53 / 74
第二部
53話〈サキ視点〉サキも悩む
しおりを挟む
最近加藤くんが悩んでいるらしい。
あおいくんのことが気になる自分はゲイなのではないか? とか色々。
鈴木くんに聞いた。
聞いたと言うより、聞かされたのだが。
アイツ『罪悪感のお裾分け』しに来やがった。
余計な情報伝えやがって。
私を巻きこむな! と思った。
鈴木くんは私に加藤くんの悩みを打ち明け、少しスッキリしていた。
聞かされたこっちはどんよりだよ!
と言うのも、私は鈴木くんよりあおいくんと加藤くんに関する情報を持っているのだ。
鈴木くんは『あおいくんが加藤くんの手を握って加藤くんが怒りケンカになった』と言うところまでしか知らないけど。
あおいくんは『その後』を私に話してくれた。
『その後』――あおいくんが加藤くんの手を握った後――。
あおいくんは加藤くんがまたいたずらに彼女に接触してこないよう釘を刺すため、『恋愛感情でりんが好き』と告白したのだ。
『恋愛感情でりんが好きだから、りんに触られると恋愛感情で嬉しくなる。
そんなのはりんも望んでいないでしょ?』
と言う感じの告白をしたのだそう。
そのことを私はあおいくんから聞いている。
そして、鈴木くんからは『加藤くんがあおいちゃんのことが気になっている』と言う情報を得た。
そのときの鈴木くんの様子を見ている限り、加藤くんはあおいくんに告白されたことは鈴木くんには打ち明けていないようだ。
さすが真面目で慎重そうな加藤くん、自分にそれを言う権限はないと思うところ――『あおいくんは加藤くんが好き』――を押さえている。
ま、加藤くんも鈴木くんがあおいくんのことを好きだと知っているみたいだから、単に言えなかっただけかもしれないけど。
……と言うことで。
今のところ、私が4人の中でいちばん情報を持っていると言えるのでは無いか?
鈴木くんが知らないこと――あおいくんが加藤くんに告白したこと――を私は知っている。
あおいくんが知らないこと――加藤くんもあおいくんが気になっていること――を私は知っている。
そして加藤くんが知らないこと――あおいくんが本当は女子だと言うこと――も私は知っている。
つまり私が4人の中でいちばん情報があるのだ……。
そんな私は、今、何をすべきなんだろう?
「りんに、あおいちゃんは女の子って言っちゃダメだよね?」
と鈴木くんは私に聞いてきた。
こいつ『言っちゃダメだ』と私が言うと思いつつ質問している。
もう答えが自分で出ている質問をしているのだ。
……と思いつつも、私は仕方なく答えた。
「やっぱり言えないよね?」
言えない。
あおいくんが『実は女』だと聞いたとき、加藤くんがどう言う言動を取るか全然想像がつかないから。
彼は良い子だと思うけど、それでも『男子が、ずっと男友達と思って接してきた男が「実は女」――それも普通に男子が恋愛対象の女――だと知ったとき』、どんなことを思い行動するか想像できない。
私があおいくんを女子と知ったときともまた違うだろう。
女子が、男子だと思っていた子が『実は女』だと知ったときとは当然違う。
きっと、色々。
私は加藤くんに同情している。
多分、鈴木くんがしているよりも多くの同情を。
そしてきっと罪悪感も鈴木くんより感じている。
私も加藤くんと同じ立場にいたのだから。
彼の気持ちが少しはわかるはずだから。
あおいくんと言う男子を好きになり。
私も悩んだ。
『あれ?
私、レズじゃなかったのかな?』
と。
自分の性的指向について悩んだ。
『もしかして自分のことをレズだと思ったのは。
厨二病か何かだったのかなあ?』
なんて思ったりもした。
いや。やはりレズだった。結局。
あおいくんは女の子だったのだから。
『加藤くんに、あおいくんは「実は女」だと言うわけにはいかない』
そのことは鈴木くんも私も同意見だった。
同じ結論にたどり着いたことで鈴木くんはホッとしていたが。
こっちはまだ考えることがあるんだよ。
おまえが余計な情報をくれたせいでな。
『あおいくんに「加藤くんはあおいくんのことが気になっている」と伝えるべきか』
伝えるべきなのではないか? と最初は思ったけど。
言ってどうなる? とも思った。
言ったところで、あおいくんが舞い上がってよく考えずに『自分は女だ』と加藤くんに告げて。
もし加藤くんがあおいくんのことを『変態』だと言い出したらどうなる?
