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第二部
55話 可愛い系男子
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今日の帰り道も3人――あおい、キョウ、おれ――だった。
……と思ったら、後からサキが追いついてきて、あおいの隣に並んだ。
しばらく4人で1列に並んで歩いていたら、後ろから自転車に鈴を鳴らされる。
おれたち邪魔だな、迷惑だな。
と言うことで、あおいとサキが前に。
キョウとおれが後ろに2人ずつ2列になって歩いた。
前を歩くあおいとサキの様子が、必然的に目に入る。
仲良さそう。
と言うか、明らかにサキはあおいに好意を持っているように見える。
ニコニコあおいに話しかけていて、あおいの方も楽しそう。
チクリと胸が痛む。
サキがあおいを好きで、あおいもサキを好きになったら、絶対に勝てない気がする。
女の子に勝てる気がしない。
はあ……と音を立てずにため息を吐いた後。
チラリと隣を歩くキョウを見ると、キョウもあおいとサキに注目していた。
が、おれのように不安げではなく、微笑ましそうにしていて。
キョウってホント、心が広いよな……おれと違って、と軽く落ち込む。
キョウはあおいとサキを見ることに集中しているようで、おれの視線に気付いていない。
この機会にキョウを観察した。
キョウって可愛いよな――『可愛い系男子』――。
『薔薇もの』でよく見る『可愛い系男子』は、実のところ、あおいと言うよりキョウっぽい男子の方が多い。と思う。
きっとあおいは『薔薇もの』の主役になるにはちょっと女子っぽ過ぎるのだ。
あおいの様な女の子みたいな華奢な男の子と言うと、『薔薇もの』でも『ショタもの』になる。
小学生とか中学生になるんだよな。
だからおれの年に近い高校生くらいの『薔薇もの』を読むとなると、『可愛い系男子』はキョウっぽい感じになる。
身長もまあまあ高くて、見た目も女子と言うより明らかに男子。でも可愛い顔をしている、と言う感じ。
……などと無駄に(?)詳しくなってしまった『薔薇もの』のことを考えながらキョウを見ていると。
キョウもさすがに視線に気が付いて見返してきた。
不思議そうな顔をしている。
そんなキョウにおれは頼みごとをすることにした。
『薔薇もの』のまさに『可愛い系男子』のキョウに。
「あのさ……」
「ん? 何?」
「ちょっと……抱き締めてもいい?」
キョウは『!?』と目を丸くした。
「な、何で……」
と引いた後、立ち直ると、
「ま、いいけど……」
やはり彼は心が広いようだ。
おれは立ち止まるキョウをぎゅっと抱き締めた。
「何で?」
とキョウはおれの腕の中でつぶやく。
「う~ん……」
しばらく抱き締めて感触を確かめた後、うなりながらキョウを解放すると、
「やっぱり固いよな……」
キョウはジト目をした。
「そりゃそうだよ」
「意外としっかりした作りをしている……」
「どう言うことだよ」
「いや……ごめん。
悪い意味じゃないんだけど」
と謝る。
「ただ、キョウって華奢に見えるけど……」
あおいを抱き締めたときの感触とは違う。
と言おうとして、おれたちを見つめる視線にハッと気付く。
あおいとサキも立ち止まり、振り返ってこちらを見ていた。
あおいの方は緩んだ顔をしていたが。
サキの方はドン引き顔をしている。
「何道端で抱き合ってんの……」
とサキが言う。
「いや。
りんがさ、いきなり『抱き締めてもいい?』って言ってきて」
とキョウは答える。
コイツ……そのまま言わなくてもイイのに。
サキが不審げな顔をおれに向けてきて、緊張してしまい、
「いや。
スキンシップ……」
と言うよくわからない言い訳をしてしまった。
再び2人1組2列で歩き出すと、キョウが聞いてくる。
「いきなりのスキンシップ。
何が目的で?」
苦笑いを返しつつ、
「うん……。ちょっと確認と言うか。
キョウも『可愛い感じ』の男子だよな?」
「あんまり『可愛い』と言われても嬉しくないけどね」
とキョウはすねた顔をする。
おれにはうらやましく思えるけど、本人的にはそうなのかもしれない。
曖昧に笑い返した後、声を落として、
「でも、同じ可愛い系でも。
あおいとは全然、抱き締めたときの感触、違うなあ、って……」
「それは当たり前だよ」
とキョウは即答した後、何故か少し焦ったように付け足す。
「だってあおいちゃんの方が、僕より全然細いし……」
「うん……」
キョウに頷き返した後、先を歩くサキと並ぶあおいを見つめる。
女子のサキと同じくらいの細さで、サキの方が少し背が高いくらいだ。
と見ていると、今度はおれがキョウの視線に気付く番だった。
「僕を抱き締めてみて。
もしかしてトキめいたりした?」
とキョウがニコリと聞いてくる。
おれは首を横に振った。
「全然」
キョウは笑顔で「ヒドいなー」と言う。
苦笑いを返した後、
「キョウの方は?
