【R18】花頭症候群 ~花盛りの女たちと、翻弄される男たちのあれやこれや

優奎 日伽 (うけい にちか)

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1. 瑠珠 ~枯れ女に花を咲かせましょ

瑠珠 ⑧ 【R18】

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 ***


 杏里のベッドに下ろされ、彼の片足が乗り上げると、マットレスがやんわりと撓む。瑠珠は『良いマットレス遣ってるなぁ』とぼんやり危機感がない事を考えていたが、正面間近に杏里の顔が迫り、現に引き戻された。それと同時に杏里の唇が彼女のそれと重なり、反射なのか本能なのか、薄く開いてしまった唇を割って、彼の熱を持った舌先がぬるりと滑り込んできた。

 歯列の壁を容易に突破し、口蓋をくすぐられて、追い出そうとした舌先を侵入者に捕らえられ、ねっとりと絡め取られる。くちゅっと淫猥な水音が耳に届いて、顔に朱が走った。瑠珠が身体を強ばらせ、舌を引き戻そうとすると、そうはさせまいと吸い取られて甘噛みされる。ぴりっとした痛みからじんわりとした痺れが広がり、頭がクラクラして来た。

 このキスを杏里に教えたのが自分だと聞いて、本当にそうかも知れないと思う。
 キスをする時の瑠珠の癖を知り尽くされているようで、まったく逃げ場がない。逃げ切る前に捕らえられて、官能を引きずり出されて行く。
 こうやって何度、彼と唇を重ねたのだろうか?
 記憶はなくとも、身体が杏里のキスを覚えているらしく、頭では抵抗しないとと思っているのに、身体は快楽の毒に冒され始めている。花芯がきゅんとして、秘所の奥では切ない疼きが生まれた。

(このままじゃ……ダメ。逃げなきゃ)

 両手をシーツに縫い止められ、脚に跨がった杏里を押し退けて、どうやって逃げるか考えている時点で、もう遅いことに気が付いていない。本気で嫌だったら、とっくに形振りなんて構わずに暴れて逃げているだろう。



 快楽を揺り動かす麻薬キス
 抑えきれなくなった疼きに、意図せず膝を擦り合わせると、やっと唇が解放された。どちらからともなく熱を孕んだ吐息が漏れ、口角を持ち上げ、情欲に潤んだ瞳が艶っぽく見下ろしてくる。そしてまた下腹の奥できゅんとした。

「あたし……最低」
「どうして?」

 不思議そうに聞き返され、瑠珠は自嘲めいた笑みを浮かべた。
 逃げなきゃ、そう思っていながら、杏里に引き出された快楽に酔って、紛れもなく感じてしまっている。
 手を押さえ付けられ、上に跨れているからなんて、言い訳にもならない。

「口では杏里拒否ってた癖に、酔っぱらってたとは言え、キス、しまくってるとかって……今だって」
「うん。だから諦めて俺のものになって?」

 しっとりとした熱が額に落ちる。それは鼻先、頬にも落とされ、唇を啄み、耳殻を咥えて、吐息と共に舌先がぬるりと這った。ぞくぞくとした震えが背筋を這い上り、零れた甘やかな吐息。こぽりと溢れて下着を濡らす感触に、羞恥で身体がカッと熱くなった。
 彼女の反応を面白がっている杏里の意地悪な眼差し。
 感じて、身体が欲情している事を気取られたくなくて、瑠珠は咄嗟に口を開いていた。

「あたし、他にも杏里に何か、した?」

 墓穴を掘るかも知れない台詞が口を突き、自分の言葉に蒼褪める。が、しかし。こうなってしまったら、無視もできない。
 酔っぱらっているのをいいことに、杏里を襲って美味しく頂いちゃいました、なんてこと怖すぎる。怖ず怖ずと訊いた彼女と数瞬視線を絡ませ、杏里はふっと目線を横に逸らす。瑠珠は瞠目し、愕然とした面持ちで、整い過ぎた面立ちを赤く染める杏里を凝視した。
 “終わった…” そんなテロップが頭の中にデカデカと浮かんでくる。

(あたし、ダメすぎる)

 年下の、しかもその気がないと言って無碍にしてきた男子高校生を襲うとか、どれだけ欲求不満が溜まっていたのか。
 途方に暮れた顔で杏里を見れば、彼はハッとして真摯に見返してきた。

