あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

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第一部

35話 あおいは男の娘!?

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「おはよ~」

 と大きな声で言いながら教室へ入るサキに続いて私も入ると。

「おはよ~サキ。
あ、佐藤(あおい)くん!」

 と女子の一人に大声で呼び止められその方へ顔を向けた。
 そこには女子の人だかりがあった。
 その中の一人が私に『おいでおいで』している。

「?」

 と思いながら近づいていった。
 サキが後ろを付いてくる気配を感じながら。

 私は女子の輪の中心に来させられた。
 その輪の中心にはキョウもいた。

 キョウは困った笑顔で言った、

「おはよ。
あおいちゃん……」

「おはよ……」

 と返しながら、『またキョウと私がBLとか言われるのかな?』と女子の方を警戒して見た。 

 女子の一人が言う、

「ね、佐藤くん。
昨日、鈴木(キョウ)くんとデートしていたよね?」

「!?」

 私はビックリしてキョウの方を思わず見てしまう。
 キョウは苦笑を返してきた、

「あおいちゃん、わかりやす過ぎでしょ……」 
 
 とキョウが小さい声でつぶやくのが辛うじて聞き取れた。

「いや。
デートなんかしていないし」

 と私はしどろもどろ言った。

 そう、あれはデートではない。
 遊びに行っただけだ。
 ウソは吐いてない。
 大丈夫!

「いや、デートでしょ?」

 と女子の一人が言った、

「デートだから、あんな格好していたんでしょ?」

 !?(『あんな格好』!?)

 こ、これは……

「だからー。
言ってるでしょ?」

 とキョウが眉を八の字にしながら言った、

「あれはあおいちゃんのお姉ちゃんの『みどり』ちゃんだって」

 !!

 女子に『みどり(女の格好のあおい)』、バレてるみたいじゃん!(あわわ……)

「それ、鈴木くんの嘘でしょ?
佐藤くんをかばってるんでしょ?」

 と女子は言うと、私を見た、

「今時、『男の』なんて全然珍しくないし。
私たち偏見もないし。
『男の』いいじゃな~い」 

 と言うと私をジーッと見ながらニコニコする、

「佐藤くん、すごく似合っていたよ。
普段の佐藤くん知らなかったら、普通に女の子だと思っただろうなぁ……。
可愛い!
完成度高い!
何も私たちクラスメイトに隠すことないじゃない?」 

「だから、あれはあおいちゃんじゃなくて。
あおいちゃんのお姉ちゃんの、みどりちゃんなんだよ!」

 とキョウがちょっと怒った調子で言うが。
 迫力がない。
 しかたない、キョウくんはそんな感じの人なのだ……どこか真剣じゃない雰囲気がある、本人は真面目にしていても。

「佐藤くんにお姉ちゃんがいるなんて聞いたことないって、佐々木(ケイ)くんたち言っていたよ」

 と言って女子が視線を向ける方に私もつられて目をやると。
 ケイ、ハヤト、そしてりんがいた。
 ケイとハヤトが申し訳なさそうに手を上げるのを見た後、りんと目が合う。
 りんは心配そうな顔で私を見てくる。

 どうしよう……。
 女だとバレるわけにはいかない。
 バレたら学校生活が終わってしまう。
 もうりんと友達じゃいられなくなる。
 ケイとハヤトとも(ついでじゃないよ)。

「『みどり』ちゃんはホントにあおいちゃんのお姉ちゃんだよ」

 といまだ頑張っているキョウに私は加勢し始めた。

「その……。
ケイたちには姉――みどり――のこと話していなかったんだけど。
キョウくんの言うとおり、ほんとにみどりって姉いるよ?」

 と私は真面目に言った、

「みどり、大学生で下宿していて家にいないし。
おれと仲悪いんだよね。
だから友達には話してなかった。
キョウくんは幼なじみだから、みどりのことも知っているけどさ」

 私は、先ほどから話を進めている女子と視線を合わせた、

「それにさ、誰がキョウくんとみどりのデートを見たのか知らないけど。
一瞬見ただけとかだろ?
何でそれで『みどり』をおれの女装だと思ったりしたわけ?」

「一瞬じゃないよ」

 と言うと女子はスマホを操作し写真を見せてくれた。
 そこには仲良く二人で駅構内を歩くキョウと私――『みどり』――が……。
 鮮明に写ってるじゃないか!

「な、何コレ!?」

 と私は思わず叫んだ、

「と、ととと……盗撮?」

 と辛うじて攻撃出来そうな点(?)を言った。

 スマホを持つ女子は肩をすくめた、

「盗撮じゃないよ。
これ、ウチのテレビの画面を撮っただけだもん」

「えっ……」

「『みどり』ちゃんと僕、夕方のローカルニュースのときに、地元テレビ局のカメラに撮られたんだよ」

 とキョウが説明してくれた、

「みどりちゃんと僕、ローカルニュースに出てたんだって」

 そ、そんな!
 カメラに撮られるなんて、バカなんじゃないの! 私って……。
 と、私は思った。
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