そらいろ

並川たすく

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少女

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 理系コースの僕と文系コースのタツでは試験の科目が違う。普段は互いに下校時間ギリギリまで残っていることがあるが、試験期間は下駄箱で偶然出くわすなんてことは滅多にない。

 試験初日の月曜日。僕は例によって一人で帰っていた。寝不足の目には昼過ぎの青空が眩しい。
 英語の試験だけは文系も理系も同じ問題だったはずだ。今回は自信がある。結果が出たらタツにも聞いてやろうか。ジュースを賭けてもいい。

 遠くから、バス停の側に何か大きい水色のものがあるのが見えた。近づくにつれ、小学生くらいの女の子がしゃがんでいるのだとわかった。水色のワンピースに緑色のリボンのおさげ。他に人はなく一人のようである。

(こんな時間に学校帰りだろうか)
 歩きながらそれとなく様子を伺ってみると、どうやら探し物をしているようだった。きょろきょろと辺りを眺め、時折疲れたのか飽きたのか空を見ている。かと思うと今度は立ち上がって遠くの方まで見渡している。

 探し物ならば歩き回った方が早いが、疲れてしゃがむほど長い間探しているのかもしれない。

 通り過ぎるとき声を掛けようかと一瞬考えたが、足が向く前に通り過ぎてしまった。通り過ぎてしまったあとで戻るのもなんだかきまりが悪い。危険ではなさそうだし大丈夫だろうと一人言い訳をして、僕はそのまま通り過ぎた。明日は苦手な古文漢文の試験だ、とも言い訳がましく考えながら。
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