「大丈夫! 最後までヤってないからッ!」
「ほ、ホントに!?」
「凄く勿体ないことしてるって、毎回思ったけどさ、覚えてないって逃げられるの嫌だし、俺の初めてをそんな思い出にしたくないじゃん」
「だったら何で、目を逸らしたの?」

 疚しくないなら、目逸らす必要などない。
 それとも余程、言い憚ったいことをしでかしていたのだろうかと、不安が頭を擡げた。記憶のない自分の行動が、これほど怖いと思ったことはない。

「杏里? ……ぁっ」

 呼び掛けに応えず、首筋に顔を埋めた。彼のしっとりとした唇が滑り落ちて行く。それまで瑠珠の手を縫い留めていた杏里の左手が、彼女の乳房をやわやわと弄び、服越しから硬く勃ち上がった尖りをキュッと抓む。絶妙な力加減に、ビクッと身体が揺れた。
 最後までしてないと言うだけで、結構際どい事まで杏里に許していたのだろうか。

(……訊くのが怖くなってきた)

 瑠珠が躊躇っている間に杏里の手はTシャツの中に滑り込み、ブラのカップを引き下げて、まろびでた乳房を掌中に収めていた。その手付きは少なくとも昨日今日初めて触りましたと言う感じではなく、的確に瑠珠の感度を上げていく。
 硬くし凝った尖端を指で弾き、「また硬くなった」と嬉しそうな声が耳元でした。くすぐったくてそちらに首を傾ぐと、杏里の柔らかい髪が頬をくすぐって離れて行く。それを寂しいと思ってしまって、ドキッとした。

(ドキッて何!? ちょっと待て、心臓! そんな事、許した覚えないぞ!!)

 許すも許さないもないのだけど、軽くパニックになっている。そして気付いた時には上半身裸になっていて、今まさに下着ごとジーンズを引き下ろされているところだ。

「やーっ。ちょっと待って杏里ッ! この展開、変だから」
「どこが? 俺のものになってって言ったじゃん」

 スポンッ、とスリムジーンズが足首を通過し、これで瑠珠を纏うものが何一つなくなった。杏里はそれを床に投げ捨て、制服のシャツのボタンを外すのも面倒とばかりに、裾をたくし上げて脱ぎ捨てる。ベルトを外す金属音に、血が引いた。

「ダメだって」
「瑠珠うるさい」

 ズボンの前を寛がせ、杏里が軽く睨んで来る。尚も言い募ろうとした瑠珠の唇を塞ぎ、口中を蹂躙する激しいキスと、柔らかな双丘を揉み拉き、尖りを捻られて、鼻から甘い声が漏れてしまった。
 ヤバイ、と思っている瑠珠を見下ろし、どこか不安気な顔の杏里。

「気持ちい?」

 それに答えずそっぽを向くと、拗ねた顔して乳房に吸い付いて来た。チクリとした痛みに、瑠珠は僅かに頭を持ち上げると、顔を上げた杏里と目が合った。彼は満足そうな笑みを浮かべ、

「ずっと付けてみたかったんだよね。キスマーク」
「なっ、何てことしてんのよーッ!」
「いいじゃん。酔っぱらって記憶がない時にしたら、瑠珠がパニックになって一人で悩むと思って、ずっと我慢してたんだから、寧ろ褒めて欲しいね」

 悪びれないどころか得意そうな顔でニコッと笑う。瑠珠は一気に脱力して、頭をバフッと枕に沈めた。

「褒めるところと違うから」

 ボソッと呟く。
 酔っぱらってる時に手出しすんな、と思った後に、手を出したのは自分だったと、押し寄せる後悔。杏里の言っていることが、百パーセント真実とは限らないけど、瑠珠の良い所を知っているくらいには、彼女が許してしまっていたことに間違いない。
 二度と酒は呑むまいと堅く心に誓っていると、杏里の手が彼女の白い肌を妖しげに這い、その淫靡さにざわりと肌が粟だった。



「…ぁ……んっ」

 乳房の頂を口中に含んで転がしながら、肌の感触を愉しむように撫で擦っていた掌が、臀部から腰骨に沿って滑り、拙い指先が柔らかな下生えでゆるゆると蠢く。その度に焦れったさを感じている腰が勝手に揺れ、催促している身体がこの上なく恥ずかしい。
 こぽっと漏れる蜜がクレバスを伝って、シーツに染み込んで行くのを感じ、身体が羞恥で熱くなった。

