3 / 12
シーズン1 さあ、始めようぜ。馬鹿騒ぎ-Dragon Attack-
P3 ラークVSミク
しおりを挟む
その金髪翠眼の幼女と、背丈の高い男前は笑みを浮かべる。
「おめェら!! 大義名分はこっちにあるぞ? 降伏するんなら今のうちだ!」
「誰が降伏なんてするか──!?」
ラークが主に使う術式は、いや、魔力量的にこれしか使えないのだが、非常に単純なものだ。
「──後方不注意」
速度を操る術式である。ただし、能力が設定できるのは移動のときだけ。ものに速度を注入したり、肉弾戦で速さを活かした攻撃したりできるわけではない。
だから、正直不安だった。ジョニーの語る『悪魔の片鱗』とやらを信じていないからだ。
しかし、その疑念は確信へと変わった。
「──!?」
拳の運び方は雑そのもの。不良学生の喧嘩と変わりない。足の運び方だって、いい加減なものだ。
だが、結果は見事であった。
グチャ!! という肉が溶ける音とともに、男の腹部がねじ曲がった。
魔力をまとったことで、この体重40キロにも満たない少女の拳はヒトを殺すための兵器へと変わり果てたのである。
「このガキがァ!!」
そしてジョニー。ラークは片鱗の使い方こそ冴えているが、それ以外はカラッキシなことに気が付き、咄嗟にテレポートでラークを狙う者との間に入り込む。
彼はどこからともなく拳銃を取り出す。服から取り出したわけではない。別次元から引っ張り出してきたかのようだ。
彼は迷いなく、二丁の拳銃で狂いなく敵性の足を撃っていく。
「戦争だな、こりゃ!!」ラークは邪悪な笑みを浮かべる。
「あしたの飯には困らんだろうさ!!」
あとは単純作業だ。ほとんどの者が足を撃たれたので、まともに立つこともできない。
だから、最後っ屁と言わんばかりに、なにかしらの術式が展開され、ラークへ放射された。
「危ねェッ!!」ジョニーが警告する。
だが、現実は非情であった。
ラークの身体へ魔術が着弾した瞬間、その攻撃は砂のように溶けていった。
「そうか……わかってきたぞ」
恐れを抱いたら、終焉を抱くのと同意義だ。
「〝悪魔の片鱗〟は3種類の効能がある。ひとつは魔力を身体のどこかへ集中させることで、触れた瞬間爆発みてーな現象を起こす」
ラークは勝利宣言も兼ねて語っていく。
「次に魔力を察知できる。魔力の動きを読めれば、ヒトの気配を感じ取れるわけだ」
少しずつ、消灯していくかのように、魔力が消えていく。
「最後。これはすげェな。おそらくだが、相手の魔力が一定水準以下だと、どんな攻撃をしてこようが身体のどこかに当たれば砂みてーになる。雑魚がいくら攻撃しても、絶対に届かないわけだ」
新しいおもちゃを手に入れて喜ぶ子どものように、ラークは無邪気な笑みを浮かべていた。
「そういうことだな。だが、オマエだいぶ魔力消費したろ? メインディッシュの前に疲れてどうするんだ」
「オマエも片鱗使えるの?」
「オマエほどじゃねェけど、使えるぜ? だから言ったろ? 実力者だって」
「なーるほど」
裏路地とはいえ、白昼堂々と殺し合いをしたのだから、そろそろボスが現れるだろう。
「ミク、とか言っていたな。コイツら。能力わかる?」
「見りゃわかるだろ。美人が必ずしも、スマートな闘い方をするわけではないって」
そういったころには、殺気が訪れていた。
「よお!! あたしのシマ荒らしたの、おめえらかい!?」
目で捉えられない。
だが魔力は動いている。
彼女は必ずラークを狙うはずだ。首をへし折るために。
ラークは目をつむり、冷静に相手の動きを読む。
「そこかァ!!」
高いところからミクが現れた。ラークは猛り、邪悪な笑みを浮かべながら、ミクの蹴りを腕で防ぐ。
「悪魔の片鱗かぁ!? てめえ、やるなあ!」
「つい最近クビになったもので」
「くだらねえ嘘つくんじゃねえ! だったらこれはどういうことだよ?」
「どういうこととは、どういうことだよ?」
「ぶち殺す!!」
ミクはたしかに美人だ。アジア系だろうか。
だが、血管が浮き出ていると台無しな気がする。
要するに、血液の流れを早くして、動きを俊敏にしているのだ。
「循環術式とでも名付ければ良いのか?」
「さあな!!」
