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1. 瑠珠 ~枯れ女に花を咲かせましょ
瑠珠 ⑪ 【R18】
しおりを挟むあ~もう、と瑠珠は心中で何度目だろうか、情けなく呟いた。
今日も今日とて杏里の部屋に連れ込まれ、上に跨がって動きを封じた彼は、首筋から鎖骨に掛けて唇と舌を這わせ、Tシャツの中に滑り込ませた手がブラを性急に押し上げて、胸に愛撫を施している。
ちゅくちゅくと卑猥な水音をたてながら、瑠珠の肌を味わい、乳房をやわやわと揉んでいたかと思えば、胸を尖りを抓んで捻り、爪先でカリカリと引っ掻く。
熱を持った吐息が甘い香りを放ちながら、唇から零れてしまう。
こんな筈ではなかったのに。
さすがに今日は、杏里もおとなしく帰るだろうなんて考えは甘かった。セックスを覚えたての、十代男子の性欲を舐めきっていたのは否めない。三大欲求である睡眠欲を性欲が上回るなんて、瑠珠の常識から外れていたのも事実だ。
エレベーターを降りた瞬間、杏里の肩に担ぎ上げられ、足早に連れ込まれていた。
瑠珠の悲鳴は間違いなくフロアに響いた筈だが、如何せん防音完備のマンションである。だからこそ女優の相沢杏花もここに住んでいられるのだろうけど。
そう言うわけで、娘の危機に気付かない母が待つ自宅の前を素通りし、隣の部屋にまんまと連れ込まれた次第である。
拒否の言葉を悉く遮り、執拗に口中を貪られた。
昨夜よりも数段にレベルアップしている口付けに翻弄され、ダメだと思いながら流されてしまう。脳髄が痺れて、思考することもままならず、身体は快楽を従順に受け止め、お腹の奥に苛立ちさえ感じてしまう程の熱を生んでいた。
「瑠珠、好きだよ」
耳元で低く囁いた声に、尾てい骨を直撃された。腰にゾクッと痺れが走り、秘所の奥できゅんとなったソコは、若い雄を強請るように涎を垂らし始めている。杏里に知られたら、もう言い逃れも出来ないと焦りを感じるのに、身体は知って欲しいとばかりに揺れてしまい、止める術がない。
いつの間にか捲り上げられたTシャツから、ブラをずり上げたせいで形を歪ませた双丘がまろび出て、片方を揉み拉きながらもう片方を口中に含み、硬く尖った頂を舌で扱いてくる。軽く当たった歯の刺激と相俟って、吐息混じりの喘ぎが漏れた。
「……っ…はぁ……んっ」
杏里が小さな笑いを零し、もっと強い愛撫を加えてくる。
こんな声を聞かれてしまったら、ダメなんて言葉は嘘っぽい。
(でも、ダメなのにぃ)
それまで乳房を揉み拉いていた手が、弧を描くように肌を滑り降り、ジーンズのボタンに手が掛かる。いとも簡単に前を寛がせると、長い指先が焦らすように下着の上を行き交い、もどかしくて杏里の手を押さえてしまった。
「ここが良いの?」
制止された場所で、指だけがクレバスの上をなぞる。
しっとりがグチョグチョに変わっていく感触を愉しんでいた指が、強く花芯を圧し潰しながら捏ねてくる。瑠珠の頭の中で光が明滅し、抑制できない快感が腰を襲った。
ビクビク震えながら背中を仰け反らせ、拠り所を求めた彼女の指が強くシーツを握りしめる。
吐息と共に身体をぷるると振るわすと、弛緩した身体がベッドに沈んだ。杏里はそっと顔を上げ、艶を纏った淫猥な瞳で恍惚となった瑠珠を見、艶めかしい微笑みを浮かべた。
「トロトロの顔、可愛いね」
口で呼吸を整える瑠珠の頬にキスを落とし、彼女の服を剥いでいく。
力なくベッドに身を委ね、彼女の晒した裸体を杏里の熱っぽい眼差しが、自身の服を脱ぎ捨てながら、舐るように眺め下ろす。彼に視姦される肌が火照り、ほんのり赤く染まる肌を杏里の指先が戯れに掠めていく。
「ゃ…っ。そんな、見ないで…よ」