「ぁ…んりぃ……も、やだ」

 恥ずかしくて限界だ。
 だらしなく漏らしてしまった蜜で、杏里のベッドを汚していると考えただけで、叫び出してこの場から逃げ出したくらいなのに、杏里の指を蜜で溢れ返る花弁へと招き入れようと、浅ましくも揺れる腰。
 もどかしい。
 触れて欲しくて身悶える瑠珠に気付いている筈なのに、杏里は乱れがちな呼吸をやり過ごしていた。胸への愛撫も抑えるのが苦しいとばかりに次第に荒々しくなって、頂きに歯を立てられると、瑠珠は背を弓なりに仰け反らせた。

「ぁっ! ……ぁぁあ…っ」

 ビクンビクンと勝手に打ち震える瑠珠に、容赦ない胸への愛撫を続けたまま、下生えの感触を愉しんでいた指をクレバスに滑らせる。
 杏里の指の動きに合わせて、卑猥な水音がくちゅくちゅと耳を犯す。瑠珠は両手で火を噴きそうな顔を覆い、杏里は嬉しそうに、それでいて意地悪な響きを孕ませた言葉を吐く。

「…すごっ。瑠珠のココ、熱くて、ぬるぬる。気持ち良さそうで、良かった」

 彼女の足を絡め取り、押し付け擦り付ける異質な感触が、彼の情欲だと感じた途端、誤魔化せない瑠珠の中の雌が悦びに震えた。杏里の雄が硬く張り詰め、熱を持って脈打っている。
 コレが欲しいと、雌が訴える。
 これ以上はダメと、頭の片隅で冷静な瑠珠が叫ぶ。
 つぷり、と容易く侵入して来たモノが杏里の指だと悟った瞬間、理性が飛びそうになったのを辛うじて留めた瑠珠の耳に、杏里が苦し気に呟いた声が届いた。

「あっつい。……膣内なかに、挿入りたい」

 その声があまりに切実で、胸がきゅんとなる。

「あんり」

 彼の名を呼び、視線を絡ませた。数秒見詰め合い、杏里は首を振る。だから瑠珠もついつい「しないの?」と訊いてしまった。

(何てこと訊いてんの!? まるでやる気満々じゃん!!)

 とは思うものの、ここまでされてお預けを食ったら、身体が切なくてどうしようもなくなる。自慰行為などでは、きっと奥の疼きは収まらないから。
 杏里はキッと顔を上げ、

「するよッ! するけどっ、がっついて、瑠珠に嫌われたら、二度としないって言われたら、絶望して俺は死ぬ」
「死ぬって、大袈裟な」
「大袈裟じゃない! 俺がこの時をどんなに望んでたか、知らないだろ?」

 強い眼差しが瑠珠を射抜いた。
 目の前にいるのはお隣の少年ではなく、抗いがたい色気を放つ見知らぬ男。
 腰にゾクゾクとした痺れが走り、子宮がきゅうっと収縮する。

(もお……ダメだ。杏里、欲しいかも)

 二度と誰かを好きになる心算はなかったのに、目の前の彼が愛おしいと思ってしまう。
 女は子宮で思考するとは、誰の言葉だったか。
 杏里は彼女の両足を持ち上げて、大きく左右に開かせると、余裕のない顔にぎこちない笑みを張りつかせ、

「まだ大事なトコ、味わってないし」
「ちょ、待って待って! ホントに初心者!?」
「嘘つかないよ。……まあ、黒珠に色々レクチャー受けてるけどね」

 思わぬところで弟の名前が出て、瑠珠からスポンと表情が抜けた。

(黒珠…もしや、姉を杏里に売ってる……?)

 飄々とした弟の顔を思い出し、きっとそうなんだろうと、切なくなった。
 意図せず、瑠珠から乾いた笑いが漏れる。  

「二人仲良いのは良いんだけど、そんな事ばっかり話してるの?」
「知れたこと。健康男子には必須でしょ。もおいいから黙って」
「え…やっ! ちょ……とぉ……んんっ」

 杏里は溢れ返る芳醇な蜜を啜り上げ、挿し込まれた舌先に瑠珠は大きく身体を揺らした。

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