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第三部
71話 スライムかな?
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私の家に到着すると、りんは緊張した様子で「お邪魔します」と言った。
りんの様子に、もしかして家族に『交際の挨拶』でもしなければならないと思っているのかな、と思い、
「今日、家に誰も居ないんだ」
と言うと、
「えっ」
とりんは驚いた。
そして、
「どうしてかな……」
と言う。
「えっと……」
と私は口ごもる。
『大事な話があるから、家族がいないときを選んで、りんに来て貰った』と言えば良いのだけど……。
しかし口を開く前に、
「そうだ。あおい、ゲーム好きだよな」
とりんは話を変えた。
「おれ、あんまり知らないから。スマホゲームくらいしか。
教えてよ」
「うん……」
いや、ゲームはできないかもしれない。
ゲームをしていて大事な話をする時間を逃し、また次の機会に伸ばすことになるとダメだから。
と思いつつも私は頷いた。
※※※
とりあえずリビングに案内した。
りんはソファに座っても、どこかかしこまっている。
台所――と言ってもダイニングキッチンだからリビングと繋がっている――でお茶とお菓子の用意をして、りんの元に戻る。
りんにコップに入れたお茶を手渡すと、私はその隣に座った。
りんはまだ何だか硬い様子だ。
私の方も硬い。
やはり『これから話すべきこと』を考えると緊張してしまう。
りんと一緒に駅から家まで歩いているときもずっと緊張していた。
りんは私の格好――女の格好――のことはただ褒めてくれただけで、特にツッコまなかった。
優しいから何かを『察し』て、何も言わないのだろう。
腕を組んで歩いた。
よく考えれば『男同士』のときは腕を組む方がハードルが低いものだったけど――付き合う前からりんはしょっちゅう腕を組もうとしてきた――。
『女男』としては手を繫ぐより、腕を組む方がハードルが高いような気もしたけど。
でも最後かも知れないから、と。
腕を組んだ。
りんに『実は女』を打ち明けて、関係も終わりにされてしまったら、もうできないから。
ちなみにサキと階段で練習した『腕を組みつつ胸を「当ててんのよ」する』は実践しなかった。
練習はしたものの、そんな痴女みたいな真似できるか!
……と思っていたけど普通に――いつも通りのスタイルで――腕を組んだつもりが、りんに『胸が当たっている』と言われてしまった。
意識してやらずとも、普通に当たってしまうようだ。
私はりんと静かにお茶を飲みながら、話のはじめの言葉を探していた。
いや、あらかじめ考えてもみたものの、『ぶっつけ本番』それが一番、正直に、誠実になれる気がしたのだ。
そして。
決心して口を開き書けたとき。
またタイミング良く(悪く?)りんの方が話を始めた。
「あおいさ……」
「ん?」
と首を傾げてりんを見上げると。
りんは私と目を合わさずに言った。
「その胸」
りんが胸を指差すので、私は自分の胸を見下ろし
「うん」
と相槌を打つ。
「スゴイよな?」
とりんは言った。
「あは……」
と苦笑いを返すと、りんは続ける。
「ちょっと触ってみてもいい?」
「え……」
と驚いて聞き返すと
「いや……実は」
とりんはすごく照れたような調子で言った。
「腕に胸が当たっているとき、何か気持ち良かったから」
!?
『当ててんのよ』するつもりではなかったのに、しっかり『当ててんのよ』した結果、サキの言う通り効果があったのか!?
と私はビックリした。
えっ……。
でもただの脂肪の塊だよね、胸って……と思うけど。
「うん、いいよ」
と私は頷いた。
「触っても良いよ」
ただの脂肪だし。
りんはちょっと表情を明るくすると、遠慮がちな手つきで私の胸にそっと触れた。
始めはポンポンと触っていたが、そのうち、軽く揉み始める。
「すごい……」
とりんはつぶやいた。
私は首を傾げた。
男子って、脂肪の塊、身体にないのかな?
二の腕とかあるでしょ……と思いつつ。
二の腕のぽよぽよと何が違うのだろう?
いや、一緒だろう。
と思いつつも。
でも何か。
私もドキドキじんじんしてきた。
何故だろう?
ただ脂肪の塊を触られているだけなのに……。
好きな人に『身体』を触られているからだろうか?
それとも『胸』を触られているからだろうか?
