おじさん、後方黒幕面する

逆転好き

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9話

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「あの、助けていただいて、ありがとうございました」
「どういたしまして」

 ケモミミ少女が泣き止み、そのまま眠りに落ちた後、蛇に締め付けられ死にかけていた少女の方が目を覚ました。
 最初は混乱していた少女だが、パルメが少女を襲った蛇の死骸を見せ、状況を説明したところで、今の状況だ。

「あの、私はクラムスルトのハンターのココノです。お姉さんは。何者なんですか?」
「ココノさんですね。私のことはパルメと呼んでください。何者なのかという点については、申し訳ありませんが答えられません」

 ハンター同士の詮索はご法度と言えるが、まだGランクになったばかりであるココノは好奇心から、思わずパルメに訪ねてしまう。
 しかし、それをパルメはやんわりとかわす。

「そ、そうですか。パルメさん? あの、助けてもらって図々しいかもしれませんが、街まで送ってもらうことはできますか? 仲間もミア……その子だけになってしまって自力で帰るのは無理なんです」
「えぇ、構いませんよ」
「なんでもします! だから、って! い、いんですか!? 私たちなにも払えるモノとかないですよ?」
「はい。構いません」

 対価など払ってもらう必要はない。
 ただ街まで話をして、その間に情報を引き出せればそれでいいからだ。



「パメル様! こちらの実も食べられますよ!」
「そうですか。この森はなかなか豊かなようですね」

 パルメは現在、ケモミミ少女ことミアにミア自身が覚えたハンターとしての知識を披露させていた。
 ココノとミアを助けた後、ミアが泣き止みココノが起きるまでの時間で、日が落ちかけていたため、森の中で野宿となった。
 夜の森で目覚めたミアは、泣きわめいたが、すぐにパルメがあやしたおかげで泣き止み、それからパルメにべったりになった。

 そんな二人の様子を、ココノがなんとも言えない表情で見ている。
 ココノとしては、パーティーで見つけた果実の採取場所などをあっさりと教えるミアに苦言を呈したいが、命の恩人であるパルメの目の前で教えるなとは言いづらい。
 助けてもらったが、明らかに言葉巧みに誘導されてる。
 全てを信頼するなんて、どうかしているというのがココノの考えだ。ココノのこの考えも仕方ないだろう。
 蛇に締め上げられ、文字通り死ぬほどの思いをしたところから命を助けられたとはいえ、助けられたときには痛みから気を失っており、目が覚めた時には自身の心を守るためか前後の記憶は曖昧だったのだから。

「あの、そろそろ街に……」
「えぇ、そうしましょう。ミア。そろそろ街へ案内してください」
「はーい!」

 呼ばれて、ミアはトテトテとパルメに走り寄って、その手を取る。

「こっちです!」

 パルメはミアに手を引かれて、街に向かって歩き出す。



「多様種と汎用種。人種みたいなものだとは思ってたけど、多様種が様々な動物的特徴を持った種だったとは」

 電波元から手に入れた情報に人種についても存在したが、肌の色が違うとかその程度の違いではなかったようだ。
 いや、正確には肌の色が違う区分けもあったようだが、今は多様種と汎用種という風に分類されなおしていたから、数の多い汎用種と、それ以外の多様種にまとめたのかと思っていた。
 しかし、そうではなく、多様な動物的特徴を持った人間を多様種。普通の人間に見えるほうを汎用種と呼んでいたようだ。

「にゃんにゃん?」
「お? AR機能か。可愛いぞ」

 俺が熱心に、ケモミミ少女に目を向けていると、膝の上でノエルが鳴いた。
 そちらに目を向けると、いつの間にかノエルに猫耳と尻尾が生えていた。
 触った感覚はなく突き抜けたため、AR機能で見かけだけ再現したのだろう。中々かわいいので褒めておく。

「死体の情報は……」

 死体から得られた情報もそれなりにある、多様種汎用種共に、やはり体にナノマシンをもっていた。
 その特性から、おそらくすべての人間が少なからずナノマシンを体に取り込んでいる。
 とくに、ハンターともなると、その量は一般人を大きく上回るだろうとのことだ。

 なんでも、森の中で活動するだけでも、ナノマシンを取り込む量が多くなるようだ。
 ナノマシンは、除染機能も持っているが、自然の再生にもわずかながら力を発揮しているようで、自然豊かな場所であればあるほど、ナノマシンの濃度は濃いらしい。

 パルメが街まで到着して、街の人間と接触して、ただの街人とハンターのナノマシン濃度が違うこと、街と森のナノマシン濃度が違うことなどの点から、この予測は成り立っている。
 できれば、どこかで街人の死体も手に入れたいところだ。貧民街もあるのでそこからこっそりと拝借するのは難しくなさそうなので、そのうち拝借するつもりだ。

 その他の情報としては、ハンター登録時の生体情報についてだ。
 パルメ達はほとんど人間と変わらないように見せかけられるため、生体情報を登録しても十分に通ると考えてる。
 生体情報の登録と言っていたそれは、腕にマイクロチップを埋め込み、そこから生体情報を取得し、個人データを作るというモノで。
 むしろ血液の提供や、声紋、虹彩、などの登録ではない分、いくらでも誤魔化しのきかせることができるマイクロチップならこちらとしてはありがたい限りであった。

 マイクロチップに登録されるのは、ハンターランク、ハンター活動履歴、預金額、遺言状などだ。
 これらの情報の元は、ハンターギルドにもあるが、本人確認などをスムーズに進めるための手段として、個人にマイクロチップを埋め込んで作業の効率化を図っているようだ。
 一度滅んだとはいえ、過去の知識や知恵が完全に消えてないため、今の文明度にたいして進んでいるところは進んでいるというちぐはぐ感が出ている。

「あとは、多様種が汎用種の派生にあたるというところか、ナノマシンのせいで肉体が変化した者ね」

 ナノマシンは除染以外にも人間だけではなく、生物兵器にも影響を与えている。
 この星のナノマシンは、長い時をかけて変異しているみたいだが、元々急造された改造品というのもあるのか、変に人体に影響を与えた結果が多様種だと考えられる。

「後はできれば、Aランクのハンターっていうのを見てみたいね。そこまで見て、危険がなさそうなら実際に外に出て見て回りたい」
「お供したい」
「ん? んー、そうだなぁ、危険を考えるとアナクシメと考えてたけど、アナクシメは目立つからな。確かにノエルでもいいかもしれない」

 ノエルはアンドロイドだから共として連れて行ってもいいだろう。
 むしろ、戦闘型のアナクシメを連れて行くよりも、万能型だから、身の回りに不自由もしないはずだ。
 ただ、アナクシメのナイスバディーも捨てがたいと思ってしまう。

「いや、どちらにしても、少し先の話だ。その時になって都合のいいほうに来てもらう」
「危険が少なければ、お世話は任せて。万能型の私なら何でもできる」
「期待してるよ」

 まぁ、おじさん、昔は自炊してたけど、コンビニ弁当かスーパーの惣菜ばかりになってたから、本当に期待してしまうのだった。

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