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タツ
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三度目のアラームで飛び起きるなり、寝不足の頭が痛んだ。昨日は遅くまで試験勉強をしていたが、それに加えてあの女の子のことが気になってなかなか寝付けなかったのだ。僕はため息をついて、机の上に広げっぱなしになっていた参考書をカバンに放り込んだ。
朝食もそこそこに家を飛び出すと、外はうだるような暑さで日差しも強かった。憎らしいくらいの晴天である。単語小片手にぶつぶつと復習をしながら汗を拭う。制服が汗で肌に張り付いて不快だ。
(学校まで近いのは便利だけれど、こういう暑い日にはいっそバスや電車に乗る方が楽なんじゃないだろうか)
学校の最寄りのバス停で、バスから降りてくる生徒を見てふと思う。僕と同じように参考書を片手に歩く者や、反対に友人と楽しそうに話している者もある。
「どうしよう、全然勉強してないよ」などと笑い合う女子二人を抜かそうとすると、後ろから呼び止められた。
「よう」
「タツか。なんだよニヤニヤして。気持ち悪いな」
「いや、お前はああいうの嫌いなんだろうなと思って」
ああいうの、というのはさっきの女子のことだろう。
「二人とも勉強してるくせに。女子って大変そうだよな」
「ところで今日は古文か」
僕が持っていた単語帳を見てタツが気づいたようだった。
「そうなんだ。僕苦手なんだよね、暗記。今日は数学と古文漢文だけだから、数学は諦めたよ」
「とか言いながら数学も出来るくせに。俺は得意な試験科目なんかないぜ」
「運動できるんだからいいじゃないか、君は」
なんだか諦めがついたような気になって、僕は単語帳を閉じた。タツといると肩の力が抜けるように思う。彼が適当な男だというわけではない。ただ、その少しガサツな物言いや粗野なところが何となく僕を安心させるのだ。
僕はふと昨日の女の子のことを思い出してタツも会ったのか尋ねようとしたが、それを言い出す前に教室前まで来てしまい言いそびれてしまった。僕はタツと別れ、また今度聞いてみようと思い直して単語帳を開いた。
朝食もそこそこに家を飛び出すと、外はうだるような暑さで日差しも強かった。憎らしいくらいの晴天である。単語小片手にぶつぶつと復習をしながら汗を拭う。制服が汗で肌に張り付いて不快だ。
(学校まで近いのは便利だけれど、こういう暑い日にはいっそバスや電車に乗る方が楽なんじゃないだろうか)
学校の最寄りのバス停で、バスから降りてくる生徒を見てふと思う。僕と同じように参考書を片手に歩く者や、反対に友人と楽しそうに話している者もある。
「どうしよう、全然勉強してないよ」などと笑い合う女子二人を抜かそうとすると、後ろから呼び止められた。
「よう」
「タツか。なんだよニヤニヤして。気持ち悪いな」
「いや、お前はああいうの嫌いなんだろうなと思って」
ああいうの、というのはさっきの女子のことだろう。
「二人とも勉強してるくせに。女子って大変そうだよな」
「ところで今日は古文か」
僕が持っていた単語帳を見てタツが気づいたようだった。
「そうなんだ。僕苦手なんだよね、暗記。今日は数学と古文漢文だけだから、数学は諦めたよ」
「とか言いながら数学も出来るくせに。俺は得意な試験科目なんかないぜ」
「運動できるんだからいいじゃないか、君は」
なんだか諦めがついたような気になって、僕は単語帳を閉じた。タツといると肩の力が抜けるように思う。彼が適当な男だというわけではない。ただ、その少しガサツな物言いや粗野なところが何となく僕を安心させるのだ。
僕はふと昨日の女の子のことを思い出してタツも会ったのか尋ねようとしたが、それを言い出す前に教室前まで来てしまい言いそびれてしまった。僕はタツと別れ、また今度聞いてみようと思い直して単語帳を開いた。
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