杏里と視線が交わるのが恥ずかしくて、瑠珠の両手が潤んだ目元を隠す。彼はそんな彼女の手を頭の脇に縫い付け、唇を啄んだ。
「瑠珠、綺麗だ。……昨夜は、ゆっくり眺める余裕、全然なくて、今もあんまり余裕ないけど」
切なげに眉を寄せ、既にはち切れそうになっている屹立を、彼女の花弁に擦り付ける。切先で花芯を嬲り、ぢゅぷぢゅぷと泡立った厭らしい水音に杏里は身震いすると、上気させた頬を嬉しそうに弛ませた。
「昨夜、俺のが瑠珠のこん中に入って、やっと繋がれたんだよなぁ」
怒ったように青筋を浮かべた淫茎は硬く熱く漲り、愛液を纏ってぬらぬらと光る。その卑猥な光景に脳を冒され、花芯を甚振られる快感に抗うことも出来ず、芳醇な蜜がまたこぽりと溢れた。
杏里は苦し気に溜息を漏らす。
「ホントはこのままナマで瑠珠ン中、堪能したいとこなんだけど…結婚してくんないと困るから、涙を堪えて我慢します」
怯えた目をする瑠珠に苦笑を浮かべ、溜息をひとつ吐く。「どっちに転んでもツライ」と彼女から離れて、枕の下から避妊具を出す。昨日の今日で、装着する手付きは、もうすっかり手慣れたものだ。
(……杏花さん、大事な息子さんを穢してしまいました。本当にごめんなさい)
きっと今頃まだ仕事をしているだろう杏花に、心の中で深々と土下座をする。
と、杏里は心ここに非ずな瑠珠に気が付き、勢いよく脚を持ち上げて大きく開き、愛液でトロトロの蜜口を啜り上げた。
「ひ……っ。や…ぁぁあん」
急に何するのと言いたいのに、口から出て来るのは自分でもどうかと思うような喘ぎ声。暫らくの間、そうやって杏里に啼かされ、達する直前でお預けを食らった。
「俺といるのに何考えてた?」
恨めし気な視線を向ける瑠珠を、不機嫌さを隠しもせずに見返す杏里。瑠珠はヤバ気だと思いつつも、つい「何だっていいでしょ」と目を逸らすと、隘路に突然、指二本を挿し込まれ、「きっつぅ」と反転させながら膣内を暴かれ始めた。
淫壁をグリグリ抉りながら「まさかアイツの事じゃないよな!?」と杏里は嫉妬に顔を歪めると、ひんひん啼く彼女の膣内を攻め、同時に赤く膨れ上がった花芯を嬲り、イキそうになると手を止める。
生理的な涙がボロボロ溢れ、半開きになった口端から涎が流れ落ち、呼吸がままならない瑠珠を執拗に追い立て、昇り詰めた所で彼女を落とす。しんどさに耐えられなくなった瑠珠が、遂に本気で泣き出した。
「……も…やぁ……ぁ、んりぃ……ゃぁ」
子供のように泣きじゃくって、目元をぐしぐし擦る。
まさか瑠珠が泣くと思っていなかった杏里は、慌てて指を引き抜くと、瑠珠を抱き起して「ごめん」と何度も耳元で囁き、落ちつかせようと優しい手で背中を撫で擦る。
「ごめんね。ホントごめん。瑠珠を泣かせたい訳じゃないんだ。アイツがいつも瑠珠の近くに居ると思ったら、取られるんじゃないかって怖くて、どうしようもなく腹が立って、自分がコントロール出来なくなる。俺……もお誰にも、瑠珠を譲りたくない。他の男の隣で笑ってる瑠珠も、泣いてる瑠珠も、見たくない。お願いだから、ずっと、俺から離れないで。俺を…愛して」
切実な想いを吐露し、彼女を抱きしめる杏里から嗚咽が漏れた。
杏里の気持ちを知りながら、いつか他に好きな子が出来るだろうと、敢えて彼を選ぶことをしなかった。
こんなに一心に想いをぶつけてくる彼を、どうして選べなかったのか。
心の奥底に押し込んで、見ない振りしてきた感情。
(だって……)
柔らかで傷つきやすいそこに、杏里はするりと滑り込んでくる。
(だって……だって杏里は年下だし、モデルだし、凄くモテるし、周りに美人いっぱい居るし……あたしじゃなくても、いいじゃん)
瑠珠が可愛い、瑠珠が大好き、と杏里は言うけど、どうしてそれを信じられる?
