【R18】花頭症候群 ~花盛りの女たちと、翻弄される男たちのあれやこれや

優奎 日伽 (うけい にちか)

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2. 杏里 ~逃がさないから覚悟して?

杏里 ④ 【微妙な感じのR18?】

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明けましておめでとうございます (●´ω`●)/
今年も宜しくお願い致します❤

では。新年一発目の更新です!

杏里ってば、回想と現在を行ったり来たりで、もだもだしてます。 


**************************************

 
 ***


 思ってもみなかったニュースが黒珠からもたらされたのは、八月に入って間もなくの事だった。

 瑠珠は会社の飲み会だって言っていたし、黒珠も居酒屋のバイトで居ない。
 金曜の晩にやることもなく、ボケッとテレビを観ていたら、黒珠から電話が掛かって来た。
 スマホの画面で何気なく時計を確認し、バイトが終わる時間になっていた事に気が付いて慌てて電話を取ると、黒珠が真面目腐った声で『出て来れるか?』と訊いて来た。声の雰囲気から遊びの誘いじゃないのが分かって、僅かに眉を寄せる。

「出れるけど、どうかした?」
『瑠珠がグデグデ』
「すぐ行く」

 即答して黒珠の指定したショットバーに行くと、カウンターに泣き伏しながらも弟に抵抗して、バシバシ叩きつけている瑠珠の姿が在った。

「瑠珠、何したの? 飲み会でなんかあった?」
「あー、それが……」

 嗚咽を漏らす瑠珠を一瞥すると、杏里の背中を押して彼女から距離を取り、言い辛そうに黒珠が口を開いた。
 黒珠が店から連絡を貰った時には、瑠珠はもう既に今の状態だったらしい。その状態で引き出した話によると、彼氏が浮気していた現場に居合わせてしまったと言うものだった。

「っんだよソレ! 俺、そんな奴の為に二年も我慢してたわけ!?」
「だよな。そーなるわな」
「馬鹿らしい。我慢なんてするんじゃなかった! あぁぁぁぁっムカつくッ!! 俺の二年返せッ」
「俺に言われてもな」

 それはそうだ。
 杏里が渇望した瑠珠を手に入れておきながら、他の女と浮気するなんて言語道断だ。しかも言い逃れ出来ない現場を彼女に押さえられるとは、万死に値する。
 瑠珠が他の男と付き合っているのは死ぬほど嫌だけど、彼女の気持ちを無視して激情のまま奪う心算はなかった。そんな事しても彼女に逃げられるのが落ちだし、そんな意味の無いことする気もないから、常に自分を見失わないようにしてきた。
 しかしこれは、杏里にとって千載一遇のチャンスだ。

 彼女が心を痛め、打ち拉がれて泣き伏す様子を見るのは、杏里も自分の事の様に辛い。これが彼氏の事でなければ、彼女と一緒に嘆き、慰め、励ましただろうが、「可哀想な瑠珠」と呟きながら、心の中に湧き上がって来る歓喜が抑えられない。
 嗚咽する瑠珠の背中を擦りながら、隣に座って姉の頭を撫でている黒珠に目を遣った。

「俺、サイテーだ。瑠珠が泣くのヤなのに、俺のターン来たとか思ってる」
「そんなの普通だろ? きっと俺だって同じこと思うわ」

 心の中の昏い部分を黒珠に肯定されて、杏里の表情からふっと力が抜けた。少し困った笑みを浮かべると、黒珠も苦笑する。
 いつの時代も恋愛は弱肉強食。タイミングやハンデで辛酸を舐めてきたけれど、ただ指を咥えて眺めているしか出来なかった頃と違う。ようやく巡って来たチャンスを今度こそしっかり掴む。
 その為だったら多少卑怯な手だって厭わない。正攻法だけで手に入れられるものなんて少ないのだ。
 どうにも出来ない苦しみに身悶えた夜は、この先もういらない。

(瑠珠の中にじわじわ喰い込んで、俺が良いって絶対に言わせて見せる!)

