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第二部
60話 あおいは女の子?
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おれが引き下がらないで2人を見ていると。
キョウが困った顔で
「あおいちゃんには内緒だよ?」
と言うと、自分のスマホをおれの方へ差し出した。
サキが心配そうな顔をしているのが目に入ったが、気に懸ける余裕がなく、おれはキョウのスマホの画面を見つめた。
そこに写っていたのは……
ぼんやりとした表情でバナナを食べている、パジャマ姿のあおいだった。
「な、何コレ!?」
とおれは叫んだ。
「えっ!? あおい、寝起き!? だよな、これ!?
えっ!?
こんな写真持っているなんて。
キョウ、まさかあおいと……」
キョウとあおい、まさかそこまで進……
「むっつりん」
とキョウがジト目をおれに向けて言った。
むっつりん!?
「やだあ、加藤くん……」
とサキがドン引きした顔で、
「この写真1枚で一瞬でそこまで考える……。
まさにゲスパー加藤。……くん」
ゲスパー加藤!? ……くん(後付け?)。
「コレはあおいちゃんの弟のタケルくんに送ってもらった写真だよ~」
とキョウは言った。
「寝起きなのは、あおいちゃんタケルくんが写真撮ると怒るから。
あおいちゃんがボーッとしている寝起きのときにコッソリ撮って。
送ってくれるんだ」
何してんだよ、あおいの弟!?
何で撮られるのをイヤがっているあおいの写真をキョウに送っているんだ!?
いや、あおいの弟はここにはいないから、今苦言を言うべきは……。
いや、おれも何か言える立場ではないけど。
無理矢理、スマホ画面を見せてもらったわけだから。
だから非難と言うより、ただ、
「そう言うのどうかなあ……」
と、にごす感じで言った。
「私も最初はそう思ったけどねぇ」
とサキは困った顔でキョウを横目で見た。
「でも。
あおいくん可愛いから。
つい……鈴木くんに便乗して見せてもらっていたの」
「こう言うの、初めは悪いな、と思っているけど。
習慣化すると罪悪感が薄れていくよね……」
とキョウもまた困ったように言った。
おれたちはしばらく沈黙した。
皆、それぞれ誰かに罪悪感を感じているようだ。
その後、沈黙に耐えかねたのと、話したいことがあったので、おれがまず口を開いた。
「なんか。
あおいのパジャマ、可愛いね……」
写真のあおいはパジャマ姿だが、そのパジャマはピンク色の可愛い物だった。
「う……うん」
と言うキョウの戸惑った返事。
続けて、
「女物だよな、これ」
とおれが言うと、サキとキョウは困った顔を見合わせた。
「うん……かもね」
「あのさ……」
おれは決意を固めて、2人を見た。
「ん? 何?」
「あおいってもしかして……女なのかな?」
とおれが言うと、サキとキョウはビックリ顔で硬直しておれを見つめ返してきた。
「いや……」
とおれは2人の反応に慌てた。
言っていることがおかしい、頭がおかしいと思われたみたいだ。
キョウに対しては、二度目だ。おかしな発言してしまうの。
おれは『ごくり』と言った調子でおれを見つめる2人に、釈明を始めた。
「いや、違うんだ。
あおいは男ってわかっているけど。
もちろんわかっているけど。
その……なんていうか。
『あおいって「心が女」なのかな?』みたいに思って……」
キョウとサキはハラハラ緊張した顔をしておれを見続けている。
おれは釈明を続けた。
「だってその写真。
全くのプライベートの状態で、女の格好、しているってことだろ?
そう言うの『心が女』で。
だから、するんじゃないかなって……思うんだけど。
だって普通、男が女物着ないだろ? 普段から」
「まあ」
とまずサキの方が真面目な顔でおれを見つつ口を開いた。
「心……うん。
あってるよ、加藤くん。
……と思う」
「うん。
『心が女』。
あってる。
……と思う」
とキョウも真面目な顔で同意してくれた。
「そっか……」
とつぶやくと、2人を見て、
「ありがとう、教えてくれて」
「いや……はは」
とサキ。
「うん……まあね」
とキョウ。
「ごめん。無理矢理聞き出したりして」
と謝ると、
「いいよ。
気になるよね?
仕方ないよ」
とサキ。
「まあ、あおいちゃんには悪かったけど……。
あんな写真りんに見せちゃって」
とキョウは苦笑いを返してきた。
「あ、あおいちゃんの写真、りんもいる?」
「いや。いらない」
と答えると、おれはキョウを見て、
「あのさ。キョウ」
「ん?」
キョウのぎこちない笑顔を見ながら、自分の思考を思い返す。
『あおいの「心」は女の子』
写真を見て、そう思ったとき、どこか腑に落ちた。
そして、心が軽くなるのを感じた。
あおいの心が女の子なら、おれが『異性愛者』でもあおいのことを好きになるのは自然なことなんじゃないか? って。思ったんだ。
だから。
「おれ……あおいに……」
サキがいるから、どうしようかと思ったけど。
言ってしまおうと思った。
サキの耳にもどうせ入る気がしたし。キョウ経由から、あるいはあおい経由から。
「あおいに告白する!」
とおれは言ってしまった。
キョウがビックリした顔でおれを見つめてくる。
「ごめん、抜け駆けかもしれないけど……」
「い、いや……。そんなの、全然いいけど……」
「ありがとう、キョウ」
と言うと、おれは教室の扉へ向かった。
扉を閉める前に、もう一度キョウとサキを見て、
「今日はごめん」
と謝る。
2人は呆然と立ち尽くしておれを見ていたが、おれの謝罪に愛想笑いを返しつつ手を振ってきた。
「頑張ってね、加藤くん」
と言うサキの声。
「りん、頑張って……」
と言うキョウの声。
どちらも弱々しかった。
キョウが困った顔で
「あおいちゃんには内緒だよ?」
と言うと、自分のスマホをおれの方へ差し出した。
サキが心配そうな顔をしているのが目に入ったが、気に懸ける余裕がなく、おれはキョウのスマホの画面を見つめた。
そこに写っていたのは……
ぼんやりとした表情でバナナを食べている、パジャマ姿のあおいだった。
「な、何コレ!?」
とおれは叫んだ。
「えっ!? あおい、寝起き!? だよな、これ!?