「なあ。あおい」
とりんは優しく胸をモミモミし続けながら言った。
「コレ、どこに売っているの?」
「え……」
「この胸の入れ物。
どこに売っているのかな、と思って」
と言うとりんは照れ笑いした。
「触り心地すごく良いからさ。
おれも1個欲しいかなー。と思って」
「……」
りん、コレ、偽物――詰め物か何か――だと思っているのか!
と私はハッとした。
いや、当たり前か。
りんは私を男子だと思っているのだから。
それに私を女だと知っている人にも、時々『この胸は詰め物ではないか?』と疑われるからね……。
「おれは1個で良いんだけど。
別におれは女の子になりたいわけじゃないし。
1個だけ買って、ストレス解消とかに触ろうかなーって」
とりんは言い訳を言うように言った。
私は頭の端で思った――『もしかしてサキの言う通りなんだろうか?』と。
『胸って男子を釣る効果があるのか?』と。
しかしそんなことをじっくり考えている場合じゃない。
と言うか『実は女』と打ち明ける話の糸口ができたじゃないか!
『この胸は偽物じゃない。私は女だ』と言うのだ。
「りん」
と私は真面目な調子で、
「コレ、偽物じゃないんだ……」
と言うと、りんは揉む手を止めて――それでも胸から手を外さずに――私をビックリ眼で見た。
「偽物じゃない……?」
と聞き返すりんに、私は頷いた。
「うん。ホンモノ。
詰め物じゃない」
りんは私から目を逸らすと、下に視線を落とした。
どうやら胸を見ているらしい。
そして、言った。
「ごめん。
痛くなかった?」
思わぬ言葉に「えっ」と聞き返すと、
「さっき揉んでいたの、痛くなかったかな?」
とりんは言い直した。
私は首を横に振った。
「全然痛くないよ!
むしろ気持ち良かった」
何言ってしまったんだ。痴女か。
と思ったが、りんはただ「良かった」と言うと……。
また揉み始めた。先程よりそっと優しく。
「りん……」
「スゴいな……」
とりんは言ったが。
その後
「でも」
と『逆説の接続詞』を使うと、少し口ごもり、ためらうように言った。
「大丈夫……なのかな?」
「えっ」
と聞き返すと、先程と同じ声音で――あまり感情的にならないよう気をつけている感じの淡々とした声音で――言った。
「こんな大きいもの、入れて、あおいの身体、大丈夫なのかな?」
「……」
「ほら……。
おれたち、まだ『成長過程』だろ?」
とりんは、とても気を使った調子で言う。
「だから、ちょっと、大丈夫かな? って、心配してしまう……」
と言いながら、そっと優しくモミモミする。
「でも……ほんと、スゴいよな、今の技術って。
こんな気持ち良いんだ……」
「……」
りん。
まだ、誤解しているね?
どうやら『ホンモノの胸』を『整形手術で大きくした胸』と考えたようだ。
早めに訂正せねば、と思い
「りん。
これ、本当に、ホンモノなんだ」
と言うと、りんは再びビックリ眼で私を見た後――。
目を細め、
「そうだね、あおい」
とりんは優しい笑顔で言った。
「とても、可愛い。と思うよ」
「……」
りん。
今、何か『察した』でしょ?
そして察した結果、優しさから『同意した』でしょ!
『整形手術の胸もホンモノと主張するあおいを傷付けたくない』
とか思っているのでは。
「りん……」
と私はめげずに言った。
「これ、本当に、本当に、ホンモノなの」
「わかった」
とりんは頷いた。
しかし、雰囲気で分かる。また察している。
「あの、りん。本当にホンモノ」
「うん」
りんは優しい微笑みを消して、真剣な顔をする。
「そうだね、あおい」
まだ察している。
「りん、あの……」
と私はついに『核心部分』を言うことにした。
「私、『実は女』なんだ!」
りんはその言葉で、私の胸をずっと優しくモミモミしていたのをピタッと止めて――それでも胸から手を外さずに――私を見た。
そして
「知っているよ、あおい」
と言った。
「あおいは女の子。
知ってる」
「え……」
「おれはあおいが女の子だから。
あおいのことが好きになったんだ。……と思う」
と優しい真剣な顔で私を見るりんに
「りん……」
いつ知ったんだろう?
いつから知っていたんだろう?
