーされている場合でも、警察って動くのかね?」
完全に当てられた。しかも当人が覚えていない時間まで。
ラークはうつむき、意気消沈とした態度でもう一度タバコに火をつける。
「ラキナにとって唯一のお兄ちゃんなんだから、それくらい知ってないとダメでしょ。あと、未成年喫煙は良くないよ」
「中身が25歳でも?」
「だって買えなくなっちゃうもん。やめられるうちにやめなよ」
「それもそうだな……」
「ポイ捨てもダメだよ? DNAが悪用されちゃう。まあ、だいたいラキナが回収するんだけど」
「なあ。すっとぼけた態度でストーカー告白やめようぜ? 今どきのガキは、ませすぎだな」
「欲求を我慢して良いことあるの?」
子どもは、時々簡単で難題な質問をしてくるから嫌いだ。
しかも欲求がラークをストーキングすることなのだから、いよいよ止められないかもしれない。
「そしてラークはませなさすぎ。美人系の幼女やってる自覚ある?」
「ねェよ。身体がガキのころに戻っただけだ」
「服装もいい加減だし。元カノの服でしょ? 後生大事にとっておく必要ある?」
なお、ラークの服は元彼女のものである。小柄な女子だった。結局別れたが、こうやって忍びないと感じて捨てなかった服が、なぜだか役立っているのだ。
「別にどうでもよくないか? 野郎に好かれて良いことないし」
「女の子に好かれれば良いじゃん」
「女性の同性愛者は60人にひとり。そのなかから好みを選別するのは至難だ」
「ラキナはいつでも準備できてるけど」
「おれはロリコンなんかじゃ。誰がオマエみてーなガキで勃つか……勃つものもないって思ったな?」
「うん。事実だからね」
悲しき我が人生。ひょっとしたら二度とこの姿から抜け出せないかもしれない。それはつまり、男性としてのラークの終焉なのだ。
そうやってラークは自身の持つ惨めさを嘆くように、吸い殻を携帯灰皿へ捨てた。
「悔しい、悔しすぎる……」
あまりにも忙しくて忘れていた。今のラークは幼女だ。誰がどう見たって美形の幼女だ。
そんな立派な美幼女は、その顔立ちと雰囲気に似合わず、頭を抱えてうつむく。
「まーまー。女の子も楽しいよ」
「なにをどうやって楽しいって感じるんだよッ!! 野郎の性欲集めて、発散できるものなんてないだろうが!!」
「変なこと言うね。お金払ってでも、ラークみたいになりたいヒトたくさんいるだろうに」
平行線である。ラークの文句は正論だが、ラキナもある意味正論を述べているのだ。だから交わることはない。
そして、この場合折れなければならないのはラークのほうだ。現状男性に戻る手段がないのだから。
「ははッ……。怪我の功名はそもそも、瀕死並みの怪我くらわないと発動しないってか」
「でもさ、その分おいしいところもあるでしょ」
「……、悪魔の片鱗か」目を細める。
「見た目が変わろうと、性別が変わろうとヒトの考え方は変わらない。でも、変わらないんだったらやることも手っ取り早いでしょ? 邪魔なものは壊して、欲求は他人を奴隷にすればどうとでもなる。問題はその腹積もりが立ってるかどうかだよ」
人間の本質は欲望だ。ラキナの語ることはもっともだと感じた。考え方が似通っているから兄妹だと断言している節もあるだろう。
ラークは空を眺める。そして冷静に自分を見据える。
「おれの欲望か。そりゃきっと、かわいい女や男に囲まれて、ハーレムパーティ24時間365日だな」
「男も入ってるんだ」
「むさ苦しい野郎はいらないけど、美形だったら許せる気がしてきた。もともとの気質か、こうなったからかは知らんが」
ややこしい話だ。この見た目ならば性愛を向けるのは男性だが、中身は列記とした男性だから本来は女性であるべきであり、しかしその哲学が崩れ始めているのも事実だった。ラークは限りなく中性に近づいているのだ。
「ま、楽しければそれで良いんじゃない? ラキナは正妻としてラークを待ち続けるだけだよ」
「妹が正妻になる世界なんて、聞いたことないね」
「ラキナは家族がほしいだけだよ。そのためだったらなんだってする。ラークの手足を切り落としてでも、最後にはその位置にいるようにしてみせる」
狂気に服を着せればこうなるのだろうか。
しかし考えてみると、ラークは明確にラキナを否定していない。変なヤツがいる、という捉え方だ。
そして危害を加えられたわけでもないので、特段対処する理由もなかったりする。
されど、こうやって会話していると、この少女は危険因子以外の何者でもない。現状は無害だが、いつしか猛毒に化ける可能性だってある。
「……ラキナ、仲良くやろうぜ。互いにな」
「そりゃもちろん。ラークが受け入れてくれるなら、ラキナなんでもするよ?」
だから、ラークは爆弾を抱えつつ、うまく起爆装置を無効化する方法を考えるほかない。現状ラキナは無害だから、この間に方程式を組み立てるしかないのだ。
ラークは公園のベンチにて寝転がりながら、タバコに火をつける。身体はガタガタだが、かろうじて動ける。
そして、煙に喉を犯され、ゲホゲホと咳き込む金髪幼女がそこにいた。
「タバコなんて吸うモンじゃねェな」
年齢と性別が違うのならば、それはもはや別人だ。いっそのこと禁煙してしまおうか。
そして、知育玩具でも買い与えられたかのように砂場で城を作る白髪の少女も同伴している。
最前の記憶が正しければ、この少女はラークの『妹』だ。
(放ってもおけないな。なぜか)
というわけで、
「ラキナ、帰るぞ」
「もう少し待ってよ。ロスト・エンジェルスの旗を掲げないと」