『男の敵だ!』と皆に向けて発信したらどうなる?
あおいくんは社会的死を迎えてしまうのではないだろうか?
あおいくんもそこまでバカではなく、加藤くんが自分を好きだと知っても、加藤くんに『自分は女だ』と告げず、このままの状態を維持するのかもしれない。
でもそうなるとあおいくんは今よりもっと罪悪感を持つことになるんじゃないか?
加藤くんのためにした彼女の『愛の告白』が、彼を苦しめていると知るのだから。
そして両思いと知りつつ彼の気持ちに答えられないことにも彼女は苦しむだろう。
もちろん『加藤くんとあおいくんは両思い』を教えることで、ハッピーエンドを迎える可能性もある。
あおいくんは加藤くんに、女であることを告げ、加藤くんはそれを受け入れ、彼らはこっそりと甘い高校生活を始めるのだ……。
『2人だけの秘密』と言うスパイスが効いた、青春時代をともに過ごすのだ……。
いや、しかし。
私にはわからない。
そんなハッピーエンドをちゃんと迎えてくれるか、100%予測できないのなら。
私はあおいくんに
『加藤くんがあおいくんを気になっている』
と伝えるべきではないんじゃないか?
とにかく……。
『しばらくは様子見だ!』
と言う結論に至った。
自分からは何も働きかけない。
『傍観者』だよ!
しかたない!
鈴木の奴、私に余計な情報をもたらしやがって。
アイツと『「みどり」萌え秘密倶楽部』なんか結成するんじゃなかった……。
でも今日のみどりちゃんの写真も可愛かったなあ……。
〈サキ視点、終〉
あおいくんのことが気になる自分はゲイなのではないか? とか色々。
鈴木くんに聞いた。
聞いたと言うより、聞かされたのだが。
アイツ『罪悪感のお裾分け』しに来やがった。
余計な情報伝えやがって。
私を巻きこむな! と思った。
鈴木くんは私に加藤くんの悩みを打ち明け、少しスッキリしていた。
聞かされたこっちはどんよりだよ!
と言うのも、私は鈴木くんよりあおいくんと加藤くんに関する情報を持っているのだ。
鈴木くんは『あおいくんが加藤くんの手を握って加藤くんが怒りケンカになった』と言うところまでしか知らないけど。
あおいくんは『その後』を私に話してくれた。
『その後』――あおいくんが加藤くんの手を握った後――。
あおいくんは加藤くんがまたいたずらに彼女に接触してこないよう釘を刺すため、『恋愛感情でりんが好き』と告白したのだ。
『恋愛感情でりんが好きだから、りんに触られると恋愛感情で嬉しくなる。
そんなのはりんも望んでいないでしょ?』
と言う感じの告白をしたのだそう。
そのことを私はあおいくんから聞いている。
そして、鈴木くんからは『加藤くんがあおいちゃんのことが気になっている』と言う情報を得た。
そのときの鈴木くんの様子を見ている限り、加藤くんはあおいくんに告白されたことは鈴木くんには打ち明けていないようだ。
さすが真面目で慎重そうな加藤くん、自分にそれを言う権限はないと思うところ――『あおいくんは加藤くんが好き』――を押さえている。
ま、加藤くんも鈴木くんがあおいくんのことを好きだと知っているみたいだから、単に言えなかっただけかもしれないけど。
……と言うことで。
今のところ、私が4人の中でいちばん情報を持っていると言えるのでは無いか?
鈴木くんが知らないこと――あおいくんが加藤くんに告白したこと――を私は知っている。
あおいくんが知らないこと――加藤くんもあおいくんが気になっていること――を私は知っている。
そして加藤くんが知らないこと――あおいくんが本当は女子だと言うこと――も私は知っている。
つまり私が4人の中でいちばん情報があるのだ……。
そんな私は、今、何をすべきなんだろう?