とパニックになっていると、りんは続けた。
「だから……」
とためらう調子で言うと、
「あんまり、無理するなよ?」
「え……」
「あおいがどこまで、その、身体を女子にしようとしているのか分からないけど……。
あおいの身体が一番だから」
「……」
「こんなこと言うのは悪いけど……。
この胸、身体に悪くないかな?
こんなに大きいの入れて、大丈夫なのかな。と思っちゃって……。
いや、すごく可愛いけど」
「……」
「そんなに、無理しなくても。
そのままであおいは女の子だよ」
「……」
りん……。
やはりわかっていないようだ。
え……。と混乱しつつ考えてみる。
りんは私の身体は男子だと思っている。
でも『あおいは女』だと思っている。
つまり、『身体は男、心は女』だと思っている、と言うことか!
そっか……。
「りん!」
私はりんに強い調子で言った。
ここまで『なかなかわかってもらえない』となると、『恐る恐る打ち明けている場合』ではない!
『わかりやすく』言わねば。
「私は女なんだ。
身体も、心もどちらも。
生まれてきたときから、女なんだ!」
と言うと、りんは私の胸に手を置いたまま、呆然と私を見つめたが。
しばらくすると私の胸から慌てて手を外し。
ソファの端まで、身体を移動し、できるだけ私から離れるようにした。
き、傷つく。
そして、
「女!?」
とりんは言った後、自分の手を――先程まで私の胸を揉んでいた手を――見下ろし、また私を――私の胸当たりを――見て、
「えっ……。
女?
生まれたときから?
って……」
と言うと、
「えっ……
じゃあ。
ホンモノ? って……。ホントに?」
私の胸を指差した。
「うん」
と頷くと、りんはまた自分の手を見下ろして
「嘘!?」
と言った。
「じゃあ……?
おれ、触っちゃったの?
女子の胸に……。
気付かないうちに?」
やはりサキの言うことは間違いだった、と思った。
男子は女子の胸が好きなど……。
好きどころか、りん、怒っているじゃないか。
『気付かないうちに女の胸に触っちまった』と。
「うん……これ、ホンモノの女の胸だよ」
と私が頷くと
「嘘!?」
と自分の手を呆然と見る、りん。
その動作何回しているんだろう?
「ごめんね……」
と謝ると。
私はできるだけ私から離れようとソファの端に移動したりんに、今までの事情を話し始めた。
りんの様子に、もしかして家族に『交際の挨拶』でもしなければならないと思っているのかな、と思い、
「今日、家に誰も居ないんだ」
と言うと、
「えっ」
とりんは驚いた。
そして、
「どうしてかな……」
と言う。
「えっと……」
と私は口ごもる。
『大事な話があるから、家族がいないときを選んで、りんに来て貰った』と言えば良いのだけど……。
しかし口を開く前に、
「そうだ。あおい、ゲーム好きだよな」
とりんは話を変えた。
「おれ、あんまり知らないから。スマホゲームくらいしか。
教えてよ」
「うん……」
いや、ゲームはできないかもしれない。
ゲームをしていて大事な話をする時間を逃し、また次の機会に伸ばすことになるとダメだから。
と思いつつも私は頷いた。
※※※
とりあえずリビングに案内した。
りんはソファに座っても、どこかかしこまっている。
台所――と言ってもダイニングキッチンだからリビングと繋がっている――でお茶とお菓子の用意をして、りんの元に戻る。
りんにコップに入れたお茶を手渡すと、私はその隣に座った。
りんはまだ何だか硬い様子だ。
私の方も硬い。
やはり『これから話すべきこと』を考えると緊張してしまう。
りんと一緒に駅から家まで歩いているときもずっと緊張していた。
りんは私の格好――女の格好――のことはただ褒めてくれただけで、特にツッコまなかった。
優しいから何かを『察し』て、何も言わないのだろう。
腕を組んで歩いた。
よく考えれば『男同士』のときは腕を組む方がハードルが低いものだったけど――付き合う前からりんはしょっちゅう腕を組もうとしてきた――。
『女男』としては手を繫ぐより、腕を組む方がハードルが高いような気もしたけど。
でも最後かも知れないから、と。
腕を組んだ。
りんに『実は女』を打ち明けて、関係も終わりにされてしまったら、もうできないから。
ちなみにサキと階段で練習した『腕を組みつつ胸を「当ててんのよ」する』は実践しなかった。
練習はしたものの、そんな痴女みたいな真似できるか!
