かわらないもの

弟さんさい兄ごさい。 -1

『俳優の北山俊介さんが主演を務めるこの映画は――』

　夜のニュース番組。その日の報道が終わり、続いて始まったエンタメコーナーの一発目。昨日公開が始まった映画についての特集らしい。画面の中で、女子アナウンサーが持っているマイクを隣に座る主演俳優に向けた。
　午後十一時半。テレビ前のソファに座り、夫婦で晩酌中だった。

「あ、俊介くん！ 制服似合うねえ！ わかーい！」
「うーわ……、あいつこの前エリート弁護士とかしてなかったっけ。」
「ええ、いつの話してるの！ その後刑事も医者も大学生もやってるよ！」
「へー……振り幅広すぎだろ。てかまだ新卒の歳だろあいつ。」
「色々できるから売れっ子俳優なんじゃない。」

　グラスもつまみの皿も空になり、そろそろ就寝、というタイミングだった。妻の方が話しながら食器類を重ねてキッチンに運び、夫は震えたスマートフォンを手に取った。

「あとは俺片付けるから、もう寝ろよ。」
「あー、明日半休だったっけ？」
「ああ。俺はまだやることあるから。」
「夜更かしも程々にね。じゃああとは任せるね、おやすみ。」
「おやすみ。」

　夫――悠介がスマートフォンを片手に、リビングから出て行く妻を見送った後キッチンへ向かう。
　日曜日。世間も会社員の妻も明日は休み明けだが、悠介はひと仕事を終え、明日の午前中は半日休みだった。
　今日はエンタメ業界の一端、プロサッカーの下に位置する社会人リーグのリーグ戦だった。悠介は2アシストを記録しチームも勝ち、夫婦で祝勝会としてささやかな晩酌をしていた。悠介は酒を飲めないので、飲酒をしていたのは妻だけだが。

「……2時とか、遅過ぎ。……今日の試合でも観るか……。」

　食器類を洗い終えて、悠介は再びソファへ座る。未だ映画に絡めた俳優のインタビューは続いていたが、テレビの画面をサッカーチャンネルに切り替えた。