そらいろ

並川たすく

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そらいろ

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 試験の結果が出て僕はタツにジュースをおごり、タツは夏休み中の数学の補講をなんとか免れ、僕は新聞部の特集のテーマを決められないまま終業式の日を迎えた。

「今日は午前の終業式だけだったってのにこんな時間になるとはなあ。もう夕方じゃないか」
「仕方ないだろう。僕が数学を教えてやって先生に交渉したおかげで夏休みに学校に行かなくてよくなったんだから」

 西の空が赤くなってきている。今日は天気がよかった。きっと夕焼けが綺麗だろう。僕は雨の降った日のことを思い出した。

「そういえば、お前のオレンジ色の傘に入った猫はどうなったかな」
「傘に入った猫? ああ、あのときの」
「この辺に丸まってあくびしてさ」


「こんなところに花なんか咲いてたか?」
 タツが指差したところには、一輪の花がアスファルトの上で枯れていた。
「さあ、最近は日照りだったからなあ」

 枯れた花弁の隅がわずかに青みを帯びている。青い花だったのだろうか。




「なあタツ、新聞部の特集に馬鹿げた小説が載ったらどう思う」
「小説? 部長さんは最後に爪痕でも残したいのか?」
「最後のわがまま」
「後輩が泣くだろうなあ」


 やがてバスが来てタツが乗り込んだ。そのバスが出るのと同時に、僕もバス停に背を向けた。この風景もしばらく見納めだ。
 思ったより長くバスを待っていたらしい。茜色が濃くなってきた。

 あの日の空も、ちょうどこんな色をしていた。
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