63 / 74
第三部
63話 あおりん
しおりを挟む
私はドキドキしながら電車の座席に座っていた。
「〇〇駅です」
と言う車掌さんのアナウンスとともに、電車のドアが開く。
私は『いつもの』ドアを見つめた。
『彼』が乗ってくるドアを。
『彼』は電車に乗り込んですぐ私の視線に気付き、ニコッと白い歯を見せた。
私はポーッとしてしまう。
か……かっこいい……。
いや、いつもかっこいいが。
何これ。
いつも以上に……ドキドキする。
だって、『彼』は……。私の……。
「おはよ……りん」
と目の前に立った『彼』――りん――に声をかけると、
「おはよ。あおい」
とりんはおそらくいつも通り言ったが。
いつも通りに聞こえないんだ。
語尾にハートマークが付いているのか? って感じに、私には聞こえるんだ!
何故なら……私たちは……。
昨日、『恋人同士』になったんだもの!
本当だろうか?
本当に恋人同士なんだろうか?
夢じゃないだろうか?
夢じゃないと良いけど。
「あ、座る?」
と私は腰を浮かせて、いつも通りりんに尋ねた。
りんは首をかしげて……
「いいよ。あおい座ってて」
「そっか……」
私にはこんな会話もお互い語尾にハートマークが付いているように、まだ聞こえる。
私は腰を落ち着かせた後、顔を下に俯けた。
どうしよう。
ずっとニヤニヤしてしまう。
どうしよう。
こう言うときって――彼氏ができたときって――ずっとニヤニヤ、ドキドキしちゃうものなのだろうか? 皆?
初めてだからわからない……。
いつまで続くのだろう?
色々、保つんだろうか?
私はずっとドキドキしながら、りんとまともに顔を合わせられず――ニヤケ顔が見られてしまう――顔を下へ向けた状態で電車に揺られていった。
終点まで。
※※※
電車を降りてしばらく後、
「ねえ、りん」
と私は切り出した。電車内で下を向きニヤニヤしつつも考えたことを。
「今更だけど……。
朝、電車の中でイスに座るの、順番こにしない?
おればかり座っているの悪いから……」
「優しいんだ、あおい」
とりんはニヤニヤした。
「もしかしておれたちが付き合い始めたから。
そんなこと言ってくれるのかな?」
「えへ……」
と私は照れた後、
「そうだよ!
恋人同士になったから、りんのこと優しくしとかないとなー、って思ったんだよ!」
と言うと、りんはふっと笑い、
「じゃあ、月水金はあおいが座って。
火木はおれが座ることにする?」
「えっ。でも、それじゃあ、りんの方が少ないし」
「いいんだよ」
とりんは笑った。
「おれ、あおいの寝顔を見るの好きだし」
……。
今のは!
完璧に語尾にハートマーク付いていたわ!
私も……りんの寝顔見たいな、と言っちゃおうかな……。
言っても良いかな?
「おれも、りんの寝顔、見たいな」
言った!
りんはニヤニヤすると、私の腕に触れて、腕を組んできた。
私がドキドキしながら彼を見上げると、りんはニコ~として、
「今日はイヤがらないんだ。
前は腕を組もうとすると振り払ってきたのに」
「えへ……。
だって……付き合っているから……」
私たちはニコ~と笑い合う。
ああ、こんなに(お互い)デレデレで良いんだろうか?
と、私はここであることに気付き、りんの手を私の腕から外させた。
りんは目を丸くした後、不安げな顔をするが……。
今度は私からりんの腕に手を絡ませた。
「こっちの方が!
歩くのに楽だろ?
身長的に」
と言うとりんはまたニコーッとする。
「そうだね、あおい」
「えへへ……」
どうしよう、幸せ過ぎる。
今死んでもいいや。いや、死んじゃダメだ!
その後は、腕を組み身体を寄せつつ黙々と歩いた。
だって、胸がいっぱいで言葉が出てこない。
カップル名は『あおりん』かなあ、なんてどうでも良いことを私は考えていた。
あおりん、あおりん……。あおいとりん……。
そのとき、ふと。
路肩に止めてある黒いワゴン車が目に留まった。
そして黒ガラスに映る、りんと私の姿が目に入ってきた。
……。
!?
何か、私の脳内の映像と全然違うんだけど……。
私の脳内の映像……さわやか女男高校生カップル。
車の黒ガラスに映る二人……イチャつく男子高校生二人。
……。
そうだ……。
私、あまりに慣れ過ぎてスルーしていたけど、今、男子高校生だったんだ……。
……
!?
男子高校生……。
あ れ ?
私は男子高校生。私は男子高校生……。
じゃあ。
りんは……?
『恋愛感情であおいが好き』
そう言ってくれたけど……。
何故だろう?
私のことを男だと思っているのに、『恋愛感情で好き』。
それって……。まさか……。
「どうかした、あおい」
とりんが私の顔を覗き込んできたので、私は慌てて車から目を離した。
「何でもない!」
と答えつつ、不安感が胸を渦巻いていくのを感じた。じわじわと。
りんは私のこと、男だと思っている、当然。
そして私のこと『恋愛感情で好き』と言ってくれた。
それって……。
私は別の意味でドキドキし始めながら思った。
何でこんなこと、今まで気付かなかったのだろう?