再び空高く舞い上がるミク。やはり目では追えない。
そして、魔力がすり減っているのもわかる。
最前のような防衛がすこしずつ難しくなっていくだろう。
「かわいい顔踏み潰すのは悲しいが……仕方ねえよな!?」
「……同情不要だ」
ことを優位に運ばせるのが魔力だ。それが切れてしまえば、優位どころかサヨナラだ。
ならばどうする、ラーク。
そのとき、金髪ロングヘアで濁りのない緑色の目をした少女は、的確に問題解決を行った。
話は簡単だ。自分に魔力がないのなら、誰かから拝借すれば良いのだ。
「……こりゃ驚いた」
只者ではないと思っていたが、まさかこの幼い少女にこれだけの才能があるとは思ってもなかった。
ジョニーは息を呑み込む。集中し、ラークの行動に干渉されないよう、片鱗を張っておく。
「──足りないものはかき集めれば良い」
ロスト・エンジェルスは神を否定し、オカルト的な文化も否定している。幽霊など存在しない、と断言するような国だ。
だからこそ、この光景は奇妙だった。白い幽霊のような現象が、ラークの身体へ集まってくるのだ。
「4つ目。片鱗は魔力も奪えるんだろう? ……私の言っている意味がわかるか?」
「知らねえふりすりゃ、許してくれるのかい?」
ミクはややうろたえている。まさかこれほどとは、といった表情である。
「そして5つ目。抜き出した魔力は……」
気絶する者が20人ほどいれば、累計魔力も凄まじい。では、それらが全部銃弾のごとくミクを襲ったらどうなるか。
答える理由もない。つい最近クビになり、なにかの呪いで幼女となり、どん底まで突き落とされたラークは、ミクに背を向けて、手を挙げる。
「すべて操れる。『悪魔の片鱗』の本質は、すべての魔術の始祖であることだ」
大爆音が響き渡った。
ラークの攻撃とミクが交差するのは一瞬。
それですべて終わった。
「ジョニー。行こうか」
「ああ」
聖歌隊のようにきれいな声で、天使がささやくように、ラークはジョニーに命令を飛ばした。
ジョニーは人生悪いことばかりでもないことを知った。この幼女と一緒にいれば、天下をつかめるかもしれない。
「おめェら!! 大義名分はこっちにあるぞ? 降伏するんなら今のうちだ!」
「誰が降伏なんてするか──!?」
ラークが主に使う術式は、いや、魔力量的にこれしか使えないのだが、非常に単純なものだ。
「──後方不注意」
速度を操る術式である。ただし、能力が設定できるのは移動のときだけ。ものに速度を注入したり、肉弾戦で速さを活かした攻撃したりできるわけではない。
だから、正直不安だった。ジョニーの語る『悪魔の片鱗』とやらを信じていないからだ。
しかし、その疑念は確信へと変わった。
「──!?」
拳の運び方は雑そのもの。不良学生の喧嘩と変わりない。足の運び方だって、いい加減なものだ。
だが、結果は見事であった。
グチャ!! という肉が溶ける音とともに、男の腹部がねじ曲がった。
魔力をまとったことで、この体重40キロにも満たない少女の拳はヒトを殺すための兵器へと変わり果てたのである。
「このガキがァ!!」
そしてジョニー。ラークは片鱗の使い方こそ冴えているが、それ以外はカラッキシなことに気が付き、咄嗟にテレポートでラークを狙う者との間に入り込む。
彼はどこからともなく拳銃を取り出す。服から取り出したわけではない。別次元から引っ張り出してきたかのようだ。
彼は迷いなく、二丁の拳銃で狂いなく敵性の足を撃っていく。
「戦争だな、こりゃ!!」ラークは邪悪な笑みを浮かべる。
「あしたの飯には困らんだろうさ!!」
あとは単純作業だ。ほとんどの者が足を撃たれたので、まともに立つこともできない。
だから、最後っ屁と言わんばかりに、なにかしらの術式が展開され、ラークへ放射された。
「危ねェッ!!」ジョニーが警告する。
だが、現実は非情であった。
ラークの身体へ魔術が着弾した瞬間、その攻撃は砂のように溶けていった。
「そうか……わかってきたぞ」
恐れを抱いたら、終焉を抱くのと同意義だ。
「〝悪魔の片鱗〟は3種類の効能がある。ひとつは魔力を身体のどこかへ集中させることで、触れた瞬間爆発みてーな現象を起こす」
