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第一部
6話 弟ってホントうるさい
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私は家のダイニングキッチンで水を飲みながら、明日のことを考えていた。
明日学校が終わったら、りんの家に行くことになったのだ!
ケイとハヤトも一緒だけど。
二人きりと言うわけにはいかないけど。
それでも……
やった!
りんの部屋!
私の胸は弾む。
想像を膨らませてしまう。
やっぱり男の子らしいサワヤカな部屋なのかなあ……。
シンプルな感じの。
プラモデルがあったりするのかなあ……。
青とかグレーとかで統一されていて、少年漫画がいっぱいあったりして……。
あとGL本もあるんだっけ……それを見にりんの家に行くんだから……(それは別にいい)。
あ、GL本はりんのお兄さんの物だったかな。
しかし、りんの好きなGL本を知れたら、どんな女がタイプかわかるんじゃないかな?
いや。虚構と現実のタイプは違うか……。
私が色々想像しながらニヤニヤしていると、弟のタケルがリビングに入ってきた。
私を見るとギョッとして言った、
「やめろよ、お姉ちゃん!
いつも言っているだろ?
下着姿で家の中歩くなって」
私はタケルの言うとおりブラとパンツだけの下着姿だった。
と言うのもお風呂上がりだったからだ。
お風呂上がりにキッチンで水分補給中なのだ。
「別にいいでしょ。
ちょっと水飲みに来ただけなんだから」
と私が言うと、
「じゃあさ、お姉ちゃん?
もしおれがパンツ一丁でそこら中歩き回っていたら?
イヤだろ?
だからお姉ちゃんもそんなことするな!」
とタケルが言い返してきた。
「別にいいよ、どーぞどーぞ」
と私は『どうぞ』のジェスチャーをした。
「はっ? 変態!」
とタケルは眉をつり上げて叫ぶ。
変態と言われたら黙ってなどいられない、
「何、変態って!
変態って想像する方が変態だよ!
私、アンタの裸見たって何にも思わないんだから!」
「お父さん、お姉ちゃんが……」
とタケルはお父さんに助けを求めた。
むかつくやつだ。
「あおい。
弟が嫌がることをするな。
ちゃんと服着ろよ」
とお父さんが洗濯物をたたみながら、あきれたように私をちらりと見て言う。
「はいはい」
と私はスルーしているように手を振りながら、テキトーに返事をした。
「お父さん、もっときつく怒れよ!
お父さんはおねーちゃんに甘いんだから!」
タケルが怒っている。
「いいじゃない。
お母さんはタケルに甘いんだからさ」
とは言ってもこれ以上はさすがに面倒なので私ももう何も言わないことにしようと思った。
大人しく、流しでコップを水ですすぐとキッチンペーパーで拭いて棚に戻した
「お姉ちゃん!
コップもっと綺麗に洗えよ!
水でしか洗ってねーだろ。
洗剤使えよ!」
こちらが大人しくしていても、タケルは文句を言ってくる。
こんなに口を出してくるのを見ると、逆に構ってもらいたいのかなあと思えてくる。
いや、違うんだろうけど。
私は肩をすくめて言った、
「何で?
水しか飲んでないんだから。
別にすすぐだけでいいじゃない?
汚くないよ」
「ほんとイヤだよなあ。女って。
何でこうテキトーなんだよ」
タケルは嫌みったらしく私が棚に置いたコップを洗い直し始めた。
「それ、こっちの台詞だから!
男ってほんとグチグチグチグチ、男々しい!」
「もうヤダなあ……お姉ちゃん……」
とタケルが泣きそうな憐れっぽい声を出した。
そろそろ本気で面倒くさくなってきたので私は自分の部屋へ戻ろうとした。
が、リビングを出る前にタケルの声が追いかけてきた、
「お姉ちゃん?
おれさー。
うちの姉ちゃんが変態だってダチにバレないか、いつもビクビクしてんだぜ?」
私はピタリと足を止めた。
再び変態……ですって……?
やはり聞き流せない発言!
誰が変態なの!
しかしその後タケルは世間的にも正しいだろうことを言った、
「お姉ちゃん、男装して学校へ行っているだろ。
で、男子トイレ入ってんだろ?
男子更衣室で着替えしてんだろ?
それ全国ニュースで流れるレベルの犯罪だぜ?」
タケルは正しいことを言っている。
しかし姉として、非変態(自称)として反論せねば!
私は熱弁を始めた、
「でも何も見えたりなんかしないよ?
男子ってさー、男子しかいない更衣室でも服着替えるとき隠すじゃない?
体育のある日はあらかじめ短パンを制服の下に履いてきたりするしさあ。
全然パンツとか見てないよ!」
必死の言い訳は続く、
「それにトイレもさ、確かに男子トイレに入っているけど……ちゃんと、あまり誰もいないトイレでしたりとか気をつけているし!
男子ってトイレに皆で連れ立って行きたがるけど、私は『そう言うの嫌いだから』風に断っているし!
連れションとか全然してないよ!」
などと言う意味不明な供述をしており……と言われそうな変な言い訳しか言えなかった。
わ、私、変態だったの……?
(※ちなみに、この世界の男子トイレは完全個室である)
「だから何だよ。
お姉ちゃんの言い分じゃん。
そんなの警察は聞いてくれないよ。
男子トイレに女が入った時点で、覗くつもりだったんだろ、盗撮目的だろう、とか言われるんだよ!」
タケルは私が警察に捕まったときの話をした。
こいつ……。
縁起の悪いことを言わないでほしい!
(私も『捕まるかも……』ってちょっと心配になってきた)
「何で私が、男がオシッコしているところ覗いたりするの!」
などと言う意味不明な供述を……。
私はしてしまった。再び。
だってホントにそう思うんだもの。
本当だよ……。
「うわっ。おねーちゃん、キモい……
ほんとキモい」
タケルは心底イヤそうな顔をした。
「何でっ!
オシッコしているだけでしょ! トイレなんて!」
私は後に引けずに、言い続けた。
「もういいよ。その話題……」
弟はドン引きしながら、コップを丁寧に洗うと冷蔵庫をあさり始めた。
わ、私だって好きでこんなこと言ったんじゃないんだから!
タケルが色々言うからついヒートアップしちゃったんだから!
さんざんこちらをヒートアップさせておいて、結局ドン引きして自分から話題を降りるんだから……。
ホント、女は男に口では勝てないよね。
むかつく。
私が変態とか何言っているの。
変態じゃないもん。
私は淑女的だもの……たぶん同じ状況になった女の中でいちばん淑女的だもん。
同じ状況になった女がそもそもいないかもしれないけど。
私が軽く落ち込みながら考え込んでいると、
「おい、あおい。
おまえ、ホントに覗いてないだろうな?
その……トイレじゃなくても、色々」
とお父さんが顔を上げ、心配そうに見てきた。
「はあっ。
そんなことしないよっ。
考えたことないよっ」
と答えながらも。
まあ。
隣りのトイレの個室で、りんがパンツを脱いでいると思うと、少し興奮しちゃうけど……。
そう思ってから慌てて誰にともなく言い訳をしてしまう。
でも、そんな状況ほんとに滅多にないし?
だって私、ちゃんと避けているし。
やむを得ない場合だけだよ!
こちらもガマンできなくて、りんともかぶってしまったときだけよ!
更衣室で着替えるときも、ほんと部屋の端で皆に背を向けて着替えているし。
まあ、私の後ろで男子たちが着替えていると思うとちょっと興奮しちゃうけど……。
ああ、駄目だ。
これじゃあ、やっぱり淑女とは言えない。
私、変態じゃないのに。
変態的行為なんかしないのに。
ほんとに淑女的なのに……。
と心の中で自分に言い聞かせるように繰り返した。
だんだん虚しくなってきたけど。
明日学校が終わったら、りんの家に行くことになったのだ!
ケイとハヤトも一緒だけど。
二人きりと言うわけにはいかないけど。
それでも……
やった!
りんの部屋!
私の胸は弾む。
想像を膨らませてしまう。
やっぱり男の子らしいサワヤカな部屋なのかなあ……。
シンプルな感じの。
プラモデルがあったりするのかなあ……。
青とかグレーとかで統一されていて、少年漫画がいっぱいあったりして……。
あとGL本もあるんだっけ……それを見にりんの家に行くんだから……(それは別にいい)。
あ、GL本はりんのお兄さんの物だったかな。
しかし、りんの好きなGL本を知れたら、どんな女がタイプかわかるんじゃないかな?
いや。虚構と現実のタイプは違うか……。
私が色々想像しながらニヤニヤしていると、弟のタケルがリビングに入ってきた。
私を見るとギョッとして言った、
「やめろよ、お姉ちゃん!
いつも言っているだろ?
下着姿で家の中歩くなって」
私はタケルの言うとおりブラとパンツだけの下着姿だった。
と言うのもお風呂上がりだったからだ。
お風呂上がりにキッチンで水分補給中なのだ。
「別にいいでしょ。
ちょっと水飲みに来ただけなんだから」
と私が言うと、
「じゃあさ、お姉ちゃん?
もしおれがパンツ一丁でそこら中歩き回っていたら?
イヤだろ?
だからお姉ちゃんもそんなことするな!」
とタケルが言い返してきた。
「別にいいよ、どーぞどーぞ」
と私は『どうぞ』のジェスチャーをした。
「はっ? 変態!」
とタケルは眉をつり上げて叫ぶ。
変態と言われたら黙ってなどいられない、
「何、変態って!
変態って想像する方が変態だよ!
私、アンタの裸見たって何にも思わないんだから!」
「お父さん、お姉ちゃんが……」
とタケルはお父さんに助けを求めた。
むかつくやつだ。
「あおい。
弟が嫌がることをするな。
ちゃんと服着ろよ」
とお父さんが洗濯物をたたみながら、あきれたように私をちらりと見て言う。
「はいはい」
と私はスルーしているように手を振りながら、テキトーに返事をした。
「お父さん、もっときつく怒れよ!
お父さんはおねーちゃんに甘いんだから!」
タケルが怒っている。
「いいじゃない。
お母さんはタケルに甘いんだからさ」
とは言ってもこれ以上はさすがに面倒なので私ももう何も言わないことにしようと思った。
大人しく、流しでコップを水ですすぐとキッチンペーパーで拭いて棚に戻した
「お姉ちゃん!
コップもっと綺麗に洗えよ!
水でしか洗ってねーだろ。
洗剤使えよ!」
こちらが大人しくしていても、タケルは文句を言ってくる。
こんなに口を出してくるのを見ると、逆に構ってもらいたいのかなあと思えてくる。
いや、違うんだろうけど。
私は肩をすくめて言った、
「何で?
水しか飲んでないんだから。
別にすすぐだけでいいじゃない?
汚くないよ」
「ほんとイヤだよなあ。女って。
何でこうテキトーなんだよ」
タケルは嫌みったらしく私が棚に置いたコップを洗い直し始めた。
「それ、こっちの台詞だから!
男ってほんとグチグチグチグチ、男々しい!」
「もうヤダなあ……お姉ちゃん……」
とタケルが泣きそうな憐れっぽい声を出した。
そろそろ本気で面倒くさくなってきたので私は自分の部屋へ戻ろうとした。
が、リビングを出る前にタケルの声が追いかけてきた、
「お姉ちゃん?
おれさー。
うちの姉ちゃんが変態だってダチにバレないか、いつもビクビクしてんだぜ?」
私はピタリと足を止めた。
再び変態……ですって……?