おれにトキめいた?」
と聞いてみる。
キョウの答えも「全然」だった。
こちらも「ヒドいな」と返しておいた。
あおいとキョウ。
全然違うけど、どちらも『可愛い系男子』。
でも抱き締めてもキョウには全然トキめかなかった。
可愛いとも特に思わなかったし。
ほんとにただのスキンシップだった。
やはりあおいは特別なのだ、と結論づける。
それとも混乱しているのだろうか?
男子の中では線の細い方のキョウと比較しても、あまりに華奢なあおいの身体。
もしかしておれの脳はあおいと女子の区別が付いていないのではないか。
どれだけ考えても、結局のところ何もわかっていない気がする。
と思いながら、あおいの後ろ姿をぼんやりと見つめた。
ここ数日、あおいの後ろ姿しか、まともに見ていない気がして、胸が痛んだ。
……と思ったら、後からサキが追いついてきて、あおいの隣に並んだ。
しばらく4人で1列に並んで歩いていたら、後ろから自転車に鈴を鳴らされる。
おれたち邪魔だな、迷惑だな。
と言うことで、あおいとサキが前に。
キョウとおれが後ろに2人ずつ2列になって歩いた。
前を歩くあおいとサキの様子が、必然的に目に入る。
仲良さそう。
と言うか、明らかにサキはあおいに好意を持っているように見える。
ニコニコあおいに話しかけていて、あおいの方も楽しそう。
チクリと胸が痛む。
サキがあおいを好きで、あおいもサキを好きになったら、絶対に勝てない気がする。
女の子に勝てる気がしない。
はあ……と音を立てずにため息を吐いた後。
チラリと隣を歩くキョウを見ると、キョウもあおいとサキに注目していた。
が、おれのように不安げではなく、微笑ましそうにしていて。
キョウってホント、心が広いよな……おれと違って、と軽く落ち込む。
キョウはあおいとサキを見ることに集中しているようで、おれの視線に気付いていない。
この機会にキョウを観察した。
キョウって可愛いよな――『可愛い系男子』――。
『薔薇もの』でよく見る『可愛い系男子』は、実のところ、あおいと言うよりキョウっぽい男子の方が多い。と思う。
きっとあおいは『薔薇もの』の主役になるにはちょっと女子っぽ過ぎるのだ。
あおいの様な女の子みたいな華奢な男の子と言うと、『薔薇もの』でも『ショタもの』になる。
小学生とか中学生になるんだよな。
だからおれの年に近い高校生くらいの『薔薇もの』を読むとなると、『可愛い系男子』はキョウっぽい感じになる。
身長もまあまあ高くて、見た目も女子と言うより明らかに男子。でも可愛い顔をしている、と言う感じ。
……などと無駄に(?)詳しくなってしまった『薔薇もの』のことを考えながらキョウを見ていると。
キョウもさすがに視線に気が付いて見返してきた。
不思議そうな顔をしている。
そんなキョウにおれは頼みごとをすることにした。
『薔薇もの』のまさに『可愛い系男子』のキョウに。
「あのさ……」
「ん? 何?」
「ちょっと……抱き締めてもいい?」
キョウは『!?』と目を丸くした。
「な、何で……」
と引いた後、立ち直ると、
「ま、いいけど……」
やはり彼は心が広いようだ。
おれは立ち止まるキョウをぎゅっと抱き締めた。
「何で?」
