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第一部
41話 経緯を話す
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ファミレスに誘われたものの、誰も聞いていないとは言え人が多い場所で話す内容ではないと思ったので、私たち――キョウとサキと私――は駅までの歩道の途中にある小さなベンチに座り話をすることにした。
私は2人に何があったか説明した。
私の秘密――実は女――を知っていて、架空の存在『みどり』でっちあげの協力者の2人とも共有しなければならない情報だと思ったのだ。
私は……
りんが『みどり』は『あおい』だと気付いたこと。
しかし『あおい』が女だとまでは気付いていないこと(『みどり』を『あおい』の女装だと思っていること)。
『みどり』の写真をサキの偽装だと思っていること。
……などを話した。
サキは『みどり』の写真を合成写真だと思われたことにプリプリした。
「ひどいよゲスパー」
とサキは言った。
「合成写真だなんてひどいよ!」
サキは自分が咄嗟に合成写真を作って人をだますことのできる人間だと思われたことが不満のようだ……
「みどりちゃんの胸の谷間を別人の物だと思うなんて許せない!」
……違った。
「そうだよ!」
とキョウもこぶしを作った。
「合成でも偽物でもない!
みどりちゃんの本物の胸の谷間だ!」
「そうよ!
みどりちゃんの胸への侮辱よ!」
この2人は変なところで気が合うな、と私は思った。
「……でも」
とサキは私をしかめっ面で見つめた。
「加藤(りん)くんってほんとすごい。
ほぼあってる。よね?」
と言うと目を空にさまよわせながら、
「『みどり』ちゃんは『あおい』くんの変装。あってる。
『みどり』の名前は『碧』の別読みから取った。あってる。
鈴木くんと私はあおいくんの秘密を共有している。あってる」
と言うと私を見て、困った顔を作りながら、
「でも肝心なところには気付いていない、のね。
あおいくんが実は女ってことには気付いていない」
私がうなづくと、続けて、
「でも、それは、しかたないか。
男子が女子とは普通思わないもんね?」
サキは自分の経験を思い出すような遠い目をした。
私はうん……ともう一度うなづき、そのままうつむいた。
サキに性別を教えたときの罪悪感を思い出し、胸が痛んだ。
「僕も気持ちわかるなあ」
とキョウが言うと、サキはうさんくさげにキョウを見た。
「どう言うこと?」
「僕もあおいちゃんは女の子と言う思い込みがあったからね。
転入時、男子高校生の制服姿のあおいちゃんを見ても全く男だとは思わなかったよ」
とキョウが言うと、サキはうんうんと納得した。
「人ってほんと『思い込み』があるよねえ……」
とつぶやく。
私たちは『人間の脳の癖』に思いを馳せた。
※※※
「ねえ、あおいくん。
加藤くんが『みどり』ちゃんの正体を見破ったのはわかったけど」
サキが不思議そうに私を見る。
「それからどうして、あおいくんは加藤くんの手を握ることになったの?」
それは……あまり言いたくない。
しかし2人に見つめられて、私は仕方なく、
「りんに……
キョウくんとサキは『あおい』が『みどり』ってこと知っているのに。
おれには打ち明けてくれなかった。
嫉妬した。
とか言われて……」
キョウとサキは私をジッと見て、続きを待っている。
「それで。
その……手を握ったの」
と私が言うと、『ん?』と2人は首をかしげた。
サキがジト目で私を見た。
「あおいくんまさか……。
嫉妬した、と言われて。
『りんも私に気があるんだ☆』
と舞い上がって、手を握っちゃったの?」
キョウも、
「友達同士でも嫉妬とか普通にするし……」
とジト目で私を見てくる。
違うよ!
私もいくらなんでも、そこまで浅はかじゃ無い……つもり。
「違う」
と私は慌てて言った。
「りんに、
『嫉妬なんかしなくていい』
と伝えたくて!
それで……握ったの」
2人はまた『ん?』と首をかしげた。
2人の反応にますます落ち込む。
ほんとあのときの私、どうかしていた、とますます後悔した。
「嫉妬なんかしなくていい。わかる。
手を握る。わからない」
とサキが追い打ちをかけてくる。
「はい……」
と私は下を向いた。
今はとても反省している。
「まあまあ」
とキョウがサキに手の平を向けた。
「しかたないよ」
と言うと私を見、微笑んで、
「少し短絡的で衝動的な方が女子は可愛いよ」
サキは唇とがらせた。
「こんなときに好感度稼ぎしないでよ!」
「違うよ」
とキョウは菩薩のような優しい顔をする。
「僕は十分反省しているあおいちゃんをここでまた責めても何にもならないと思ったんだよ」
「そのセリフがあざとい」
「ほんと田中さん性格悪い」
「どこが!