ラークは勝利宣言も兼ねて語っていく。
「次に魔力を察知できる。魔力の動きを読めれば、ヒトの気配を感じ取れるわけだ」
少しずつ、消灯していくかのように、魔力が消えていく。
「最後。これはすげェな。おそらくだが、相手の魔力が一定水準以下だと、どんな攻撃をしてこようが身体のどこかに当たれば砂みてーになる。雑魚がいくら攻撃しても、絶対に届かないわけだ」
新しいおもちゃを手に入れて喜ぶ子どものように、ラークは無邪気な笑みを浮かべていた。
「そういうことだな。だが、オマエだいぶ魔力消費したろ? メインディッシュの前に疲れてどうするんだ」
「オマエも片鱗使えるの?」
「オマエほどじゃねェけど、使えるぜ? だから言ったろ? 実力者だって」
「なーるほど」
裏路地とはいえ、白昼堂々と殺し合いをしたのだから、そろそろボスが現れるだろう。
「ミク、とか言っていたな。コイツら。能力わかる?」
「見りゃわかるだろ。美人が必ずしも、スマートな闘い方をするわけではないって」
そういったころには、殺気が訪れていた。
「よお!! あたしのシマ荒らしたの、おめえらかい!?」
目で捉えられない。
だが魔力は動いている。
彼女は必ずラークを狙うはずだ。首をへし折るために。
ラークは目をつむり、冷静に相手の動きを読む。
「そこかァ!!」
高いところからミクが現れた。ラークは猛り、邪悪な笑みを浮かべながら、ミクの蹴りを腕で防ぐ。
「悪魔の片鱗かぁ!? てめえ、やるなあ!」
「つい最近クビになったもので」
「くだらねえ嘘つくんじゃねえ! だったらこれはどういうことだよ?」
「どういうこととは、どういうことだよ?」
「ぶち殺す!!」
ミクはたしかに美人だ。アジア系だろうか。
だが、血管が浮き出ていると台無しな気がする。
要するに、血液の流れを早くして、動きを俊敏にしているのだ。
「循環術式とでも名付ければ良いのか?」
「さあな!!」
再び空高く舞い上がるミク。やはり目では追えない。
そして、魔力がすり減っているのもわかる。
最前のような防衛がすこしずつ難しくなっていくだろう。
「かわいい顔踏み潰すのは悲しいが……仕方ねえよな!?」
「……同情不要だ」
ことを優位に運ばせるのが魔力だ。それが切れてしまえば、優位どころかサヨナラだ。
ならばどうする、ラーク。
そのとき、金髪ロングヘアで濁りのない緑色の目をした少女は、的確に問題解決を行った。
話は簡単だ。自分に魔力がないのなら、誰かから拝借すれば良いのだ。
「……こりゃ驚いた」
只者ではないと思っていたが、まさかこの幼い少女にこれだけの才能があるとは思ってもなかった。
ジョニーは息を呑み込む。集中し、ラークの行動に干渉されないよう、片鱗を張っておく。
「──足りないものはかき集めれば良い」
ロスト・エンジェルスは神を否定し、オカルト的な文化も否定している。幽霊など存在しない、と断言するような国だ。
だからこそ、この光景は奇妙だった。白い幽霊のような現象が、ラークの身体へ集まってくるのだ。
「4つ目。片鱗は魔力も奪えるんだろう? ……私の言っている意味がわかるか?」
「知らねえふりすりゃ、許してくれるのかい?」
ミクはややうろたえている。まさかこれほどとは、といった表情である。
「そして5つ目。抜き出した魔力は……」
気絶する者が20人ほどいれば、累計魔力も凄まじい。では、それらが全部銃弾のごとくミクを襲ったらどうなるか。
答える理由もない。つい最近クビになり、なにかの呪いで幼女となり、どん底まで突き落とされたラークは、ミクに背を向けて、手を挙げる。
「すべて操れる。『悪魔の片鱗』の本質は、すべての魔術の始祖であることだ」
大爆音が響き渡った。
ラークの攻撃とミクが交差するのは一瞬。
それですべて終わった。
「ジョニー。行こうか」
「ああ」
聖歌隊のようにきれいな声で、天使がささやくように、ラークはジョニーに命令を飛ばした。
ジョニーは人生悪いことばかりでもないことを知った。この幼女と一緒にいれば、天下をつかめるかもしれない。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる