男女逆転モノ（厳し目

1話

　痛い……。
　殴られた頬が痛い。口の端から血が垂れる。
　体は熱病に浮かされたように熱くて……。

「はっ、はっ、月下」

　僕の上で母が腰を振る。酒臭い息が顔にかかる。
　クスリによる心拍数の上昇とそれに伴う興奮。殴られる恐怖と母が腰を振るたびに与えられる快楽。
　すべてがぐちゃぐちゃに混ざり合って、僕はその全てから逃避してただぼんやりとその快楽を享受する。

「イクッ！　月下も、月下もイきなさいっ！」

　絶頂へのラストスパートとでも言うように腰の動きが早くなり、それに伴って僕の快感も高まり……。

「……っ！　はぁはぁ」
「んっ！　はぁ、はぁ」

　母が腰を一番深く落としたそのとき、その身を震わせる。
　そして、僕もそれに合わせるように射精する。
　覆いかぶさるように母が顔を近づけてくる。その顔はどこか満足そうでニヤニヤと笑っている。
　近所でも優しくて美人だと評判の母。
　しかし、その本性はこれである。酒を飲んでは暴力をふるい、そして酔いがさめれば涙ながらに謝るのだ。「ごめんなさい。もうしない」と……守られたことはないが。

「月下。お風呂に入らないとね」
「……うん」

　母が僕から離れてテーブルの上のビールを手に取りそれを飲み干す。
　僕は体を起こして母の後についていく。母の酔いはまだ覚めない。