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3. 野獣、企む
野獣、企む ②
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お待たせしました :(;゛゜'ω゜'):
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怪我は想像していたものよりも酷かった。
担当医師である瀬里の長兄、健の説明を聞きながら思わず苦笑してしまう。健には『瀬里を守ってくれたのは本当に感謝しているけど、こんな大怪我して笑い事じゃないですよ』と叱責されたが、あの時の自分の迂闊さに笑いしか出てこないのだから仕方ない。
切れた皮膚をちょちょっと縫うような傷ではないし、健が言う通り笑い事で済むような話ではないのだろうけど、平静を欠くほど瀬里が特別な存在なんだと改めて実感した。
ともあれ、瀬里が無事だったことは何よりだ。
そうして、手術室に入って間もなくからの記憶は途絶え、気が付けば病室だった。
麻酔が切れたせいか左手がズキズキする。手術前は痛みを殆ど感じていなかったから、自覚するよりも気が昂ぶっていたのだろう。
しんと静まり返った病棟。
引き戸の磨りガラスの向こう側から、非常灯の灯りがぼんやりと射し込んでいる。
せっかく目が覚めたというのに、消灯時間を過ぎているらしい。
テレビもないえらく殺風景な部屋だ。今の時間は分からないが、これでは夜があまりに長すぎる。
どうしたものかと、取り敢えずベッドから抜け出して、備え付けのロッカーを開けた。中にはショッパーが有り、中を確認してみると京平が着ていた服が入っている。その上にぽんと置かれた財布とスマートフォン。
京平はスマホを手に取りタップした。画面が明るく光り、ロック画面に時刻が表示される。
二十一時三十六分。そろそろ瀬里が仕事から帰ってくる時間だろうか。
未成年だから二十二時を回るような仕事はないにしても、春休み中はスケジュールが一杯だと、彼女のマネージャーである本郷ディアナ華子が言っていた。だから少しの間でも瀬里と一緒の時間を作ろうと、時間の許す限り予定を調整した。たとえ瀬里にストーカーと呼ばれても気にしない。
ただ、今日は何故だか胸の内がモヤモヤとして落ち着かなかった。その正体が判らないまま、華子が教えてくれたボクシングジムに先回りしたのだが、思わぬ結果になってしまった。
熟々、先回りしていて本当に良かったと安堵する。
華子にしてみれば、京平は格好のボディガード扱いで深い意味はないのだろうが、予定外の行動を知らせてくれた彼女に感謝しかない。
(瀬里に何かあったら、正気でいられない自信があるからな)
まず間違いなく留置所に乗り込んだだろう。尤もそうなった場合、犯人に辿り着く前に京平も留置所送りだったろうが、大人しく捕まってなどやろう筈もない。
包帯の巻かれた左手に目を落とす。
中指から小指の三指がピクリとも動かない。
(癒着しないように、明日からリハビリとか言ってたな―――しばらく店に出られないか。シェーカー振れるまでどの位かかるやら)
父 勝明の酒好きが高じて、完全道楽で始めたバルを任されるようになって、かれこれ二年になる。高校生の息子に飲み屋を任せるなど、大人としてどうかと思うが、父曰く、京平の筋金入りに不貞不貞しい顔付きは学生に見えないし、家事手伝いは子供の義務、と押し切られたのがそもそもの始まりだ。
大体にして、勝明は商売に向いていない。
勝明に任せていたら、そう遠くない未来で従業員が路頭に迷っていた、と確信している。故に、卒業したら店の名義を自分に換えてやる心算だ。その為の布石も抜かりない。
「店……さすがに親父も連絡しただろ。退院したら、取り敢えずどっかで一回顔を出さないとな」
ぼそぼそと呟いた後に、勝明の顔を思い浮かべて急に不安が込み上げてくる。
家事能力が壊滅的な父親を一人にして、帰った時に果たして彼は無事でいるだろうか。勝明が唯一これだけは得意と胸を張れるのが、 “日本茶を淹れる” 事しかない。
(さ、さすがに子供じゃないんだから、飯くらいは出前とって遣り過ごすだろ。大丈夫だ。多分。洗い物がたとえ山積み―――誰が洗うんだよ。俺か? 俺なのか、やっぱり)
もう一度、左手を見る。
親指と人差し指は動くが、少々ぎこちない。
「利き手じゃなくて良かったが……」
只でさえ大きな手に包帯を巻かれているのに、合うゴム手袋なんて物が有るだろうか?
