㈲ノーザン・クエスト カスバ市ハンブル区マージー通り196-2

あしき×わろし

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17 背徳の街へ

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「で、赤ゴリラ女が養成学校のセクハラ教官を血祭りにあげて退学クビになりそうだったとき、キミはどんな感じに助けてあげたのかネ?」
「──互いがおかれている状況を整理しよう」

 俺は無視して先を続けた。
 小娘の背伸びにつきあってる暇はないのだ。

「俺たちは魔術士を必要としてる。魔術士不在のまま冒険クエストに赴くのは望ましくないからだ。一方、ロレッタには奨学金の穴埋めが必要だ。学究活動を継続することが困難になるからな。どうかな? お互いに利益メリットがある話しだと思うが」
「うーん、わかんない」

 わかんないィ???
 これほど理解わかりやすい互恵的ビジネスもないと思うが。
 が、その直後に、

「ま、いいや。一緒にいく」

 ロレッタがあっさり承諾して、俺は椅子から転げ落ちそうになった。
 今までのすったもんだは、いったい何だったんだ?

「ただし、いっこ条件」
「き、聞かせてもらおうか」
仕事バイトが終わったらモー街つきあって。冒険クエストいくならアイテム婆ァの店に買い出し行っとかなきゃ」

 モー街はカスバ市ハンブル区、マージー区、リシケーシュ区の狭間にあり、公式には、というか名目上は九六番街から一〇一番街にあたるが、実質的には市が管理を放棄したスラム街である。
 その名目上は九八番街にあたる、酒場と賭場と娼館ひしめく小路にジュリアの古道具屋はあった。

 リシケーシュの千年魔女──

 もとは王立魔術院の顧問だったとか、多くの冒険者を返り討ちにした迷宮ダンジョンのラスボスだったとか、まあいろんな噂のある老魔術士だが、少なくともそんな大先輩をつかまえて、

(アイテム姿ぁはないだろう)

 年配者には相応の敬意を払うべきだ。そのあたりはきちんと教育する必要がある。それがロレッタ自身のためなのだ。
 ただ、それは今ではなかった。

「どうなの? くるの?」
「ああ、お供するよ」
「ほんと? じゃ、いっぺん寮に帰って着替えるから、暮れの第二刻にモー街のゴーディ門で待ち合わせね!」
「着替え? 買い出しにそんなもん必要ないだろ」
「さっきの赤ゴリラ、リアに言っちゃおっかなー」
「ゴーディ門でお待ちしております」

 なんとか魔術士は確保できそうだった。
 ただ、

「やれやれ──」

 零細企業インディーズ冒険クエストを受注するのもひと苦労なのだ。
 なにせそのために、別の冒険クエストをこなさなければならないのだから。
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