やはり聞き流せない発言!
誰が変態なの!
しかしその後タケルは世間的にも正しいだろうことを言った、
「お姉ちゃん、男装して学校へ行っているだろ。
で、男子トイレ入ってんだろ?
男子更衣室で着替えしてんだろ?
それ全国ニュースで流れるレベルの犯罪だぜ?」
タケルは正しいことを言っている。
しかし姉として、非変態(自称)として反論せねば!
私は熱弁を始めた、
「でも何も見えたりなんかしないよ?
男子ってさー、男子しかいない更衣室でも服着替えるとき隠すじゃない?
体育のある日はあらかじめ短パンを制服の下に履いてきたりするしさあ。
全然パンツとか見てないよ!」
必死の言い訳は続く、
「それにトイレもさ、確かに男子トイレに入っているけど……ちゃんと、あまり誰もいないトイレでしたりとか気をつけているし!
男子ってトイレに皆で連れ立って行きたがるけど、私は『そう言うの嫌いだから』風に断っているし!
連れションとか全然してないよ!」
などと言う意味不明な供述をしており……と言われそうな変な言い訳しか言えなかった。
わ、私、変態だったの……?
(※ちなみに、この世界の男子トイレは完全個室である)
「だから何だよ。
お姉ちゃんの言い分じゃん。
そんなの警察は聞いてくれないよ。
男子トイレに女が入った時点で、覗くつもりだったんだろ、盗撮目的だろう、とか言われるんだよ!」
タケルは私が警察に捕まったときの話をした。
こいつ……。
縁起の悪いことを言わないでほしい!
(私も『捕まるかも……』ってちょっと心配になってきた)
「何で私が、男がオシッコしているところ覗いたりするの!」
などと言う意味不明な供述を……。
私はしてしまった。再び。
だってホントにそう思うんだもの。
本当だよ……。
「うわっ。おねーちゃん、キモい……
ほんとキモい」
タケルは心底イヤそうな顔をした。
「何でっ!
オシッコしているだけでしょ! トイレなんて!」
私は後に引けずに、言い続けた。
「もういいよ。その話題……」
弟はドン引きしながら、コップを丁寧に洗うと冷蔵庫をあさり始めた。
わ、私だって好きでこんなこと言ったんじゃないんだから!
タケルが色々言うからついヒートアップしちゃったんだから!
さんざんこちらをヒートアップさせておいて、結局ドン引きして自分から話題を降りるんだから……。
ホント、女は男に口では勝てないよね。
むかつく。
私が変態とか何言っているの。
変態じゃないもん。
私は淑女的だもの……たぶん同じ状況になった女の中でいちばん淑女的だもん。
同じ状況になった女がそもそもいないかもしれないけど。
私が軽く落ち込みながら考え込んでいると、
「おい、あおい。
おまえ、ホントに覗いてないだろうな?
その……トイレじゃなくても、色々」
とお父さんが顔を上げ、心配そうに見てきた。
「はあっ。
そんなことしないよっ。
考えたことないよっ」
と答えながらも。
まあ。
隣りのトイレの個室で、りんがパンツを脱いでいると思うと、少し興奮しちゃうけど……。
そう思ってから慌てて誰にともなく言い訳をしてしまう。
でも、そんな状況ほんとに滅多にないし?
だって私、ちゃんと避けているし。
やむを得ない場合だけだよ!
こちらもガマンできなくて、りんともかぶってしまったときだけよ!
更衣室で着替えるときも、ほんと部屋の端で皆に背を向けて着替えているし。
まあ、私の後ろで男子たちが着替えていると思うとちょっと興奮しちゃうけど……。
ああ、駄目だ。
これじゃあ、やっぱり淑女とは言えない。
私、変態じゃないのに。
変態的行為なんかしないのに。
ほんとに淑女的なのに……。
と心の中で自分に言い聞かせるように繰り返した。
だんだん虚しくなってきたけど。
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