「りんに、あおいちゃんは女の子って言っちゃダメだよね?」
と鈴木くんは私に聞いてきた。
こいつ『言っちゃダメだ』と私が言うと思いつつ質問している。
もう答えが自分で出ている質問をしているのだ。
……と思いつつも、私は仕方なく答えた。
「やっぱり言えないよね?」
言えない。
あおいくんが『実は女』だと聞いたとき、加藤くんがどう言う言動を取るか全然想像がつかないから。
彼は良い子だと思うけど、それでも『男子が、ずっと男友達と思って接してきた男が「実は女」――それも普通に男子が恋愛対象の女――だと知ったとき』、どんなことを思い行動するか想像できない。
私があおいくんを女子と知ったときともまた違うだろう。
女子が、男子だと思っていた子が『実は女』だと知ったときとは当然違う。
きっと、色々。
私は加藤くんに同情している。
多分、鈴木くんがしているよりも多くの同情を。
そしてきっと罪悪感も鈴木くんより感じている。
私も加藤くんと同じ立場にいたのだから。
彼の気持ちが少しはわかるはずだから。
あおいくんと言う男子を好きになり。
私も悩んだ。
『あれ?
私、レズじゃなかったのかな?』
と。
自分の性的指向について悩んだ。
『もしかして自分のことをレズだと思ったのは。
厨二病か何かだったのかなあ?』
なんて思ったりもした。
いや。やはりレズだった。結局。
あおいくんは女の子だったのだから。
『加藤くんに、あおいくんは「実は女」だと言うわけにはいかない』
そのことは鈴木くんも私も同意見だった。
同じ結論にたどり着いたことで鈴木くんはホッとしていたが。
こっちはまだ考えることがあるんだよ。
おまえが余計な情報をくれたせいでな。
『あおいくんに「加藤くんはあおいくんのことが気になっている」と伝えるべきか』
伝えるべきなのではないか? と最初は思ったけど。
言ってどうなる? とも思った。
言ったところで、あおいくんが舞い上がってよく考えずに『自分は女だ』と加藤くんに告げて。
もし加藤くんがあおいくんのことを『変態』だと言い出したらどうなる?
『男の敵だ!』と皆に向けて発信したらどうなる?
あおいくんは社会的死を迎えてしまうのではないだろうか?
あおいくんもそこまでバカではなく、加藤くんが自分を好きだと知っても、加藤くんに『自分は女だ』と告げず、このままの状態を維持するのかもしれない。
でもそうなるとあおいくんは今よりもっと罪悪感を持つことになるんじゃないか?
加藤くんのためにした彼女の『愛の告白』が、彼を苦しめていると知るのだから。
そして両思いと知りつつ彼の気持ちに答えられないことにも彼女は苦しむだろう。
もちろん『加藤くんとあおいくんは両思い』を教えることで、ハッピーエンドを迎える可能性もある。
あおいくんは加藤くんに、女であることを告げ、加藤くんはそれを受け入れ、彼らはこっそりと甘い高校生活を始めるのだ……。
『2人だけの秘密』と言うスパイスが効いた、青春時代をともに過ごすのだ……。
いや、しかし。
私にはわからない。
そんなハッピーエンドをちゃんと迎えてくれるか、100%予測できないのなら。
私はあおいくんに
『加藤くんがあおいくんを気になっている』
と伝えるべきではないんじゃないか?
とにかく……。
『しばらくは様子見だ!』
と言う結論に至った。
自分からは何も働きかけない。
『傍観者』だよ!
しかたない!
鈴木の奴、私に余計な情報をもたらしやがって。
アイツと『「みどり」萌え秘密倶楽部』なんか結成するんじゃなかった……。
でも今日のみどりちゃんの写真も可愛かったなあ……。
〈サキ視点、終〉
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。

男女比1対99の世界で引き篭もります!
夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公!
前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!!
偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたので、欲望に身を任せてみることにした
みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。
普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。
「そうだ、弱味を聞き出そう」
弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。
「あたしの好きな人は、マーくん……」
幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。
よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。彼女を女として見た時、俺は欲望を抑えることなんかできなかった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる