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「...ここどこですか?」
閉口一番言ったのはこの一言だった。咬射副社長は、私の声を聞き、起き上がると辺りを見渡す。
「...ここは、俺の部屋だ」
白いカーテンに広いベッド。そして結構広いサイズの部屋。結構立派な所に住んでいるんじゃないか。と思う。
「あの、私達、やったん、ですかね?」
「......」
咬射副社長は、自分の体を確認していた。そして、
「わからない...」
「え......」
本当にそのような様子で、咬射副社長は顔に手を当てて考えていた。覚えてないってどういう事?でも、私も覚えてない。あ、しかも私の服、何処?
「...酔ってたら記憶飛ぶタイプですか?」
「いや、俺は強いタイプだから、そもそも呑んだら怠くなるだけだ。待ってくれ。思い出す。あ、いやその前に、実田さんの服、...」
咬射副社長は、相当てんぱっているようだった。すると、彼は落ち着くと、目を瞑るから探してくれるか?と頼まれたので、私は自分の服を探してみる事にした。
すると、私の服は何故かベットの下の方に全部全方位散らばっていて脱ぎ捨てたようなそんな印象だった。
「...脱がされてはないですよね」
「......」
彼はそれすら無言だった。私は急いで自分の服を着る。でもスーツの服はぐちゃぐちゃで、ちょっとみるに耐えない格好だった。まあいいか。と思い、着終わった後、私は咬射副社長にいいですよ。言った。
「...」
案の定、しかめっ面な反応だった。私も正直、これ着たまま、外に出たくないと思った。
「...近くに服屋があるから、朝一実田さんの服を買いに行ってくる。すまないが俺の家に居てくれるか?」
「...あ、すみません。お金渡します」

「いや、いい。...サイズだけ紙に書いてくれ。大丈夫か?」
「......はい。有り難うございます。大丈夫です。仕方ないので...」

✕✕✕

咬射副社長は、私の服を買ってきてくれて、私達は寝台に居たけれど、居間のテーブルにお互い座っていた。買ってきてくれた服は可愛いワンピースだった。だからそれを着て、二人向き合う。 咬射副社長も着替えており、私服だった。というか、イケメンだからすらっとしててお洒落だ。
 こうしてみると、今から出掛けるカップルに見えるんだろうけど、私達は違う。そんな甘い関係じゃない。
「あの、どういう事なんですかね?私達、その...」
 私は何故か朝から全裸で、そして、咬射副社長の部屋にいて、咬射副社長が隣で寝ている。この状況をどう説明するか。彼も全く覚えておらず、終始ずっと困った表情だった。
「...少しずつ思い出してきた。昨日の忘年会あっただろう?あれで、俺達は隣の席にいて、お互い話していたんだ」
「...そういえばそうでした」
 私も昨日は忘年会だった事を思い出す。
「それで、時間たった所、実田さんがパートの人にお酒を勧められてな。それで実田さんが倒れたんだ。実田さんは、お酒は弱いタイプか?」
「はい。お酒は弱いタイプです...」
「そうか...恐らくその、お酒は少量だったんだが、強い酒のようで、それを見誤って倒れたけど、又起き上がって、...その、」
「え、私何かしたんですか?」
「...いや、なんかフラフラしたままだったから、送ろうと思って、俺が送る事になったんだ。... しかし、住所が少し遠いし、電車使うから、明日は休みだし、ホテルに泊まらせようとしたんだが、近くになく、心配だったし、俺の家の方が近かったから、泊まらせて朝帰せば良いと思ってしまったんだ」
「あ、そうなんですね...」
 私は経緯を聞いてほっとした。そうか、だから、私は咬射副社長の家にいるのか。...。あれ?え?じゃあ、何故私は全裸???
「あ、あの、その後は?」
「......」
...何で無言?
「まさ、か、襲ったとか?」
「いや、それはない筈なんだが、...」
「ない筈はないって確実ではないと?」
「......」
 言いづらそうにする咬射副社長。
「...全然覚えてないんだ」
と残し、それ以降黙った。どういう事...。すると、彼はテーブルに頭をつけて手を添えた。
「...本当にすまない。謝って済む問題じゃないと思っている」
「じゃあ、すると、その後の可能性が...」
「それは、わからない」
「...も、もしかして、女性を連れこんで、手を出す方なんですか?最低じゃないですか...」
「違う。それは断じて言う。こんな出来事が起こったのも初めてで、...ちょっと混乱してるんだ」
ぐしゃぐしゃと彼は髪をかきみだした。
「...俺は滅多に人を家にあげないから、色々立場上あるし」
「......」
「...もし、実田さんに、子供が出来ていたら、責任はとる」
 咬射副社長はそのような事を言った。すると、
「ちょ、と、話が飛躍すぎて、なにが、なんだか、」
「つっ......」
私は溜まっていた涙がポロポロと出てきた。
「...俺のしたことは、最低な事だ。このまま警察に行こう」
咬射副社長は真剣な顔でそう言った。
「...いや、いいえ、そこまで大事にしません...まだわからないですから、このままでいます...」
「しかし、...」
「ごめんなさい。私が倒れたから、私がお酒飲んで皆に迷惑を掛けたから...」
 自分の耐えられない自責に耐えられなくなって又涙が零れる。
「違う。何故謝るんだ。これは、俺の所為だ。...君が謝ることじゃない」
「いや、私のせいです。本当にごめんなさい」
「......」
 すると、彼は苦しい表情をした。すると、携帯を出す。
「...実田さん、連絡先交換してもらえないか?」
 そう言われ、私は彼と連絡先を交わした。

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