……と思っていたけど普通に――いつも通りのスタイルで――腕を組んだつもりが、りんに『胸が当たっている』と言われてしまった。
意識してやらずとも、普通に当たってしまうようだ。
私はりんと静かにお茶を飲みながら、話のはじめの言葉を探していた。
いや、あらかじめ考えてもみたものの、『ぶっつけ本番』それが一番、正直に、誠実になれる気がしたのだ。
そして。
決心して口を開き書けたとき。
またタイミング良く(悪く?)りんの方が話を始めた。
「あおいさ……」
「ん?」
と首を傾げてりんを見上げると。
りんは私と目を合わさずに言った。
「その胸」
りんが胸を指差すので、私は自分の胸を見下ろし
「うん」
と相槌を打つ。
「スゴイよな?」
とりんは言った。
「あは……」
と苦笑いを返すと、りんは続ける。
「ちょっと触ってみてもいい?」
「え……」
と驚いて聞き返すと
「いや……実は」
とりんはすごく照れたような調子で言った。
「腕に胸が当たっているとき、何か気持ち良かったから」
!?
『当ててんのよ』するつもりではなかったのに、しっかり『当ててんのよ』した結果、サキの言う通り効果があったのか!?
と私はビックリした。
えっ……。
でもただの脂肪の塊だよね、胸って……と思うけど。
「うん、いいよ」
と私は頷いた。
「触っても良いよ」
ただの脂肪だし。
りんはちょっと表情を明るくすると、遠慮がちな手つきで私の胸にそっと触れた。
始めはポンポンと触っていたが、そのうち、軽く揉み始める。
「すごい……」
とりんはつぶやいた。
私は首を傾げた。
男子って、脂肪の塊、身体にないのかな?
二の腕とかあるでしょ……と思いつつ。
二の腕のぽよぽよと何が違うのだろう?
いや、一緒だろう。
と思いつつも。
でも何か。
私もドキドキじんじんしてきた。
何故だろう?
ただ脂肪の塊を触られているだけなのに……。
好きな人に『身体』を触られているからだろうか?
それとも『胸』を触られているからだろうか?
「なあ。あおい」
とりんは優しく胸をモミモミし続けながら言った。
「コレ、どこに売っているの?」
「え……」
「この胸の入れ物。
どこに売っているのかな、と思って」
と言うとりんは照れ笑いした。
「触り心地すごく良いからさ。
おれも1個欲しいかなー。と思って」
「……」
りん、コレ、偽物――詰め物か何か――だと思っているのか!
と私はハッとした。
いや、当たり前か。
りんは私を男子だと思っているのだから。
それに私を女だと知っている人にも、時々『この胸は詰め物ではないか?』と疑われるからね……。
「おれは1個で良いんだけど。
別におれは女の子になりたいわけじゃないし。
1個だけ買って、ストレス解消とかに触ろうかなーって」
とりんは言い訳を言うように言った。
私は頭の端で思った――『もしかしてサキの言う通りなんだろうか?』と。
『胸って男子を釣る効果があるのか?』と。
しかしそんなことをじっくり考えている場合じゃない。
と言うか『実は女』と打ち明ける話の糸口ができたじゃないか!
『この胸は偽物じゃない。私は女だ』と言うのだ。
「りん」
と私は真面目な調子で、
「コレ、偽物じゃないんだ……」
と言うと、りんは揉む手を止めて――それでも胸から手を外さずに――私をビックリ眼で見た。
「偽物じゃない……?」
と聞き返すりんに、私は頷いた。
「うん。ホンモノ。
詰め物じゃない」
りんは私から目を逸らすと、下に視線を落とした。
どうやら胸を見ているらしい。
そして、言った。
「ごめん。
痛くなかった?」
思わぬ言葉に「えっ」と聞き返すと、
「さっき揉んでいたの、痛くなかったかな?」
とりんは言い直した。
私は首を横に振った。
「全然痛くないよ!
むしろ気持ち良かった」
何言ってしまったんだ。痴女か。
と思ったが、りんはただ「良かった」と言うと……。
また揉み始めた。先程よりそっと優しく。
「りん……」
「スゴいな……」
とりんは言ったが。
その後
「でも」
と『逆説の接続詞』を使うと、少し口ごもり、ためらうように言った。
「大丈夫……なのかな?」
「えっ」
と聞き返すと、先程と同じ声音で――あまり感情的にならないよう気をつけている感じの淡々とした声音で――言った。
「こんな大きいもの、入れて、あおいの身体、大丈夫なのかな?」
「……」
「ほら……。
おれたち、まだ『成長過程』だろ?」
とりんは、とても気を使った調子で言う。
「だから、ちょっと、大丈夫かな? って、心配してしまう……」
と言いながら、そっと優しくモミモミする。
「でも……ほんと、スゴいよな、今の技術って。
こんな気持ち良いんだ……」
「……」
りん。
まだ、誤解しているね?
