あおいとりん~男女貞操観念逆転世界~

ある

文字の大きさ
上 下
4 / 74
第一部

4話 あおいとサキ

しおりを挟む
 4人で楽しく(?)話していると、
 
「ね、あおいくん」

 と名前を呼ばれたので私は顔を上げた。
 そこには田中サキがいた。

「田中さん?」

 と答える私の、周りにいる3人の男子に緊張が走るのが感じ取れた。
 3人の男子――りん、ケイ、ハヤト――が固まるのもわかる。
 田中サキは、クラスでも、いや学年の中でも、上位クラスの美少女なのだ。

「このプリント、コピーするよう先生に頼まれているんだけど、手伝ってくれない?」

 とサキは言った。

「うん。いいけどさ」

 私は立ち上がったけど、本当は面倒くさい。
 何で私? と思っている。
 田中サキは何故か私にたびたびちょっかいをかけてくる。

 私は3人の羨望のまなざしを背中に感じながら、サキの後についていった。

「ねえ、あおいくん」

「何、田中さん」

 コピー機のある方向へ歩いている中、サキが話し掛けてきたので、私はほとんど反射だけで答えた。
 するとサキは少しむくれた調子で言った、

「名字じゃなくて、名前で呼んで、って言ったじゃない」

「サキ……ちゃん」

「呼び捨てでいいよ」

「サキ」

 仕方なく呼び捨てにしてサキを見ると、彼女はにこっと微笑んだ。
 さすが美少女、笑顔も美しい。

「さっきさあ、私、あおいくんたちの話していること、少し聞いちゃった」

「え。
ああ、GLの話?
嫌だよなあ。
おれあんまり好きじゃないんだよ」

 聞かれたものはしょうがない、と私は正直に言った。

「GLの話?」

 とサキは首をかしげた。
 しまった! その話じゃなかったのか。
 聞いていなかったのなら、私は余計なことを言ってしまった。
 うまくごまかさねば、3人の学校生活に支障をきたす可能性が!

「いや……えーと。
じゃ、何の話?」

 全然ごまかせてないが、話題は変えた!

「あおいくん。
BLが好き、ってさっき話していたでしょ」

 とサキは何気ない調子で言った。
 うわ!
 3人のGL趣味がバレたと心配している場合じゃなかった!

「ああ……ははは」

 私はとりあえず、時間稼ぎにごまかし笑いをした。

「あおいくん、BLが好きって……。
もしかして、そっち、じゃないよね?」

「そっち?」

 私はひきつった笑みのまま、オウム返しをした。
 頭が『BL趣味ばれた、まずい』しか働かないので、サキの使う代名詞の意味するところを推測する余裕がない。

「あおいくんって、もしかして男子が好きだったりする?」

 『男子が好きだったりする?』
 この言葉の意味はわかったわ!

「ええ!?
何、言ってんだよ!
おれ男だぜ!」

 と言ってから、また余計なことを言ってしまった、と思った。
 『おれ男だぜ!』なんて、男がわざわざ言う?
 もしかして、まずくない?

 しかし、

「うん! やっぱりそうだよね!」

 とサキは何故か嬉しそうに言った。

 どうやら、サキは『おれは男だから女を好きになるだろ、普通』みたいな意味で、私の『おれ男だぜ!』発言を解釈してくれたようだ。
 ま、そうなるよね。
 実際は『おれ、男子が好きだけど、「実は女」とかじゃないから! おれ男だから!』と言う感じの意味だったんだけど……。

「男子にも、BL好きっているもんね。
薔薇男子ばらだんし
BLが好きだからって、あおいくんが男子が好きだなんて、飛躍し過ぎだよね」

 とサキは言った、

「よかった」

「え……」

 『よかった』ってどういうこと?
 
 サキはにっこり笑った、

「私もね、実はGL好きなんだ。女だけど。
腐女子ってやつなの」

(※この世界の腐女子はGL好きの女子のことである)

「そ、そうなんだ……」

「私、可愛い子好きなの」

 とサキは言った。

「そっか。
GL好きなら、あいつらと話合うかもな!」

「あいつらって?」

「りん。ケイ。ハヤト」

 あ。結局3人の密やかな趣味をサキにばらしてしまった。
 ごめん。
 私って本当、つい考えなしでその場凌ぎな感じでしゃべっているフシがある。
 反省して直さねば。

 まずいこと言っちゃったな、とサキを見ると、サキは真顔になっていた。
 うわ。りん、ケイ、ハヤト、引かれてる! ごめん!

 しかし、私の視線に気づくとサキは再び笑顔を向けてくれた、

「そっか。
じゃあ、話しかけてみようかな」

 今度は私から笑みが消える番だった。
 困る!
 サキがりんに近づくのは困るよ!
 りんとサキ。
 美女美男でめちゃくちゃお似合いじゃないの!
 いやーー!

 まさか、サキの狙いはこれ!?
 イケメンりんを狙うため、小物の地味男子(実際は女子)の私にちょっかいを出しているんじゃないの!?

 私は隣を歩くサキのきれいな横顔をちらりと横目で見ながら、どうしたもんかと考えていた。
 どうにもならないけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

男女比1対99の世界で引き篭もります!

夢探しの旅人
恋愛
家族いない親戚いないというじゃあどうして俺がここに?となるがまぁいいかと思考放棄する主人公! 前世の夢だった引き篭もりが叶うことを知って大歓喜!! 偶に寂しさを和ますために配信をしたり深夜徘徊したり(変装)と主人公が楽しむ物語です!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたので、欲望に身を任せてみることにした

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。彼女を女として見た時、俺は欲望を抑えることなんかできなかった。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...