あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

文字の大きさ
上 下
27 / 74
第一部

27話 タケルとキョウ

しおりを挟む
「ただいま~」

 と玄関に入ると、待ちかねていたようにタケルがお出迎えしてくれた、

「うわ!
ほんとにキョウくんだ!?  
久しぶり~」

 とタケルはキョウの手を取った、

「こんな変態の姉がいる家なのに、遊びに来てくれてありがとう!」

「えっ」

 とキョウは私を目を丸くして見た、

「変態……?」

 私は首を横に振った。

「いや、キョウくん、普通に変態だと思わね?
男装が趣味なんだぜ、姉ちゃん……」

「趣味……?」

 とキョウが再び驚愕の眼差しで私を見た。
 私は再び首を横に振った、

「タケル。
キョウくんは私が男装している理由、知っているよ」

 タケルは多分、キョウと私は町中で偶然再会したなどと想像したのだろう。
 だから私が『男装して高校生に通っている』と言う犯罪まがいのことをしているのを隠したくて、『男装が趣味』と言ったのだ。
 『男装が趣味』の方が『(男子が恋愛対象の)ごく普通の女が男子として暮らしている』より、まだ世間に対して申し開きができると思ったのだろう。

 私はキョウと並んで、タケルの前に立った、

「ほら。
見てよ。
キョウくん、うちの高校の制服着ているでしょ?
高校で会ったんだよ」

 タケルはビックリ顔でキョウと私を見比べた、

「えっ……。
学校で会ったの?
どゆこと?」

 私はキョウとの再会について話した。
 私の話を聞き終わると、タケルはキョウに頭を下げた、

「ごめんね、キョウくん……。
『男装の変態』が迷惑かけて……」

 また『男装の変態』って言う……。

「理由があるんだし。
しかたないよ」

 とキョウがニコニコ言った。
 タケルはキョウを感動した様子で見た、

「キョウくん、相変わらずいい人だねえ……」

 その後、がらりと表情を変えて冷たい様子で私を見る、

「お姉ちゃん、さっさと着替えて来いよ」

「でも……」

「おれ、お姉ちゃんの男装姿見たくないから。
ほんと気持ち悪いから」

 と言うとタケルはキョウに向き直った、

「キョウくんもそう思うだろ?」

「そんなことないよー」

 とキョウは笑った、

「これはこれで、なかなか可愛いよ、あおいちゃん」

 タケルは『うぇ~』みたいな顔をした……。

 私は立ち上がり、仕方なく着替えに行った。


※※※

 適当にワンピースを着て、リビングに戻った。
 キョウは私がリビングに入ると私を見て、目を丸め口を開け……固まった。

 私もそんなキョウを見て、ピタリとその場で足を止めた。
 な、何その反応……怖い。

 キョウはしばらく身動きせずに私を見た後、

「か、可愛い!」

 と言った。

 !?

「えっ」

「あおいちゃん! 可愛い!」

「えぇっ」

「何コレ!?
何このトキめき!?
あっ!
ギャップ萌えってやつかぁ!」

 とキョウは両手に握りこぶしを作って、満面の笑みで私を見る、

「いや、可愛い!
あおいちゃん可愛い!」

 な、何この賞賛……!?
 わ、私、もしかして、可愛かったの!?

「えへ……えへへ……」

 と照れたところでタケルのドン引き顔が目に入り、現実に引き戻された。

「キョウくん何言ってんだよ……。
ギャップ萌えとか……。
よく見ろよ……。
どんな格好してもお姉ちゃんはただのお姉ちゃんだろ?」

 とタケルはつぶやいた、

「それ褒め殺しってやつじゃね?
逆にお姉ちゃんに失礼だよ」

 ……。

 ありがとう、タケル……。
 タケルのおかげで、私、天狗にならずに済んだわ……。

 私が現実に戻った後も、キョウは熱弁した、

「いや!
タケルくんは毎日見ているからわからないかもしれないけど!
これは萌えるよ!
さっきまでボーイッシュな女の子だった子が、こう!
変身! って言うか!
ガーリーになっちゃって!
ギャップ萌えの真骨頂!
いいね!」

 キョウは両手で親指を立てた――『いいね!』。

 キョウくん、キャラ崩壊しているよ……。

 タケルと私はドン引きしながらキョウを見た。


※※※

「お姉ちゃんはさ、普段男装なんかしているだろ?
だから反動で家では結構女らしい服着るんだよ」

 とタケルがキョウに説明しているのを尻目に、私は飲みものを取りにキッチンの方へ行った(ダイニングキッチンなので、すぐそこ)。

 私が飲みものを持ってタケルとキョウのところに戻ると、二人はひそひそ話をしていた。

「いや。キョウくん。
あれ、本物なんだよ」

「でも……」

 に続くキョウの声は聞き取れない。

「うん、そう言うのもわかるけどさ。
でもほんとに本物だよ。
おれ何度も生で見てるもん。
見たくて見てるわけじゃないけど」

「何の話?」

 と私がコップを手に取りつつ二人に聞くと、キョウが慌てた、

「何でもないよ」

 タケルはコップを受け取りながら、ニヤリとする、

「キョウくん、
『あおいちゃん、可愛いけど、胸の詰め物あんなに入れる必要ないのに』と言うからさ。
『いや、あれ本物だぜ?』って言っていたんだよ」

「ん……」

 と私は自分の胸を見た。
 詰め物などしていない。と言うかどうして女の胸に詰め物をする発想が出てくるのかがよくわからない。女の胸など男の胸に比べるとつまらない脂肪の塊でしかないのに。何故わざわざ詰め物などすると思うのか。

「何も入っていないけど……」

 と私はとりあえずキョウに言った。
 キョウは何故か真っ赤になっている、

「うん、だよね……。
ごめんね、あおいちゃん」

「『あれが本物なら、普段は何故ペッタンコなのか』だって」

「た、タケルくん!」

「優秀なタンクトップがあるんだ」

 と私は説明した、

「そのタンクトップを着けると、胸が潰れるんだよ」

「そ、そうなんだ……。
でも……」

 キョウくんはしばらく悩んだ後目をそらしながら言った、

「ぶ、物理的におかしくない……?
質量的に……?
何て言うか……どんなに優秀なタンクトップでも、ソレを隠せるとはどうしても思えないと言うか……」

「キョウくん、今度よくお姉ちゃんの胸見てみなよー。
胸板厚くなっているよ」

「よく友達にも言われるよ。
『あおいは胸板が厚い』って」

「そ、そうなんだ……わかった……」

 と言うとキョウは下を向いてしばらく静かにお茶を飲んだ。

 タケルと私は『?』と顔を見合わせた。

 キョウは再び顔を上げると、微笑んだ、

「あ、あのさー」

「ん?」

「お父さんとお母さんにも、あおいちゃんとタケルくんに会ったこと、話したいし」

 と言うとキョウはカバンをごそごそ探し、スマホを取り出した、

「写真とか撮ってもいい?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

男女比1対99の世界で引き篭もります!

夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公! 前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!! 偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたので、欲望に身を任せてみることにした

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。彼女を女として見た時、俺は欲望を抑えることなんかできなかった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...