「別に良いが、それならおれはオマエ置いていくぞ?」
「せっかちだな~ラークは」
「オマエにおれのなにがわかるんだい?」
「妹だもん。全部だよ」
なかなかクレイジーな少女だ。一方的に妹と名乗ってきて、全部知っていると豪語する。
だからラークは、なんとなく聞いてみる。
「おれがきのう食ったものもわかるのか?」
「ガリアパン一個でしょ? 値段は二メニー。食べた時刻は夜の9時28分。2分で完食。お金がないから、それだけしか食べられなかった」
「子どもにストーカーされている場合でも、警察って動くのかね?」
完全に当てられた。しかも当人が覚えていない時間まで。
ラークはうつむき、意気消沈とした態度でもう一度タバコに火をつける。
「ラキナにとって唯一のお兄ちゃんなんだから、それくらい知ってないとダメでしょ。あと、未成年喫煙は良くないよ」
「中身が25歳でも?」
「だって買えなくなっちゃうもん。やめられるうちにやめなよ」
「それもそうだな……」
「ポイ捨てもダメだよ? DNAが悪用されちゃう。まあ、だいたいラキナが回収するんだけど」
「なあ。すっとぼけた態度でストーカー告白やめようぜ? 今どきのガキは、ませすぎだな」
「欲求を我慢して良いことあるの?」
子どもは、時々簡単で難題な質問をしてくるから嫌いだ。
しかも欲求がラークをストーキングすることなのだから、いよいよ止められないかもしれない。
「そしてラークはませなさすぎ。美人系の幼女やってる自覚ある?」
「ねェよ。身体がガキのころに戻っただけだ」
「服装もいい加減だし。元カノの服でしょ? 後生大事にとっておく必要ある?」
なお、ラークの服は元彼女のものである。小柄な女子だった。結局別れたが、こうやって忍びないと感じて捨てなかった服が、なぜだか役立っているのだ。
「別にどうでもよくないか? 野郎に好かれて良いことないし」
「女の子に好かれれば良いじゃん」
「女性の同性愛者は60人にひとり。そのなかから好みを選別するのは至難だ」
「ラキナはいつでも準備できてるけど」
「おれはロリコンなんかじゃ。誰がオマエみてーなガキで勃つか……勃つものもないって思ったな?」
「うん。事実だからね」
悲しき我が人生。ひょっとしたら二度とこの姿から抜け出せないかもしれない。それはつまり、男性としてのラークの終焉なのだ。
そうやってラークは自身の持つ惨めさを嘆くように、吸い殻を携帯灰皿へ捨てた。
「悔しい、悔しすぎる……」
あまりにも忙しくて忘れていた。今のラークは幼女だ。誰がどう見たって美形の幼女だ。
そんな立派な美幼女は、その顔立ちと雰囲気に似合わず、頭を抱えてうつむく。
「まーまー。女の子も楽しいよ」
「なにをどうやって楽しいって感じるんだよッ!! 野郎の性欲集めて、発散できるものなんてないだろうが!!」
「変なこと言うね。お金払ってでも、ラークみたいになりたいヒトたくさんいるだろうに」
平行線である。ラークの文句は正論だが、ラキナもある意味正論を述べているのだ。だから交わることはない。
そして、この場合折れなければならないのはラークのほうだ。現状男性に戻る手段がないのだから。
「ははッ……。怪我の功名はそもそも、瀕死並みの怪我くらわないと発動しないってか」
「でもさ、その分おいしいところもあるでしょ」
「……、悪魔の片鱗か」目を細める。
「見た目が変わろうと、性別が変わろうとヒトの考え方は変わらない。でも、変わらないんだったらやることも手っ取り早いでしょ? 邪魔なものは壊して、欲求は他人を奴隷にすればどうとでもなる。問題はその腹積もりが立ってるかどうかだよ」
人間の本質は欲望だ。ラキナの語ることはもっともだと感じた。考え方が似通っているから兄妹だと断言している節もあるだろう。
ラークは空を眺める。そして冷静に自分を見据える。
「おれの欲望か。そりゃきっと、かわいい女や男に囲まれて、ハーレムパーティ24時間365日だな」
「男も入ってるんだ」
「むさ苦しい野郎はいらないけど、美形だったら許せる気がしてきた。もともとの気質か、こうなったからかは知らんが」
ややこしい話だ。この見た目ならば性愛を向けるのは男性だが、中身は列記とした男性だから本来は女性であるべきであり、しかしその哲学が崩れ始めているのも事実だった。ラークは限りなく中性に近づいているのだ。
「ま、楽しければそれで良いんじゃない? ラキナは正妻としてラークを待ち続けるだけだよ」
「妹が正妻になる世界なんて、聞いたことないね」
「ラキナは家族がほしいだけだよ。そのためだったらなんだってする。ラークの手足を切り落としてでも、最後にはその位置にいるようにしてみせる」
狂気に服を着せればこうなるのだろうか。
しかし考えてみると、ラークは明確にラキナを否定していない。変なヤツがいる、という捉え方だ。
そして危害を加えられたわけでもないので、特段対処する理由もなかったりする。
されど、こうやって会話していると、この少女は危険因子以外の何者でもない。現状は無害だが、いつしか猛毒に化ける可能性だってある。
「……ラキナ、仲良くやろうぜ。互いにな」
「そりゃもちろん。ラークが受け入れてくれるなら、ラキナなんでもするよ?」
だから、ラークは爆弾を抱えつつ、うまく起爆装置を無効化する方法を考えるほかない。現状ラキナは無害だから、この間に方程式を組み立てるしかないのだ。
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