とキョウはおれの腕の中でつぶやく。
「う~ん……」
しばらく抱き締めて感触を確かめた後、うなりながらキョウを解放すると、
「やっぱり固いよな……」
キョウはジト目をした。
「そりゃそうだよ」
「意外としっかりした作りをしている……」
「どう言うことだよ」
「いや……ごめん。
悪い意味じゃないんだけど」
と謝る。
「ただ、キョウって華奢に見えるけど……」
あおいを抱き締めたときの感触とは違う。
と言おうとして、おれたちを見つめる視線にハッと気付く。
あおいとサキも立ち止まり、振り返ってこちらを見ていた。
あおいの方は緩んだ顔をしていたが。
サキの方はドン引き顔をしている。
「何道端で抱き合ってんの……」
とサキが言う。
「いや。
りんがさ、いきなり『抱き締めてもいい?』って言ってきて」
とキョウは答える。
コイツ……そのまま言わなくてもイイのに。
サキが不審げな顔をおれに向けてきて、緊張してしまい、
「いや。
スキンシップ……」
と言うよくわからない言い訳をしてしまった。
再び2人1組2列で歩き出すと、キョウが聞いてくる。
「いきなりのスキンシップ。
何が目的で?」
苦笑いを返しつつ、
「うん……。ちょっと確認と言うか。
キョウも『可愛い感じ』の男子だよな?」
「あんまり『可愛い』と言われても嬉しくないけどね」
とキョウはすねた顔をする。
おれにはうらやましく思えるけど、本人的にはそうなのかもしれない。
曖昧に笑い返した後、声を落として、
「でも、同じ可愛い系でも。
あおいとは全然、抱き締めたときの感触、違うなあ、って……」
「それは当たり前だよ」
とキョウは即答した後、何故か少し焦ったように付け足す。
「だってあおいちゃんの方が、僕より全然細いし……」
「うん……」
キョウに頷き返した後、先を歩くサキと並ぶあおいを見つめる。
女子のサキと同じくらいの細さで、サキの方が少し背が高いくらいだ。
と見ていると、今度はおれがキョウの視線に気付く番だった。
「僕を抱き締めてみて。
もしかしてトキめいたりした?」
とキョウがニコリと聞いてくる。
おれは首を横に振った。
「全然」
キョウは笑顔で「ヒドいなー」と言う。
苦笑いを返した後、
「キョウの方は?
おれにトキめいた?」
と聞いてみる。
キョウの答えも「全然」だった。
こちらも「ヒドいな」と返しておいた。
あおいとキョウ。
全然違うけど、どちらも『可愛い系男子』。
でも抱き締めてもキョウには全然トキめかなかった。
可愛いとも特に思わなかったし。
ほんとにただのスキンシップだった。
やはりあおいは特別なのだ、と結論づける。
それとも混乱しているのだろうか?
男子の中では線の細い方のキョウと比較しても、あまりに華奢なあおいの身体。
もしかしておれの脳はあおいと女子の区別が付いていないのではないか。
どれだけ考えても、結局のところ何もわかっていない気がする。
と思いながら、あおいの後ろ姿をぼんやりと見つめた。
ここ数日、あおいの後ろ姿しか、まともに見ていない気がして、胸が痛んだ。
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