どうやら『ホンモノの胸』を『整形手術で大きくした胸』と考えたようだ。
早めに訂正せねば、と思い
「りん。
これ、本当に、ホンモノなんだ」
と言うと、りんは再びビックリ眼で私を見た後――。
目を細め、
「そうだね、あおい」
とりんは優しい笑顔で言った。
「とても、可愛い。と思うよ」
「……」
りん。
今、何か『察した』でしょ?
そして察した結果、優しさから『同意した』でしょ!
『整形手術の胸もホンモノと主張するあおいを傷付けたくない』
とか思っているのでは。
「りん……」
と私はめげずに言った。
「これ、本当に、本当に、ホンモノなの」
「わかった」
とりんは頷いた。
しかし、雰囲気で分かる。また察している。
「あの、りん。本当にホンモノ」
「うん」
りんは優しい微笑みを消して、真剣な顔をする。
「そうだね、あおい」
まだ察している。
「りん、あの……」
と私はついに『核心部分』を言うことにした。
「私、『実は女』なんだ!」
りんはその言葉で、私の胸をずっと優しくモミモミしていたのをピタッと止めて――それでも胸から手を外さずに――私を見た。
そして
「知っているよ、あおい」
と言った。
「あおいは女の子。
知ってる」
「え……」
「おれはあおいが女の子だから。
あおいのことが好きになったんだ。……と思う」
と優しい真剣な顔で私を見るりんに
「りん……」
いつ知ったんだろう?
いつから知っていたんだろう?
とパニックになっていると、りんは続けた。
「だから……」
とためらう調子で言うと、
「あんまり、無理するなよ?」
「え……」
「あおいがどこまで、その、身体を女子にしようとしているのか分からないけど……。
あおいの身体が一番だから」
「……」
「こんなこと言うのは悪いけど……。
この胸、身体に悪くないかな?
こんなに大きいの入れて、大丈夫なのかな。と思っちゃって……。
いや、すごく可愛いけど」
「……」
「そんなに、無理しなくても。
そのままであおいは女の子だよ」
「……」
りん……。
やはりわかっていないようだ。
え……。と混乱しつつ考えてみる。
りんは私の身体は男子だと思っている。
でも『あおいは女』だと思っている。
つまり、『身体は男、心は女』だと思っている、と言うことか!
そっか……。
「りん!」
私はりんに強い調子で言った。
ここまで『なかなかわかってもらえない』となると、『恐る恐る打ち明けている場合』ではない!
『わかりやすく』言わねば。
「私は女なんだ。
身体も、心もどちらも。
生まれてきたときから、女なんだ!」
と言うと、りんは私の胸に手を置いたまま、呆然と私を見つめたが。
しばらくすると私の胸から慌てて手を外し。
ソファの端まで、身体を移動し、できるだけ私から離れるようにした。
き、傷つく。
そして、
「女!?」
とりんは言った後、自分の手を――先程まで私の胸を揉んでいた手を――見下ろし、また私を――私の胸当たりを――見て、
「えっ……。
女?
生まれたときから?
って……」
と言うと、
「えっ……
じゃあ。
ホンモノ? って……。ホントに?」
私の胸を指差した。
「うん」
と頷くと、りんはまた自分の手を見下ろして
「嘘!?」
と言った。
「じゃあ……?
おれ、触っちゃったの?
女子の胸に……。
気付かないうちに?」
やはりサキの言うことは間違いだった、と思った。
男子は女子の胸が好きなど……。
好きどころか、りん、怒っているじゃないか。
『気付かないうちに女の胸に触っちまった』と。
「うん……これ、ホンモノの女の胸だよ」
と私が頷くと
「嘘!?」
と自分の手を呆然と見る、りん。
その動作何回しているんだろう?
「ごめんね……」
と謝ると。
私はできるだけ私から離れようとソファの端に移動したりんに、今までの事情を話し始めた。
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