 震える小さな背中に目を落とし、決意を固めるように唇を噛む。
 彼女の笑顔を惜しみなく向けて貰うために出来る事。
 形振りなんて構ってられない。

「今度は死ぬ気で行くわ」
「おうっ。頑張れ」

 ニッと笑ってサムズアップする黒珠に小さく頷いた。



 瑠珠の心の傷は思いの外深かった。
 散々泣いて泣いて泣いて、泣き止んだ時、彼女は抜け殻の様だった。
 杏里が思う以上に、瑠珠は情の深い女だったらしい。

 物が食べられなくなった瑠珠は見る見る間に痩せ細っていって、遂には入院した。
 勿論そうなる前に瑠珠の家族も杏里も手を尽くした心算だったけれど、なかなか彼女にその思いが届かなくて、皆もどかしい日々を過ごしていた。
 後に “馬鹿みたいに明るい金子家の暗黒期” と黒珠が名付け、『父さんが一気に老け込んだよな』と語る笑い話になるけれど、沈鬱な表情がデフォルトになるんじゃないかというくらい、全員が本当に消沈していた。あの甘やかされた末っ子独特のマイペースな真珠まで。

 瑠珠が入院したと聞いて駆け付けた杏里は、周囲の目も構わず彼女を抱き締めた。
 永遠に瑠珠を失ってしまうのではないかと恐怖した事を、杏里が入院した時の彼女の心境に準え、『元気出してまた笑ってよ』と泣いて懇願した。
 瑠珠の細くなってしまった腕が背中に回され、『ごめんね』と呟かれた声は掠れていたけど、精気を感じることが出来て杏里は恥ずかしいくらい号泣してしまった。

 彼女は俄かに元気を取り戻した。
 見せかけの空元気は少し憐れを感じさせていたけれど、それでもこの日を境に彼女は笑みを浮かべるようになってくれた。

   

「る~みぃ。瑠珠さぁん。そろそろ起きてよぉ」

 言葉とは裏腹に、耳元で囁く。

(起きて欲しいんだけど、寝かせてあげたいこの複雑な心境、どうしたら良いんでしょうか?)

 すっかり起き上がった下半身の熱の持って行き場が全く反応を見せてくれないと、切なさを通り越して不埒な考えが芽生えて来る。
 杏里の胸に変わらず顔を埋めている彼女の耳殻を、そっと指で辿った。顎のラインを滑り、首筋から鎖骨に流れ、薄い肩から背筋をゆっくり滑り降り、腰骨をなぞる。

 肌理の細かい滑らかな肌の感触が、何度こうして杏里を昂らせたろう。
 ダメだと思いながら瑠珠に触れたい衝動が抑えられなくて、罪悪感を抱えながら目を覚まさない彼女の秘密を少しずつ暴いていく高揚感。

 指先が柔らかな下生を翳め、するりと張りのある双丘へと流れ着く。僅かな力を指先に篭めると、ふわりとした感触で指先が沈んだ。
 瑠珠の臀部を引き寄せ、滾る屹立を彼女の下腹に擦り付ける。

「……はぁ。何やってんの俺」

 ここで瑠珠の寝込みを襲って叩き起こし、情事に現を抜かしたって誰にも咎められることはない。もしかしたら彼女にはちょっと怒られるかも知れないけど、本気で怒られるような事も嫌われるような事もない……はず。
 なのにビビってしまうのは、疚しい記憶が良心をチクチクと刺してくるせいだ。
 杏里の意思とは関係なくピクピク蠢く雄芯に、瑠珠の身体が押し付けられてきた。もしかして起きているのかと声を掛けてみたが、聞こえてくるのは安定した寝息ばかりで、あからさまにガックリする。

(酒も飲んでないのに爆睡って、どこまで俺を弄ぶんだよ~ぉ。あぁもお泣きたい。もお襲っても良いかな…?)

 本気で一気に挿入してやろうかと考え、直ぐに改める。

(いや……一気は止めよう。痛かったりしたら、瑠珠に干されるかも知れないし)

 瑠珠の膣内なかの気持ち良さを知った後で干されたら、きっと地獄だ。
 なだらかな曲線を描く双丘を掌が滑り、溝に沿わせた指を暗い谷へと滑落させて行く。熱を帯びた峡はしっとりとして、杏里を誘っているとしか思えない。

「るみ~ぃ? 襲っても良い?」

 恐る恐る確認してみたけど、やっぱり返事はない。
 杏里が中指をクレバスへ差し伸ばすと瑠珠の腰がピクリと揺れ、咄嗟に指の動きを止めてしまった自分に眉をひそめる。何だかこの一年で、変態染みた性癖が身に付いてしまったようで、杏里は何とも言えない溜息を吐いた。

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