えっ!?
こんな写真持っているなんて。
キョウ、まさかあおいと……」
キョウとあおい、まさかそこまで進……
「むっつりん」
とキョウがジト目をおれに向けて言った。
むっつりん!?
「やだあ、加藤くん……」
とサキがドン引きした顔で、
「この写真1枚で一瞬でそこまで考える……。
まさにゲスパー加藤。……くん」
ゲスパー加藤!? ……くん(後付け?)。
「コレはあおいちゃんの弟のタケルくんに送ってもらった写真だよ~」
とキョウは言った。
「寝起きなのは、あおいちゃんタケルくんが写真撮ると怒るから。
あおいちゃんがボーッとしている寝起きのときにコッソリ撮って。
送ってくれるんだ」
何してんだよ、あおいの弟!?
何で撮られるのをイヤがっているあおいの写真をキョウに送っているんだ!?
いや、あおいの弟はここにはいないから、今苦言を言うべきは……。
いや、おれも何か言える立場ではないけど。
無理矢理、スマホ画面を見せてもらったわけだから。
だから非難と言うより、ただ、
「そう言うのどうかなあ……」
と、にごす感じで言った。
「私も最初はそう思ったけどねぇ」
とサキは困った顔でキョウを横目で見た。
「でも。
あおいくん可愛いから。
つい……鈴木くんに便乗して見せてもらっていたの」
「こう言うの、初めは悪いな、と思っているけど。
習慣化すると罪悪感が薄れていくよね……」
とキョウもまた困ったように言った。
おれたちはしばらく沈黙した。
皆、それぞれ誰かに罪悪感を感じているようだ。
その後、沈黙に耐えかねたのと、話したいことがあったので、おれがまず口を開いた。
「なんか。
あおいのパジャマ、可愛いね……」
写真のあおいはパジャマ姿だが、そのパジャマはピンク色の可愛い物だった。
「う……うん」
と言うキョウの戸惑った返事。
続けて、
「女物だよな、これ」
とおれが言うと、サキとキョウは困った顔を見合わせた。
「うん……かもね」
「あのさ……」
おれは決意を固めて、2人を見た。
「ん? 何?」
「あおいってもしかして……女なのかな?」
とおれが言うと、サキとキョウはビックリ顔で硬直しておれを見つめ返してきた。
「いや……」
とおれは2人の反応に慌てた。
言っていることがおかしい、頭がおかしいと思われたみたいだ。
キョウに対しては、二度目だ。おかしな発言してしまうの。
おれは『ごくり』と言った調子でおれを見つめる2人に、釈明を始めた。
「いや、違うんだ。
あおいは男ってわかっているけど。
もちろんわかっているけど。
その……なんていうか。
『あおいって「心が女」なのかな?』みたいに思って……」
キョウとサキはハラハラ緊張した顔をしておれを見続けている。
おれは釈明を続けた。
「だってその写真。
全くのプライベートの状態で、女の格好、しているってことだろ?
そう言うの『心が女』で。
だから、するんじゃないかなって……思うんだけど。
だって普通、男が女物着ないだろ? 普段から」
「まあ」
とまずサキの方が真面目な顔でおれを見つつ口を開いた。
「心……うん。
あってるよ、加藤くん。
……と思う」
「うん。
『心が女』。
あってる。
……と思う」
とキョウも真面目な顔で同意してくれた。
「そっか……」
とつぶやくと、2人を見て、
「ありがとう、教えてくれて」
「いや……はは」
とサキ。
「うん……まあね」
とキョウ。
「ごめん。無理矢理聞き出したりして」
と謝ると、
「いいよ。
気になるよね?
仕方ないよ」
とサキ。
「まあ、あおいちゃんには悪かったけど……。
あんな写真りんに見せちゃって」
とキョウは苦笑いを返してきた。
「あ、あおいちゃんの写真、りんもいる?」
「いや。いらない」
と答えると、おれはキョウを見て、
「あのさ。キョウ」
「ん?」
キョウのぎこちない笑顔を見ながら、自分の思考を思い返す。
『あおいの「心」は女の子』
写真を見て、そう思ったとき、どこか腑に落ちた。
そして、心が軽くなるのを感じた。
あおいの心が女の子なら、おれが『異性愛者』でもあおいのことを好きになるのは自然なことなんじゃないか? って。思ったんだ。
だから。
「おれ……あおいに……」
サキがいるから、どうしようかと思ったけど。
言ってしまおうと思った。
サキの耳にもどうせ入る気がしたし。キョウ経由から、あるいはあおい経由から。
「あおいに告白する!」
とおれは言ってしまった。
キョウがビックリした顔でおれを見つめてくる。
「ごめん、抜け駆けかもしれないけど……」
「い、いや……。そんなの、全然いいけど……」
「ありがとう、キョウ」
と言うと、おれは教室の扉へ向かった。
扉を閉める前に、もう一度キョウとサキを見て、
「今日はごめん」
と謝る。
2人は呆然と立ち尽くしておれを見ていたが、おれの謝罪に愛想笑いを返しつつ手を振ってきた。
「頑張ってね、加藤くん」
と言うサキの声。
「りん、頑張って……」
と言うキョウの声。
どちらも弱々しかった。
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