りんに告白されてから既に半日も経っているのに。
私、頭の中お花畑で、考えもしなかったんだ。
りんがボーイズラブなら、りんの私への気持ちは『誤解』の可能性があることを。
「〇〇駅です」
と言う車掌さんのアナウンスとともに、電車のドアが開く。
私は『いつもの』ドアを見つめた。
『彼』が乗ってくるドアを。
『彼』は電車に乗り込んですぐ私の視線に気付き、ニコッと白い歯を見せた。
私はポーッとしてしまう。
か……かっこいい……。
いや、いつもかっこいいが。
何これ。
いつも以上に……ドキドキする。
だって、『彼』は……。私の……。
「おはよ……りん」
と目の前に立った『彼』――りん――に声をかけると、
「おはよ。あおい」
とりんはおそらくいつも通り言ったが。
いつも通りに聞こえないんだ。
語尾にハートマークが付いているのか? って感じに、私には聞こえるんだ!
何故なら……私たちは……。
昨日、『恋人同士』になったんだもの!
本当だろうか?
本当に恋人同士なんだろうか?
夢じゃないだろうか?
夢じゃないと良いけど。
「あ、座る?」
と私は腰を浮かせて、いつも通りりんに尋ねた。
りんは首をかしげて……
「いいよ。あおい座ってて」
「そっか……」
私にはこんな会話もお互い語尾にハートマークが付いているように、まだ聞こえる。
私は腰を落ち着かせた後、顔を下に俯けた。
どうしよう。
ずっとニヤニヤしてしまう。
どうしよう。
こう言うときって――彼氏ができたときって――ずっとニヤニヤ、ドキドキしちゃうものなのだろうか? 皆?
初めてだからわからない……。
いつまで続くのだろう?
色々、保つんだろうか?
私はずっとドキドキしながら、りんとまともに顔を合わせられず――ニヤケ顔が見られてしまう――顔を下へ向けた状態で電車に揺られていった。
終点まで。
※※※
電車を降りてしばらく後、
「ねえ、りん」
と私は切り出した。電車内で下を向きニヤニヤしつつも考えたことを。
「今更だけど……。
朝、電車の中でイスに座るの、順番こにしない?
おればかり座っているの悪いから……」
「優しいんだ、あおい」
とりんはニヤニヤした。
「もしかしておれたちが付き合い始めたから。
そんなこと言ってくれるのかな?」
「えへ……」
と私は照れた後、
「そうだよ!
恋人同士になったから、りんのこと優しくしとかないとなー、って思ったんだよ!」
と言うと、りんはふっと笑い、
「じゃあ、月水金はあおいが座って。
火木はおれが座ることにする?」
「えっ。でも、それじゃあ、りんの方が少ないし」
「いいんだよ」
とりんは笑った。
「おれ、あおいの寝顔を見るの好きだし」
……。
今のは!
完璧に語尾にハートマーク付いていたわ!
私も……りんの寝顔見たいな、と言っちゃおうかな……。
言っても良いかな?
「おれも、りんの寝顔、見たいな」
言った!
りんはニヤニヤすると、私の腕に触れて、腕を組んできた。
私がドキドキしながら彼を見上げると、りんはニコ~として、
「今日はイヤがらないんだ。
前は腕を組もうとすると振り払ってきたのに」
「えへ……。
だって……付き合っているから……」
私たちはニコ~と笑い合う。
ああ、こんなに(お互い)デレデレで良いんだろうか?
と、私はここであることに気付き、りんの手を私の腕から外させた。
りんは目を丸くした後、不安げな顔をするが……。
今度は私からりんの腕に手を絡ませた。
「こっちの方が!
歩くのに楽だろ?
身長的に」
と言うとりんはまたニコーッとする。
「そうだね、あおい」
「えへへ……」
どうしよう、幸せ過ぎる。
今死んでもいいや。いや、死んじゃダメだ!
その後は、腕を組み身体を寄せつつ黙々と歩いた。
だって、胸がいっぱいで言葉が出てこない。
カップル名は『あおりん』かなあ、なんてどうでも良いことを私は考えていた。
あおりん、あおりん……。あおいとりん……。
そのとき、ふと。
路肩に止めてある黒いワゴン車が目に留まった。
そして黒ガラスに映る、りんと私の姿が目に入ってきた。
……。
!?
何か、私の脳内の映像と全然違うんだけど……。
私の脳内の映像……さわやか女男高校生カップル。
車の黒ガラスに映る二人……イチャつく男子高校生二人。
……。
そうだ……。
私、あまりに慣れ過ぎてスルーしていたけど、今、男子高校生だったんだ……。
……
!?
男子高校生……。
あ れ ?
私は男子高校生。私は男子高校生……。
じゃあ。
りんは……?
『恋愛感情であおいが好き』
そう言ってくれたけど……。
何故だろう?
私のことを男だと思っているのに、『恋愛感情で好き』。
それって……。まさか……。
「どうかした、あおい」
とりんが私の顔を覗き込んできたので、私は慌てて車から目を離した。
「何でもない!」
と答えつつ、不安感が胸を渦巻いていくのを感じた。じわじわと。
りんは私のこと、男だと思っている、当然。
そして私のこと『恋愛感情で好き』と言ってくれた。
それって……。
私は別の意味でドキドキし始めながら思った。
何でこんなこと、今まで気付かなかったのだろう?
りんに告白されてから既に半日も経っているのに。
私、頭の中お花畑で、考えもしなかったんだ。
りんがボーイズラブなら、りんの私への気持ちは『誤解』の可能性があることを。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

男女比1対99の世界で引き篭もります!
夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公!
前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!!
偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたので、欲望に身を任せてみることにした
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。彼女を女として見た時、俺は欲望を抑えることなんかできなかった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる