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第十二話
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雨の中で座り込んだ目の前に二人の男と一人の女が立っていた。その中で私の目が捕らえたのは、金髪に青い瞳をしたコートを着た女性だった。
「エミリア!?」
「お姉様!」
五人姉妹の一番下の妹、エミリアだ。エミリアは私のところまでやってくると、雨に濡れた私のことにも構わず抱きしめて、頬に強引にキスをしてくれた。そして私の頬を温かい手で包み込んで、大きな青い瞳を私の姿を映していた。
「ああ、こんなにやつれて可哀そうに。さあ、こちらにいらして」
私の腕を掴んで、立ち上がらせると、その哀愁を含んだ瞳を、キッと鋭くさせて、私を通り越してその後ろを見た。肩にコートをかけられ、エリックに手を置かれていた。
何が何だか私はよくわかっていない。
「貴方!お姉様みたいな、清く正しく美しい女性と結婚しておいて!何!?いくらお父様が決めた結婚相手だって言ったって私は許さないわ!」
「エミリア、少し落ち着きなさい」
エミリアの結婚相手、夫であるオルリン公爵が私の背後からやってきて、エミリアの肩に手を置いた。目の前には怯えるカールと、それでも怖気ずに馬車の中に座っているマリー夫人。
「ここはウチの屋敷です。すこしはなし…」
「オホホ、これから私の誕生日パーティーですの。ビオラの顔を見れてよかったですわ。次は舞踏会でお顔を合わせましょう。オホホホ」
夫人はエリックの首根っこを掴むと馬車の中へ引きずり込んだ。
「ちょっと、お待ちください」
逃げるようにマリー夫人はこの敷地から出て行った。それを見て伸ばした手をグッと握りしめ、エリックは私の方へ向き直った。
エミリアは私の方を見て目を潤ませた。
「もう!なんで私達に教えてくれなかったの!?私達姉妹でしょ!心配したんだから」
エミリアに抱きしめられたままオルリン公爵に促され、屋敷の中へ入った。
屋敷の中に入り、二人で紅茶を飲みながら一息ついていた。しばらくしてカールとマリー夫人が帰っていくようだった。そして二人が屋敷の中へ入ってきた。確かオルリン公爵は私より一つ年上。
「大体の話はエリックから聞いたよビオラ。エミリアがどうしてもすぐに貴方に会いたいって言ってね」
「それは妹が御迷惑をおかけしました」
「いや、いいんだ。エリックの話を聞いて、私も君のことが心配だった」
オリルン公爵はコートをメイドに預け、ソファに座った。二人がやってきても、ずっとエミリアは私に抱き着いたままで、離れなかった。昔から私や私の一つ下のイザベラにくっついて離れなかった。とにかく優しくて、甘え上手な妹。
「私ずっとお姉様のこと心配だったのよ。だってずっと連絡がつかないし、手紙を送っても返事が返ってこないし。返事が返ってきても大丈夫の一点張り。お父様とお母様の結婚記念日だって仕事が忙しくて来れなかったじゃない」
「そうだったわね。ごめんなさい。本当に」
「イザベラお姉様と、アンナお姉様とシャーリーお姉様には私から手紙を出しておいたわ。だって私たちの大切なお姉様の一大事だもの」
一つ下のイザベラは北の方の侯爵家の方に見初められ結婚し、その下のアンナは隣国の貴族と結婚し、シャーリーは貴族ではないけれども、大商人と結婚した。皆子供もいるというのに、大変なことをしてしまった。きっとエリックがエミリアに知らせたのか。
「それで、何があったんだ。ビオラ」
エリックにそう尋ねられて、私は難と説明するか迷った。
「ちょうど一階で鉢合わせて、無理やり連れ帰られそうになった。迷惑をかけて本当にごめんなさい」
「なんで、君が謝ることがあるんだ。君は何も悪くない」
オリルン公爵が優しく笑ってそう言った。エリックはムッとしかめっ面だった。この二人は兄弟だというのに似ていない。
「本当にお姉様、細くなっちゃって、過労死するところだったらしいじゃない?もう本当に頑張り屋さんなのは良いけど、お姉様が死んだら私、私…」
「ああ、ごめんなさい。エミリア。もう二度と馬鹿なことはしないわ」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながらエミリアは私のことを強く抱きしめてきた。
「それになんで頼ってくれなかったの。ウィットビル公爵様が助けてくださらなかったら、どうなっていたか。私、お葬式でお姉様と顔を合わせることになっていたら、フラン家を呪い殺すところだったわ!」
「そういう物騒なことを言っちゃいけないよ。エミリア」
「だって!お姉様は素直で、働き者で、優しくて。ものすごい人たらしなのよ。そこに付け込まれるといつか思っていたわ」
酷い言いよう。まるで私が器用貧乏みたいに。実際そうだったか。反論の余地もない。
「今日は泊まらせてもらうよ。エリック。エミリアはきっとビオラから離れないだろ。アンナと会った時も別れるまで二時間しゃべった」
「別に構わない」
「エミリア!?」
「お姉様!」
五人姉妹の一番下の妹、エミリアだ。エミリアは私のところまでやってくると、雨に濡れた私のことにも構わず抱きしめて、頬に強引にキスをしてくれた。そして私の頬を温かい手で包み込んで、大きな青い瞳を私の姿を映していた。
「ああ、こんなにやつれて可哀そうに。さあ、こちらにいらして」
私の腕を掴んで、立ち上がらせると、その哀愁を含んだ瞳を、キッと鋭くさせて、私を通り越してその後ろを見た。肩にコートをかけられ、エリックに手を置かれていた。
何が何だか私はよくわかっていない。
「貴方!お姉様みたいな、清く正しく美しい女性と結婚しておいて!何!?いくらお父様が決めた結婚相手だって言ったって私は許さないわ!」
「エミリア、少し落ち着きなさい」
エミリアの結婚相手、夫であるオルリン公爵が私の背後からやってきて、エミリアの肩に手を置いた。目の前には怯えるカールと、それでも怖気ずに馬車の中に座っているマリー夫人。
「ここはウチの屋敷です。すこしはなし…」
「オホホ、これから私の誕生日パーティーですの。ビオラの顔を見れてよかったですわ。次は舞踏会でお顔を合わせましょう。オホホホ」
夫人はエリックの首根っこを掴むと馬車の中へ引きずり込んだ。
「ちょっと、お待ちください」
逃げるようにマリー夫人はこの敷地から出て行った。それを見て伸ばした手をグッと握りしめ、エリックは私の方へ向き直った。
エミリアは私の方を見て目を潤ませた。
「もう!なんで私達に教えてくれなかったの!?私達姉妹でしょ!心配したんだから」
エミリアに抱きしめられたままオルリン公爵に促され、屋敷の中へ入った。
屋敷の中に入り、二人で紅茶を飲みながら一息ついていた。しばらくしてカールとマリー夫人が帰っていくようだった。そして二人が屋敷の中へ入ってきた。確かオルリン公爵は私より一つ年上。
「大体の話はエリックから聞いたよビオラ。エミリアがどうしてもすぐに貴方に会いたいって言ってね」
「それは妹が御迷惑をおかけしました」
「いや、いいんだ。エリックの話を聞いて、私も君のことが心配だった」
オリルン公爵はコートをメイドに預け、ソファに座った。二人がやってきても、ずっとエミリアは私に抱き着いたままで、離れなかった。昔から私や私の一つ下のイザベラにくっついて離れなかった。とにかく優しくて、甘え上手な妹。
「私ずっとお姉様のこと心配だったのよ。だってずっと連絡がつかないし、手紙を送っても返事が返ってこないし。返事が返ってきても大丈夫の一点張り。お父様とお母様の結婚記念日だって仕事が忙しくて来れなかったじゃない」
「そうだったわね。ごめんなさい。本当に」
「イザベラお姉様と、アンナお姉様とシャーリーお姉様には私から手紙を出しておいたわ。だって私たちの大切なお姉様の一大事だもの」
一つ下のイザベラは北の方の侯爵家の方に見初められ結婚し、その下のアンナは隣国の貴族と結婚し、シャーリーは貴族ではないけれども、大商人と結婚した。皆子供もいるというのに、大変なことをしてしまった。きっとエリックがエミリアに知らせたのか。
「それで、何があったんだ。ビオラ」
エリックにそう尋ねられて、私は難と説明するか迷った。
「ちょうど一階で鉢合わせて、無理やり連れ帰られそうになった。迷惑をかけて本当にごめんなさい」
「なんで、君が謝ることがあるんだ。君は何も悪くない」
オリルン公爵が優しく笑ってそう言った。エリックはムッとしかめっ面だった。この二人は兄弟だというのに似ていない。
「本当にお姉様、細くなっちゃって、過労死するところだったらしいじゃない?もう本当に頑張り屋さんなのは良いけど、お姉様が死んだら私、私…」
「ああ、ごめんなさい。エミリア。もう二度と馬鹿なことはしないわ」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながらエミリアは私のことを強く抱きしめてきた。
「それになんで頼ってくれなかったの。ウィットビル公爵様が助けてくださらなかったら、どうなっていたか。私、お葬式でお姉様と顔を合わせることになっていたら、フラン家を呪い殺すところだったわ!」
「そういう物騒なことを言っちゃいけないよ。エミリア」
「だって!お姉様は素直で、働き者で、優しくて。ものすごい人たらしなのよ。そこに付け込まれるといつか思っていたわ」
酷い言いよう。まるで私が器用貧乏みたいに。実際そうだったか。反論の余地もない。
「今日は泊まらせてもらうよ。エリック。エミリアはきっとビオラから離れないだろ。アンナと会った時も別れるまで二時間しゃべった」
「別に構わない」
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