彼の言葉を鵜呑みにして胡坐を掻けるほど、瑠珠は自分に自信がない。
(どうせ飽きたら捨てられるに決まってる)
杏里がそんな子ではないのを知っていながら、払拭できない思い。
怖いのだ。
大事だから、杏里が他の誰かを選んだ時、喪失感を味わうくらいなら、最初から彼を選択肢から外しておきたかった。
(ただでさえ寝取られ女で価値が底辺這ってるのに、モテメン年下男子に本気になってフラれたら、あたし痛すぎるじゃない)
胸がチックっとする。
逃げている時点で、もう遅いことくらい分かっているけど。
意気地がないばかりに彼を傷付けてしまう。
好きとも嫌いとも言わない。
その時が来たら、自分から離れるために。
狡い女だとの自覚はある。
考えただけで、涙がぼろぼろと零れて来るけれど。
愛してと嗚咽する杏里の背中に手を回し、瑠珠がこの時出来得る限りの思いを篭めて、彼の首筋に口づけを落とした。
***
花頭は翌月も、またその翌月も、瑠珠の頭頂に咲いた。
目立ちたくない瑠珠にピッタリだと言わんばかりに、杏の花が慎ましやかに咲く。周囲にも定着し始め、最初の頃のような騒ぎにはならなくなった。偶に意固地な “瑠珠の 花頭を咲かせた男はどんな奴だ” と話題に上りはするが、空っ惚けている。
初めて花頭が咲いてから数日経った頃、連日の様に杏里に攻められて、疲れのせいで油断している所を高槻に捕まった。
彼の告白から翌日の事だったので、高槻はほんの少し期待をしていたようだったが、変に期待を持たせるほどいい女でもないので、それはもう気持ちが良いくらいきっぱりと否定すると、相手は杏里かと詰め寄られた。しかし瑠珠も『はい。そうです』と認められるほどの自信はやはり無く、ここでも惚けるしかなかったのだが。
四か月目、咲く花が変わった。
杏里は血相を変えて、花判定アプリで花頭の写真を撮ると、ニマニマ笑いながら『素直じゃないんだから』と瑠珠に何度もキスをし、判定結果を彼女に見せた。
白いアザレアの花。
別名西洋ツツジ。もしくはオランダツツジ。
それがどうして “素直じゃない” になるのか、画面を移動して解った。そしてその瞬間、瑠珠の顔が茹ったように真っ赤に染まり、羞恥でぷるぷる震え、涙目で杏里を見ると、幸せで蕩けそうな微笑みを浮かべた彼に抱き締められていた。
逃げるチャンスを逃し、キスを強請る杏里の顔を見る事なんて到底できる訳なく、彼にしがみ付いてその胸に顔を隠してイヤイヤするのが精一杯で。
白いアザレアの花言葉は、“あなたに愛されて幸せ” “充足” だった。
この言葉の裏に果たして意味は有るのか不明だけど、はっきり言って途轍もなく恥ずかしい意味に変換されたのは、何も瑠珠がスケベだからと言うのではなく、これも全ては杏里が『満ち足りてるんだ』とニヤリ笑い『これからももっと愛してあげるからな』とベッドに雪崩れ込んだせいに違いない。
そんな深読みして欲しくなかった。
咲く花が変わったことで、家族にもそれぞれ反応があった。顕著に態度に出たのは、真珠だ。杏里が以前にも況して態度に表すようになったので、真珠もさすがに気付いた。と言う訳で、妹とは関係がギクシャクしている。
職場でも瑠珠の花頭が変わったことで、相手との関係が進展したと話題になり、なんだか生温かい眼差しを頂戴したのが居た堪れない。
女ばかりが感情ダダ漏れなんて、理不尽だと思う今日この頃の瑠珠である。
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