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3. 架純 ~女の純情なめんなよ
架純 ⑫
しおりを挟むお久しぶりです。
公私ともに何かと忙しく、お待たせ致しまして申し訳ありません。
ずっと放置プレイされていた二人は、やっと盛り上がって来てました( *´艸`)
*************************************
架純の様子を窺いながら唇を啄んでくる黒珠の唇から、時折熱い吐息が漏れてくる。それが仄かに甘く香って彼女を蕩けさせた。躰から力が抜け落ち、黒珠の腕が支えてくれなければ、地面に倒れ込んでしまいそうだ。
先刻から花頭が一段とその芳香を濃くし、頭がクラクラする。
宿主には影響がないものだと思っていたけれど、そうではなかったのだろうか?
架純がこんな状態なのだから黒珠はどうなんだろうと、薄く目を開けて彼の顔を盗み見て、架純は思い切り後悔した。
苦しげに双眸を細めているのに、その向こうでは獲物を定めた獣のような瞳が架純を映している。本能的にヤバイと目を硬く閉じると、黒珠の額がコツンと架純の額に合わせてきた。
「好きだ……架純さんの気持ち、聞かせて?」
黒珠の切なげな声にブルッと震える。恐る恐る瞳を向けると、彼の蠱惑的な眼差しに捕らえられ、腰にゾクリとしたものを感じて架純は身を硬くした。
何だか妙な気分になってきて、そんな自分に戸惑っている。なのに黒珠の視線から目が離せない。
「そ……んなの…」
「お願い」
黒珠の両手が架純の頬を包み込む。潤んだ熱っぽい瞳に覗き込まれ、無意識に「好き」と呟いていた。と同時に黒珠の腕に再び抱き込まれ、「俺も」と囁く声が耳朶をくすぐる。架純は思いもしない吐息を漏らして首を竦めてから、急に恥ずかしくなった。
黒珠から目を逸らして俯きかけた彼女を、許すまじと彼の指が顎を持ち上げる。目を瞠って黒珠を見上げる架純に、彼はやんわりと微笑んだ。
「やっと。やっと聞けた」
黒珠の指が架純の唇を掠めるように撫で、僅かに開かれた彼女の唇に彼のそれが重なり合う。悪戯に架純の唇を黒珠の舌先がチロチロと蠢いて、彼女が黒珠の胸でギュッと両手を握ったのを合図に、にゅるっとした物が口腔に忍び込んできた。
「っ!? …んんっ……」
驚いて咄嗟に黒珠を押し退けようとすると、背中に回されていた腕が這い上がり、髪の中に滑り込んだ指が頭を押さえ、もう片方の腕が腰に回されてぐっと引き寄せられた。
二人の間に挟み込まれた手は動かすことが出来ないしで、動きを封じられた架純の脳内はとんでもないパニック状態に陥り、目を白黒させている。と、黒珠と目が合って慌てて目を閉じた。
視界を塞ぐと感覚が鋭敏になる。
架純の唇から割入ってきたそれは、歯列をなぞるといとも簡単に深く侵入し、口蓋を舐り頬の内側を這う。初めて味わう感触がくすぐったくて、架純が追いかけて追い出そうとすると、舌先が絡め取られ、微かな痛みと甘やかな痺れが走る。
瞬間、怖くなって逃げようと試みた舌先が敢え無く捕らえられ、髪の中に潜る黒珠の指が触れた所から、電機が走っているような痺れと、腰を引き寄せた手が背中や腰を弄った。
お腹の奥がキュンとなる。
「ぁ……ふぅ…んっ……ん……」
唇の隙間から零れた吐息交じりの声。
それが自分の声とは思えない程あまりに淫らで、架純は羞恥に震えた。
(やーッ! 初心者には、こっこんなキスっ! いきなりしちゃダメでしょーぉっ!? しかも手の動きがやらしいからっ)
自分の声がエロ過ぎて、咄嗟に理性を取り戻したものの抵抗する術もなく、口内を蹂躙され続け、黒珠の舌技に蕩かされていく。
頭がぼうっとして何も考えられず、躰はふわふわと心許ない感じなのに気持ちが良い。
黒珠に身を委ね、架純は与えられるまま口づけを享受していた。
すると不意に唇が離れた。
濡れた唇に空気が触れ、あっという間に熱が奪われる。それが寂しくて、潤んだ瞳で黒珠を見れば、彼は溜息を吐いて架純の肩に額を乗せた。
「その花……」
「…はな?」
言葉にしながら小さく首を傾げる。
「今日は謝って、気持ちを伝えるだけの心算だったのに……花頭が、ヤバ過ぎるだろぉ。理性が、利かなくなる」
何の事だかピンと来ない。
架純が放心状態でゆるゆる思考を巡らせると、背中が反るほど抱きしめられた。
僅かに眉を寄せ、一体黒珠は何を言いたいのだろうかと、焦点の定まらない双眸で、肩に凭れる黒珠を見詰める。
鎖骨に触れる彼の吐息の熱さに背筋がゾクゾクし、なんだか堪らない気持ちになってきた架純は、ようやく自由になった腕に黒珠の頭を抱き、頬擦りした。
蕩けるようなキスが欲しくて。
「かねこくん…すきぃ」
「!! ばっ……なんで今言うかなッ! 初っ端から押し倒したりしたくないから、こっちは必至でこの先我慢してるのに……躰目的みたいなこと、したくないのにっ」
架純が好きだから苦しいと、吐息のように囁かれた。
お腹よりももっと下の方、まだ誰も知らない秘密の場所がキュッとして、悶えそうになるのをやり過ごそうとしたのに、彼と触れ合っている所から熱が生まれて、伝播していくと、湧き上がって来る衝動が止まらなくなる。
「かねこくぅん。どーしよ。躰が、ムズムズして、変なのぉ」
「だからどーして……――――ごめん。俺に、架純さん、くれる?」
それがどういう意味なのか架純は深く考えもせず、何処にも持って行きようのない衝動を黒珠なら開放してくれるだろうと、縋りついて頷いた。
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