こんなときにあおいくんのためになることを言わず、自分のポイント稼ぎをするような奴の方が性格悪いでしょ!」
「十分落ち込んでいる人をさらに追い詰めて何になるの?」
「まあまあ」
ケンカの仲裁をしている余裕ないのだけど……と思いながら私は仕方なく2人をなだめた。
私は2人に何があったか説明した。
私の秘密――実は女――を知っていて、架空の存在『みどり』でっちあげの協力者の2人とも共有しなければならない情報だと思ったのだ。
私は……
りんが『みどり』は『あおい』だと気付いたこと。
しかし『あおい』が女だとまでは気付いていないこと(『みどり』を『あおい』の女装だと思っていること)。
『みどり』の写真をサキの偽装だと思っていること。
……などを話した。
サキは『みどり』の写真を合成写真だと思われたことにプリプリした。
「ひどいよゲスパー」
とサキは言った。
「合成写真だなんてひどいよ!」
サキは自分が咄嗟に合成写真を作って人をだますことのできる人間だと思われたことが不満のようだ……
「みどりちゃんの胸の谷間を別人の物だと思うなんて許せない!」
……違った。
「そうだよ!」
とキョウもこぶしを作った。
「合成でも偽物でもない!
みどりちゃんの本物の胸の谷間だ!」
「そうよ!
みどりちゃんの胸への侮辱よ!」
この2人は変なところで気が合うな、と私は思った。
「……でも」
とサキは私をしかめっ面で見つめた。
「加藤(りん)くんってほんとすごい。
ほぼあってる。よね?」
と言うと目を空にさまよわせながら、
「『みどり』ちゃんは『あおい』くんの変装。あってる。
『みどり』の名前は『碧』の別読みから取った。あってる。
鈴木くんと私はあおいくんの秘密を共有している。あってる」
と言うと私を見て、困った顔を作りながら、
「でも肝心なところには気付いていない、のね。
あおいくんが実は女ってことには気付いていない」
私がうなづくと、続けて、
「でも、それは、しかたないか。
男子が女子とは普通思わないもんね?」
サキは自分の経験を思い出すような遠い目をした。
私はうん……ともう一度うなづき、そのままうつむいた。
サキに性別を教えたときの罪悪感を思い出し、胸が痛んだ。
「僕も気持ちわかるなあ」
とキョウが言うと、サキはうさんくさげにキョウを見た。
「どう言うこと?」
「僕もあおいちゃんは女の子と言う思い込みがあったからね。
転入時、男子高校生の制服姿のあおいちゃんを見ても全く男だとは思わなかったよ」
とキョウが言うと、サキはうんうんと納得した。
「人ってほんと『思い込み』があるよねえ……」
とつぶやく。
私たちは『人間の脳の癖』に思いを馳せた。
※※※
「ねえ、あおいくん。
加藤くんが『みどり』ちゃんの正体を見破ったのはわかったけど」
サキが不思議そうに私を見る。
「それからどうして、あおいくんは加藤くんの手を握ることになったの?」
それは……あまり言いたくない。
しかし2人に見つめられて、私は仕方なく、
「りんに……
キョウくんとサキは『あおい』が『みどり』ってこと知っているのに。
おれには打ち明けてくれなかった。
嫉妬した。
とか言われて……」
キョウとサキは私をジッと見て、続きを待っている。
「それで。
その……手を握ったの」
と私が言うと、『ん?』と2人は首をかしげた。
サキがジト目で私を見た。
「あおいくんまさか……。
嫉妬した、と言われて。
『りんも私に気があるんだ☆』
と舞い上がって、手を握っちゃったの?」
キョウも、
「友達同士でも嫉妬とか普通にするし……」
とジト目で私を見てくる。
違うよ!
私もいくらなんでも、そこまで浅はかじゃ無い……つもり。
「違う」
と私は慌てて言った。
「りんに、
『嫉妬なんかしなくていい』
と伝えたくて!
それで……握ったの」
2人はまた『ん?』と首をかしげた。
2人の反応にますます落ち込む。
ほんとあのときの私、どうかしていた、とますます後悔した。
「嫉妬なんかしなくていい。わかる。
手を握る。わからない」
とサキが追い打ちをかけてくる。
「はい……」
と私は下を向いた。
今はとても反省している。
「まあまあ」
とキョウがサキに手の平を向けた。
「しかたないよ」
と言うと私を見、微笑んで、
「少し短絡的で衝動的な方が女子は可愛いよ」
サキは唇とがらせた。
「こんなときに好感度稼ぎしないでよ!」
「違うよ」
とキョウは菩薩のような優しい顔をする。
「僕は十分反省しているあおいちゃんをここでまた責めても何にもならないと思ったんだよ」
「そのセリフがあざとい」
「ほんと田中さん性格悪い」
「どこが!
こんなときにあおいくんのためになることを言わず、自分のポイント稼ぎをするような奴の方が性格悪いでしょ!」
「十分落ち込んでいる人をさらに追い詰めて何になるの?」
「まあまあ」
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