あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

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第一部

7話 『名探偵お嬢さま』

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『お嬢さま……私、お嬢さまのことが……』

『およしになってよ!
あなたは当家執事の彼女ではありませんか?』

『お嬢さま……!』

 その場から立ち去ろうとする『名探偵お嬢さま』の主人公『お嬢さま』。
 その歩みを止めようと壁に手をつきお嬢さまの行く手を阻もうとする『メイド』。

(『名探偵お嬢さま』……この世界の少女漫画。探偵もの)


※※※

「壁ドン、キター!」

 とケイが言った。

 私たちは今、りんの部屋にいる。
 昨日話していた『名探偵お嬢さま』と言う少女漫画の二次創作GL本を4人――りん、ケイ、ハヤト、私――で読んでいるのだ。

 私はGLとか全然興味がない。
 しかし付き合いで一緒に読んでいるのだ。

 なんで私がこんな二次創作GL本読まなきゃならないの?
 執事(メイド彼氏)×お嬢さま彼氏のBL本、ないの?
 ……と思いながらも。
 
「はやく次のページ」

 とハヤトがワクワクした調子で言う。

 次のページ。
 『お嬢さま』は壁に背中を預け、『メイド』は両手壁ドンをしながら『お嬢さま』をどこにも行かせまいとしていた。


※※※

『今から私がお嬢さまの秘密の扉を開け、謎を解きましょう……』

『ダメ……!』

『抵抗しても無意味ですわ。
謎を解く鍵は私が持っていますから!』

 場面は変わる。

『これがお嬢さまの秘密!』

『恥ずかしゅうございます……』

『素敵です。
最高の謎解きですわ。
私、今、最高のミステリーを味わっています』

『わたくし、あなたに全てを知られてしまいますのね?
わたくしを丸裸にするおつもりですのね?』

『そうです、お嬢さま。
私の目はごまかしきれません。
私は全てを見通せます。
この秘密の花園…… 迷宮ラビリンス

『わたくしは探偵!
いつもヒトの秘密を暴いてきた探偵。
なのに今はわたくしの秘密が白日の下にさらされようとは!
こんなの初めてです……』

『今は私が探偵ですから。
私があなたの謎を解く初めての探偵オンナです。
お嬢さま……』

『ああ、駄目ですわ……全然駄目ですわ!』

『お嬢さま……嘘をおつきにならないで。
素直になって。
それとも叙述トリックをお使いですか? 
あなたの灰色の脳細胞は真実をお知りです。
探偵わたしが暴くまでもなく』

(※このGL本は18禁ではありません)

 
※※※ 
 
 この二次創作GL本……。
 私は思った。
 たしかに『探偵もの』をからめてある? セリフだけね……。

 GL本をまともに読むのは初めてだけど、こう言うのばかりなんだろうか?
 ちょっとふざけているなあ……。

 メイドもお嬢さまもこんな性格じゃないしね。
 二人とも、もっと彼氏に対して一途だ。
 やっぱりご都合主義過ぎ。

『メイドは執事ではなくお嬢さまが本当は好き。
お嬢さまに近づくために、お嬢さまの家の執事を誘惑し彼氏にした。
すべてはお嬢さまのため』

 とか超解釈の原作レ〇プ二次創作はどうかと思う。

 しかし。
 同じような超解釈で、執事×令嬢彼氏があったら萌えるかもしれない! (駄目だこりゃ)

 私は3人と一緒にGL本を読みながらも、想像の海へと沈んでいった。


※※※

『あなたはお嬢さまにふさわしくないです』

 と執事が言った。

『興味深いことを言いますね? じゃあ僕は誰にふさわしいんでしょうか?』

 とお嬢さまの彼氏は微笑んだ。

『あなたは……』

『はい?』

『僕の……』

『ん?』

『僕の 助手ワトソンにふさわしいです』

『……やっと素直になりましたね、 探偵ホームズ

『……』

『顔が赤いですよ。
もしかしてクスリコカ〇ンでもやっていらっしゃるんですか、探偵ホームズ?』

『ええ……あなたといると、脳内麻薬で……酔ってしまいます』

『それはいけません。
医師ワトソンが診察してあげましょう。
僕の 子猫ちゃんホームズ


※※※

 ふぅ……。
 口直しの妄想をしてしまった。
 なかなかいいね!

 脳内ではルビが好きにふれるし……。

 赤い悪魔ベルギー

 のように。(サッカーの話)
 
 ってなんで私、二次創作BL妄想してるのか。
 そんな趣味ないんだけど。
 BLはともかく二次創作とか!
 ……こうやってはまっていくの?

 二次創作とはおそろしいものだ、と私は思った。
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