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第十三話
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久しぶりに姉妹に会った喜びで私は気兼ねなく話すことが出来た。会話に花が咲き、深夜一時を回った時やっと話に区切りがつき、エミリアは私は用意された客用の部屋へと戻っていった。眠くはなかった。起きていることはあまり難しくはないから。ベッドに横になって、眠れるまで目をつむっていた。
なかなか寝付けずにいると、廊下から足音が聞こえてきた。廊下から足音が聞こえてくるのは日常茶飯事、夜中まで働いているメイドや、今起きたメイド。
特に気にせずに布団の中で目をつむっているとその足音はこの部屋の扉の前で止まった。少しばかり恐怖はあったものの幽霊なんて信じていない。布団を首まで掛けて、もう一度眠ろうとしたとき、静かにゆっくりと、私を起こさないようにと、扉が開いた。扉が開いたときキイとだけ音が鳴った。
部屋に廊下の明かりが差し込み、目がさえた。革靴の足音が私の方へ近づいてきて、誰が私に近づいてきている。起き上がればいいのだけれども、その人は私を起こそうとはしていない。
目をつむり、その人が去るのを待った。
もしかしたら着替えを持ってきたメイドかもしれない。そう仮定してみると、なんだかそういう気しかしてこなくなって、その足音の主はメイドということにした。
でも足音は部屋を徘徊するでもなく、すぐに廊下へ出るでもなく、一直線に私の方へ向かってきて、足音は大きくなっていく。ベッドの横でまた足音が止まり、ベッドに手でも置いたのか、ベッドがきしむ音がして、私自身もベッドへ沈み込んだ。
「ビオラ」
エリック?なんでこんな夜這いみたいなこと。でも今更目を開けても、私はどうしたらいいか分からないし、このまま寝ているふりをしているのが一番なんじゃないの?
そのまま、狸寝入りを決行した。
髪を触られて、頬も触られた。そのまま、唇を触られた。その感触に気を取られていると、唐突に唇に何か柔らかいものが当たった。サラサラとした髪で目元を撫でられ、唇から離れた時、彼は元来た道を戻って行った。先ほどよりも足早にでも扉を閉めるときはとてもゆっくりだった。
扉が閉まった音がして、足音が遠ざかっていくことを確認すると、起き上がり唇を触ってみた。先ほどの感触が残っていた。
エミリアがやってきて数日、私宛に手紙が届いていた。誰からの手紙かと思ったら、マリー夫人からであった。内容は脅しと様々な文句であった。あの大広間は狭すぎた。宮殿で行われる舞踏会と晩餐会で着るカール用のタキシードが届かない。仕事が多すぎる。さっさと帰ってこい。手紙は読んでいる途中でエミリアに取られて、返してもらえなかった。
「一週間後の宮殿での舞踏会まで私ここに泊まらせてもらうことになったの。お姉様たちとはその舞踏会で落ち合うことになったわ」
「色々と迷惑をかけてごめんなさいね」
「別に良いのよ。だって私達、姉妹でしょ。それと私の舞踏会用のドレスを持ってきたから、お姉様の分、丈直ししましょう」
空いていた部屋にキャスター付きのハンガーラックにかかった、大量のドレスが運び込まれてきた。色鮮やかで、様々な種類のドレスだった。Aライン、プリンセスライン、マーメイドライン、エンパイア。数えきれないほどにドレスがあるのに、同じドレスは一つもないようだった。
それとデザイナーも数人共に部屋に入ってきた。
「お姉様は綺麗な黒髪に、青い瞳でしょう?羨ましいわ」
羨ましいものなのかしら。私エミリアはブロンドヘア、それ以外の姉妹は皆、ダークブロンドヘア。父の黒髪をそのまま受け継いだのは私だけ。
「どれがいいかしら」
「ビオラ様は青色の瞳をしていらっしゃいますから、青色のドレスが映えるでしょうね。それに体はとても細くいらっしゃいますから、体のラインが分かりやすいマーメイドラインもエンパイアもお似合いになると思いますよ」
青色のマーメイドラインと、エンパイアをすべて持ってきて、着替えをさせられた。胸元が大きく開いたドレスを着せられて肌寒くなった。それにドレスと肌の間に風が透き通っている。
「これ寒いわ。それにずり落ちてくる」
「それ以上閉められないの?」
「はい、これ以上細くは出来ないですね」
しかめっ面になってエミリアは私のことを見てきた。そして近づいてくると、私の胸とおしりを触ってきた。
「何よ」
「駄目だわ。お姉様今ガリガリだから。いくら細くてもボン、キュ、ボンが映えるのよ。マーメイドとかは。プリンセスラインを着せてみて」
私だって、好きで胸が無いわけじゃないわよ。
そのあといくつものドレスを着せられたけれども、私とエミリアは体のラインが違いすぎて、ウエストを細くしてもらってやっとうまい具合のドレスが出来上がった。
「まあまあじゃない?あとは髪と化粧でどうとでもなるでしょうよ」
「ありがとうエミリア」
「気にしないで。その代わり、しっかりつかんだら離しちゃだめよ」
真剣な眼差しでエミリアに言われた。その理由はもちろん分かってる。エリックのこと離すなってことでしょう?だから舞踏会でアタックしなさい。そう言うこと。