「ないな」
京平に臨時の家政婦を雇う選択肢はない。
勝明がその手段を選ぶことも二度とないだろう。
「買い物袋、被せるか? ……絶対滑るだろ」
指の感覚が鈍い。もしかしたら麻酔が完全に抜けきっていないのかも知れないが、早々に割るのが目に見えるようだ。
どうしたものかと考えあぐねていると、左側―――ベッドの向こうに気配を感じて振り返った。壁だと思い込んでいた所から細い光が見え、京平はそちらに躰を向ける。
誰かがそっと覗き込んだ。
逆光ではっきりと顔を確認できないが、シルエットからして男だと判る。
「京平くん、起きたね」
聞き慣れた声に自然と警戒心が緩んだ。
扉を大きく開け放って、彼はゆっくりと京平に近づいて来た。
「もう起き上がって大丈夫なのかい? 熱、出てるんじゃないかと思ったんだけど」
黒いVネックの綿ニットに白衣を羽織っている健が、ちょっと驚いた表情を見せている。そんな彼に促されるままベッドに腰掛け、体温計を脇に挟んだ。
健がベッドの上の照明を点け、京平は暗がりになれた目を眩しげに細める。
「差し当たって問題はないですが」
言われてみれば少し気怠い気もするが、敢えて申告するほどの事でもないと口を噤む。
それよりも、先刻まで色々と考えを巡らせていた事を唇に乗せた。
「健さん。今から退院とか出来ますか?」
「はっ? 無理に決まっているでしょう。どんな病気を持っているか判らない人たちを切りつけた刃物で切られているんだよ、君は。勿論最善の処置はしたけれど、数日は経過観察しないと。今だって術後の急変に備えて、ナースステーションの隣りに居るんですから」
「はあ」
健が入ってきた扉はナースステーションに繋がってるのか、とぼんやり考えながら、気のない返事を返した。すると途端に健が渋面を作る。
「まるで他人事ですねぇ。もし……今回の件で、京平くんに重荷を背負わせる様なことになったらと、考えるだけで居た堪れなくなります。瀬里が無事だった代わりに、もし君に何かあったら、勝明先生に申し訳が立ちませんよ」
普段温厚な健の剣幕に、何事かと覗き込む夜間勤務の看護師二人をチラリと見て、京平は苦笑を浮かべる。
「あの、健さんの仰ることも解るんですけど、ね」
「なんです? 歯に衣着せるなんて京平くんらしくないですね」
「俺って、健さんの中でどんなポジションですか」
思わず顔が引き攣った。が、すぐに気を取り直して言を継ぐ。
「もし仮に瀬里を庇ったことで俺が死んだって、親父はよくやったとしか言わないと思いますよ」
手首を取って脈を測り終えた健に体温計を返す。体温を確認してふむと小さく頷いた健。
「別に死に急ぐ心算はさらさらないですが、そういう性ってもんは、高本の男たちなら良く解るんじゃないですか?」
「君にそれを言われるとはね」
医者としたら困る発言を返されただろうが、身内としては嬉しい、そんな複雑そうな笑みを浮かべる健。
ここは押し所だ、と気合いを入れると、京平は先刻までつらつらと考えていたことを頭の中で素早く整理し、即座に纏まった提案を健に持ち掛けるのだった。
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怪我は想像していたものよりも酷かった。
担当医師である瀬里の長兄、健の説明を聞きながら思わず苦笑してしまう。健には『瀬里を守ってくれたのは本当に感謝しているけど、こんな大怪我して笑い事じゃないですよ』と叱責されたが、あの時の自分の迂闊さに笑いしか出てこないのだから仕方ない。
切れた皮膚をちょちょっと縫うような傷ではないし、健が言う通り笑い事で済むような話ではないのだろうけど、平静を欠くほど瀬里が特別な存在なんだと改めて実感した。
ともあれ、瀬里が無事だったことは何よりだ。
そうして、手術室に入って間もなくからの記憶は途絶え、気が付けば病室だった。
麻酔が切れたせいか左手がズキズキする。手術前は痛みを殆ど感じていなかったから、自覚するよりも気が昂ぶっていたのだろう。
しんと静まり返った病棟。
引き戸の磨りガラスの向こう側から、非常灯の灯りがぼんやりと射し込んでいる。
せっかく目が覚めたというのに、消灯時間を過ぎているらしい。
テレビもないえらく殺風景な部屋だ。今の時間は分からないが、これでは夜があまりに長すぎる。
どうしたものかと、取り敢えずベッドから抜け出して、備え付けのロッカーを開けた。中にはショッパーが有り、中を確認してみると京平が着ていた服が入っている。その上にぽんと置かれた財布とスマートフォン。
京平はスマホを手に取りタップした。画面が明るく光り、ロック画面に時刻が表示される。
二十一時三十六分。そろそろ瀬里が仕事から帰ってくる時間だろうか。
未成年だから二十二時を回るような仕事はないにしても、春休み中はスケジュールが一杯だと、彼女のマネージャーである本郷ディアナ華子が言っていた。だから少しの間でも瀬里と一緒の時間を作ろうと、時間の許す限り予定を調整した。たとえ瀬里にストーカーと呼ばれても気にしない。
ただ、今日は何故だか胸の内がモヤモヤとして落ち着かなかった。その正体が判らないまま、華子が教えてくれたボクシングジムに先回りしたのだが、思わぬ結果になってしまった。
