あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

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第一部

34話 日曜日の話

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《登場人物紹介》

佐藤あおい……主人公の男子高校生(高2)。実は女。

加藤りん……あおいが片思いしている男の子。

田中サキ……あおいのことが好きだった女の子。ふられた。百合っけがある。

鈴木キョウ……転校生。あおいと幼なじみの男の子。あおいのことが好き(?)

ケイ、ハヤト……あおいとりんの友達

タケル……あおいの弟。中学1年生。


※※※

 月曜日。
 いつものようにりんと一緒に学校へ登校した後。
 りんが教室へ行く前にトイレへ寄ると言うので別れて、私は一人教室へ足を向けた。
 
 するとポンッと後ろから肩を叩かれた。
 振り向くと、サキがニコニコしていた、

「おはよ。あおいくん」

 と言うと私の隣に並び、声を小さくして言う、

「昨日はすごく可愛かったよ。『みどりちゃん』」

 私は苦笑いを返した。
 いや、普通にサキの方が可愛かっただろ、と思いつつ。

 昨日とは。
 サキとキョウと私で遊びに行った日曜日のことだ。
 駅で待ち合わせをして、動物園へ三人で行ってきた。
 サキとキョウのリクエスト(?)に答えて私は女装(?)で行ったわけだが……。

「今日からしばらくギャップ萌えの余韻にひたるわ……」

 とサキは幸せそうな顔をした。
 サキ(とキョウ)が言うには『みどり(普通に女の格好しているあおい)』と今の私『男子高校生あおい』の違いが、ギャップ萌えするんだとか。
 当の本人の私にはよくわからないが……。
 性格とかが違う一卵性双子キャラに萌える感じなのかなあ……?(わからない)

「今度は二人で行こうね」

 とサキは言うと、少し頬をふくらませた、

「鈴木くん、私のこと『はぶいたりしない』って言っていたくせに。
普通にはぶくんだもの」

「えっ」

 と私は驚いた。
 サキをはぶくなんてこと、キョウも私もしていないと思うんだけど……。

「昨日あおいくんだけで、鈴木くんちへ行ったでしょ」

「ああ……」

 と私はうなづいた、

「でも。
それはサキをはぶいたわけじゃないよ?
キョウくんを送りに行って、キョウくんのお父さんとお母さんに顔を見せに行っただけだもの。
ほら。キョウくんと私は幼なじみだから。
ご両親にもお世話になっていたし」
 
 サキはまた頬を膨らませた後、私をジトーッと見た、

「まさか。 
何もなかったよね……?」

「えっ」

「あおいくん、鈴木くんちへ行ったけど。
ご両親もいるし、何もなかったよね……?
その……」

 ごにょごにょとサキは言った。

 はあ!?
 何言ってんだこいつ。
 私はあきれつつ言った、

「あるわけないでしょ」

「ほんと~?」

「ないよ!」

 サキは胸に手を当て、ホッとしたと言うジェスチャーをした、

「良かったぁ……。
『みどり』ちゃんが清楚系ビッチじゃなくて良かったぁ……」

 何だと!?

 と思ったけど、私は人のことを言えなかった……(ちょっと前にサキを清楚系ビッチと疑ったことがあるから)。

「いや。
違うのよ。
たださ。
鈴木くんって強引なところありそうで。
あおいくんは優柔不断なところありそうで。
雰囲気に流されたりしていないか心配したの」

 とサキは申し訳なさそうに言い訳をした。
 言い訳なのか? むしろディスられているような。

「私はともかくさ。
キョウくんに失礼だよ」

 と私はサキをたしなめた、

「キョウくんはまだ彼女いたことないって言っていたし。
そんなことしないよ」

「いやいや。
あれは小悪魔系男子だよ。
女をたぶらかす男だよ」

「えっ」

 私は首を振った、

「違うよ。
キョウくんはさわやか男子だよ……」

(※さわやか男子……清楚系女子の男子バージョン。身持ちの堅い男性)

 サキもまた首を振った。
 そして肩をすくめる。やれやれのジェスチャーだ、

「あおいくんたら……。
ホントに『さわやか男子』がタイプなのね。
でもね……」

 サキは哀れっぽい目で私を見つめた、

「『さわやか男子』はこの世に実在しない生き物なんだよ。
架空の生物なの」

 そんなこともまだわからないのか、と言った調子である。

 ぐぬぬ。
 男子が言うならともかく、同じ女子が『女子の夢』を壊しに来るとは……。

「いるもん……」

 とだけ私はつぶやいた。
 『さわやか男子』はこの世に絶対一人はいる――りんがいるもの。

 サキはまた首を振り

「私、お兄ちゃん二人いるからわかるけどね。
男の方が女よりずっと……」

 と途中で止めると、再び『やれやれ』と肩をすくめた。
 途中で止めるなよ。気になるじゃないか。

 それに何で皆、異性のきょうだいがいたら異性のことがわかったような気になるんだ。
 わからないよ、多分。
 だから『さわやか男子』はちゃんと実在する。

 サキと私は『さわやか男子談義』をしながら教室へ向かった。

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