あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

文字の大きさ
上 下
5 / 74
第一部

5話 高嶺の花

しおりを挟む
 プリントをコピーして、教室で配るところまでサキを手伝うと、私は元いた場所に戻った。
 
 私がイスに座ると、3人がにやにやと見てくる。

「どうだった?」

 どうだった、って言われても。

「プリントをコピーした。配った。それだけ」

「いや、それだけなわけねーだろ」

 とケイがむくれながら言った、

「と言うか、『それだけ』ってなんだよ!
もっとさあ……テンション上げるところだろ!」

「いいよなあ。
一緒に並んで歩いただけで、うらやましいよ……」

 とハヤトが夢見る 乙男おとなんの顔をした。
 
 私は肩をすくめるしかなかった。

 私は二人の反応を見て、思った。
 たしかにサキはすごい美少女だけど、そんなに男にとって魅力的なんだろうか?
 私は女だから、ちょっとよくわからない。
 こんな生活――女なのに男として生活――しているから、たまに男の気持ちとか考えてみるけど……。
 もし私が男ならサキみたいな美人より、もうちょっと平凡で可愛い女の子の方が気になると思うんだけどなあ……。
 いわゆるフツウーメンって言う感じの子ね。

(※フツウーメン……普通のwoman。顔面偏差値が普通クラスの女性)
 
 でも、私もりんみたいなかっこいい男子が好きなんだから、サキみたいな美人を好きになる男子のことよくわからないとか言えないかな……。
 『あん言う』ってやつね!

(『あん言う』……『あんたがそれ言うの?』の略語。ブーメランと言う意味)

 そんなことを考えながら、りんを見る。
 りんはケイとハヤトの反応に笑いながら言った、

「ま、どちらにしろ、高嶺の花だし!」

「それを言うなよ~」

 とケイとハヤトがオーバーに落ち込む素振りをした。
 
 私も笑いながら「だよな~」とりんに同意したものの思う……
 『高嶺の花』……そうかなあ?
 りんなら……サキとお似合いだと思うけど……。
 って、そんなこと口に出しては言わないけれど。
 『高嶺の花』と思っていてもらった方がこっちとしてはありがたいし! 
 ……なんて、嫌な女かな……。

「ま、あおいなら田中さんと……、ってのもありえるかもな~」

 とりんは私に微笑んだ。
 私は驚いて、りんを見る、

「えっ?」

「だって、田中さん、あおいのことやたら構うじゃん。
あおいのこと気になっているのかもよ?」

 そうかなあ……。
 ないと思うけど、もしそうならちょっと困るって言うか、申し訳ないなあ(私、女だからね)。
 って私、なんであんな美少女に対して上から目線になっているんだか。

「いや、おれちょっと女らしいところあるだろ?
だから女子にとって話し掛けやすい存在ってだけなんじゃないかな?」

 と私が考え考え言うと、

「あおい、自分が可愛いって自覚あったんだ」

 とりんはニヤリとした。

「バッ……。
ちげーよ!」

「可愛いなあ、あおい。
すぐ照れるよな」

 とりんは私に手を伸ばしてくる。
 やめて!

「やめろ!」

「可愛い」

 とりんは私の顔を広い胸に軽く押し当てた。
 先ほど私が強く拒絶を示したからか、『軽く』。
 ま。まあこれくらいなら……自分に許してもいいんじゃないかなあ……。
 役得と言うか……? 
 って私、サイテー女じゃないの!
 こんなの淑女的じゃない!

 私がりんから離れようとする前に

「またBL展開かよ~」

「そりゃおれら彼女できないよな~」

 とケイとハヤトのあきれたような声が聞こえてきた。
 いや、今離れるところだったのよ!

 ……。
 『BL展開』と言えば!
 気が重いことを思い出した……。

「そう言えばさあ、サキがお前らと話をしたいって言っていたよ」

 と私は『良いニュース』の方を先に行った。

 ケイとハヤトは明らかにテンションを上げ、りんも驚いた顔をしていた。

「えっ。ほんとかよ」

「なんでだよ~まじか」

「でもさ、何話せばいいんだよ?」

 3人が当惑しながらもワクワクしているところへ、私は『悪いニュース』の方を告げた、

「なんかさ~。サキ、GLの話をお前らとしたいんだって」

 私はつとめて明るく言ったが、私の目の前の3人はピシッと固まった。

「えっ。なんでGL……」

 とケイが半笑いで言った。

「てかなんで田中さんが、おれらとGLの話なんか……」

 とハヤトが眉間にしわをよせた。

「もしかして、おれらがさっきGLの話していたの、聞こえていたんじゃね?」

 とりんがあせった調子で言う。

「ま、まじか……。
ここ、教室の端だから誰も聞いてないと思っていたけど……」

 とケイも青い顔をした。

「もしかしておれら、思っていたより声デカかったのかな」

 ハヤトは軽く落ち込み始めた。

「や、やめろ~。
もしそうなら、他にも聞いている人いるかもしれないってことじゃん」

 ケイが頭を抱えた。

 ふとハヤトが何かを思いついたような顔をした、

「あ、あれだ!
田中さんがあおいに声かけにきたとき!
そのときに聞こえたんだよ!
だから、きっと田中さんだけだよ!
田中さんしか聞いていないよ!」

 明るく希望的観測を言うハヤトに、ケイは腕組みをしながら渋い顔で言った、

「それでも田中さんには聞かれたわけだが……」

「そう言うわけだ……」

 美少女にGL趣味を知られて落ち込む3人に、私は心の中で謝る。

 ごめん。
 サキにバラしたの私なんだ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

男女比1対99の世界で引き篭もります!

夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公! 前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!! 偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたので、欲望に身を任せてみることにした

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。彼女を女として見た時、俺は欲望を抑えることなんかできなかった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...