熟々、先回りしていて本当に良かったと安堵する。
華子にしてみれば、京平は格好のボディガード扱いで深い意味はないのだろうが、予定外の行動を知らせてくれた彼女に感謝しかない。
(瀬里に何かあったら、正気でいられない自信があるからな)
まず間違いなく留置所に乗り込んだだろう。尤もそうなった場合、犯人に辿り着く前に京平も留置所送りだったろうが、大人しく捕まってなどやろう筈もない。
包帯の巻かれた左手に目を落とす。
中指から小指の三指がピクリとも動かない。
(癒着しないように、明日からリハビリとか言ってたな―――しばらく店に出られないか。シェーカー振れるまでどの位かかるやら)
父 勝明の酒好きが高じて、完全道楽で始めたバルを任されるようになって、かれこれ二年になる。高校生の息子に飲み屋を任せるなど、大人としてどうかと思うが、父曰く、京平の筋金入りに不貞不貞しい顔付きは学生に見えないし、家事手伝いは子供の義務、と押し切られたのがそもそもの始まりだ。
大体にして、勝明は商売に向いていない。
勝明に任せていたら、そう遠くない未来で従業員が路頭に迷っていた、と確信している。故に、卒業したら店の名義を自分に換えてやる心算だ。その為の布石も抜かりない。
「店……さすがに親父も連絡しただろ。退院したら、取り敢えずどっかで一回顔を出さないとな」
ぼそぼそと呟いた後に、勝明の顔を思い浮かべて急に不安が込み上げてくる。
家事能力が壊滅的な父親を一人にして、帰った時に果たして彼は無事でいるだろうか。勝明が唯一これだけは得意と胸を張れるのが、 “日本茶を淹れる” 事しかない。
(さ、さすがに子供じゃないんだから、飯くらいは出前とって遣り過ごすだろ。大丈夫だ。多分。洗い物がたとえ山積み―――誰が洗うんだよ。俺か? 俺なのか、やっぱり)
もう一度、左手を見る。
親指と人差し指は動くが、少々ぎこちない。
「利き手じゃなくて良かったが……」
只でさえ大きな手に包帯を巻かれているのに、合うゴム手袋なんて物が有るだろうか?
「ないな」
京平に臨時の家政婦を雇う選択肢はない。
勝明がその手段を選ぶことも二度とないだろう。
「買い物袋、被せるか? ……絶対滑るだろ」
指の感覚が鈍い。もしかしたら麻酔が完全に抜けきっていないのかも知れないが、早々に割るのが目に見えるようだ。
どうしたものかと考えあぐねていると、左側―――ベッドの向こうに気配を感じて振り返った。壁だと思い込んでいた所から細い光が見え、京平はそちらに躰を向ける。
誰かがそっと覗き込んだ。
逆光ではっきりと顔を確認できないが、シルエットからして男だと判る。
「京平くん、起きたね」
聞き慣れた声に自然と警戒心が緩んだ。
扉を大きく開け放って、彼はゆっくりと京平に近づいて来た。
「もう起き上がって大丈夫なのかい? 熱、出てるんじゃないかと思ったんだけど」
黒いVネックの綿ニットに白衣を羽織っている健が、ちょっと驚いた表情を見せている。そんな彼に促されるままベッドに腰掛け、体温計を脇に挟んだ。
健がベッドの上の照明を点け、京平は暗がりになれた目を眩しげに細める。
「差し当たって問題はないですが」
言われてみれば少し気怠い気もするが、敢えて申告するほどの事でもないと口を噤む。
それよりも、先刻まで色々と考えを巡らせていた事を唇に乗せた。
「健さん。今から退院とか出来ますか?」
「はっ? 無理に決まっているでしょう。どんな病気を持っているか判らない人たちを切りつけた刃物で切られているんだよ、君は。勿論最善の処置はしたけれど、数日は経過観察しないと。今だって術後の急変に備えて、ナースステーションの隣りに居るんですから」
「はあ」
健が入ってきた扉はナースステーションに繋がってるのか、とぼんやり考えながら、気のない返事を返した。すると途端に健が渋面を作る。
「まるで他人事ですねぇ。もし……今回の件で、京平くんに重荷を背負わせる様なことになったらと、考えるだけで居た堪れなくなります。瀬里が無事だった代わりに、もし君に何かあったら、勝明先生に申し訳が立ちませんよ」
普段温厚な健の剣幕に、何事かと覗き込む夜間勤務の看護師二人をチラリと見て、京平は苦笑を浮かべる。
「あの、健さんの仰ることも解るんですけど、ね」
「なんです? 歯に衣着せるなんて京平くんらしくないですね」
「俺って、健さんの中でどんなポジションですか」
思わず顔が引き攣った。が、すぐに気を取り直して言を継ぐ。
「もし仮に瀬里を庇ったことで俺が死んだって、親父はよくやったとしか言わないと思いますよ」
手首を取って脈を測り終えた健に体温計を返す。体温を確認してふむと小さく頷いた健。
「別に死に急ぐ心算はさらさらないですが、そういう性ってもんは、高本の男たちなら良く解るんじゃないですか?」
「君にそれを言われるとはね」
医者としたら困る発言を返されただろうが、身内としては嬉しい、そんな複雑そうな笑みを浮かべる健。
ここは押し所だ、と気合いを入れると、京平は先刻までつらつらと考えていたことを頭の中で素早く整理し、即座に纏まった提案を健に持ち掛けるのだった。
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