でも相手が何を考えているかよくわからないから、どうすればいいか分からない。
これからお茶でもしましょうかというとき、部屋がノックされ、エミリアが明けるとエリックが立っていた。ドレスだらけになった部屋を見て、怪訝そうな顔をした。
「これはさすがに持ってきすぎだ。エミリア」
「ええ?お姉様がおめかしするためだもの。それといろいろ持ってきたの。お姉様が退屈しないように本でしょ。ボードゲームでしょ」
「ガキみたいなもんばっか、持ってきやがって」
私とはそんな親し気に話をしてくれないくせに。それなのに寝ている私にキスをして。一体何のつもりなの。
私は心が締め付けられるようだった。子供じみて居る考えだってことは分かってる。でも私は彼が何度も離婚していたとしても、私のことをが嫌いでも、好きなんだわ。
「ビオラ、話がある」
「ええ……今行くわ」
なかなか寝付けずにいると、廊下から足音が聞こえてきた。廊下から足音が聞こえてくるのは日常茶飯事、夜中まで働いているメイドや、今起きたメイド。
特に気にせずに布団の中で目をつむっているとその足音はこの部屋の扉の前で止まった。少しばかり恐怖はあったものの幽霊なんて信じていない。布団を首まで掛けて、もう一度眠ろうとしたとき、静かにゆっくりと、私を起こさないようにと、扉が開いた。扉が開いたときキイとだけ音が鳴った。
部屋に廊下の明かりが差し込み、目がさえた。革靴の足音が私の方へ近づいてきて、誰が私に近づいてきている。起き上がればいいのだけれども、その人は私を起こそうとはしていない。
目をつむり、その人が去るのを待った。
もしかしたら着替えを持ってきたメイドかもしれない。そう仮定してみると、なんだかそういう気しかしてこなくなって、その足音の主はメイドということにした。
でも足音は部屋を徘徊するでもなく、すぐに廊下へ出るでもなく、一直線に私の方へ向かってきて、足音は大きくなっていく。ベッドの横でまた足音が止まり、ベッドに手でも置いたのか、ベッドがきしむ音がして、私自身もベッドへ沈み込んだ。
「ビオラ」
エリック?なんでこんな夜這いみたいなこと。でも今更目を開けても、私はどうしたらいいか分からないし、このまま寝ているふりをしているのが一番なんじゃないの?
そのまま、狸寝入りを決行した。
髪を触られて、頬も触られた。そのまま、唇を触られた。その感触に気を取られていると、唐突に唇に何か柔らかいものが当たった。サラサラとした髪で目元を撫でられ、唇から離れた時、彼は元来た道を戻って行った。先ほどよりも足早にでも扉を閉めるときはとてもゆっくりだった。
扉が閉まった音がして、足音が遠ざかっていくことを確認すると、起き上がり唇を触ってみた。先ほどの感触が残っていた。
エミリアがやってきて数日、私宛に手紙が届いていた。誰からの手紙かと思ったら、マリー夫人からであった。内容は脅しと様々な文句であった。あの大広間は狭すぎた。宮殿で行われる舞踏会と晩餐会で着るカール用のタキシードが届かない。仕事が多すぎる。さっさと帰ってこい。手紙は読んでいる途中でエミリアに取られて、返してもらえなかった。
「一週間後の宮殿での舞踏会まで私ここに泊まらせてもらうことになったの。お姉様たちとはその舞踏会で落ち合うことになったわ」
「色々と迷惑をかけてごめんなさいね」
「別に良いのよ。だって私達、姉妹でしょ。それと私の舞踏会用のドレスを持ってきたから、お姉様の分、丈直ししましょう」
空いていた部屋にキャスター付きのハンガーラックにかかった、大量のドレスが運び込まれてきた。色鮮やかで、様々な種類のドレスだった。Aライン、プリンセスライン、マーメイドライン、エンパイア。数えきれないほどにドレスがあるのに、同じドレスは一つもないようだった。
それとデザイナーも数人共に部屋に入ってきた。
「お姉様は綺麗な黒髪に、青い瞳でしょう?羨ましいわ」
羨ましいものなのかしら。私エミリアはブロンドヘア、それ以外の姉妹は皆、ダークブロンドヘア。父の黒髪をそのまま受け継いだのは私だけ。
「どれがいいかしら」
「ビオラ様は青色の瞳をしていらっしゃいますから、青色のドレスが映えるでしょうね。それに体はとても細くいらっしゃいますから、体のラインが分かりやすいマーメイドラインもエンパイアもお似合いになると思いますよ」
青色のマーメイドラインと、エンパイアをすべて持ってきて、着替えをさせられた。胸元が大きく開いたドレスを着せられて肌寒くなった。それにドレスと肌の間に風が透き通っている。
「これ寒いわ。それにずり落ちてくる」
「それ以上閉められないの?」
「はい、これ以上細くは出来ないですね」
しかめっ面になってエミリアは私のことを見てきた。そして近づいてくると、私の胸とおしりを触ってきた。
「何よ」
「駄目だわ。お姉様今ガリガリだから。いくら細くてもボン、キュ、ボンが映えるのよ。マーメイドとかは。プリンセスラインを着せてみて」
私だって、好きで胸が無いわけじゃないわよ。
そのあといくつものドレスを着せられたけれども、私とエミリアは体のラインが違いすぎて、ウエストを細くしてもらってやっとうまい具合のドレスが出来上がった。
「まあまあじゃない?あとは髪と化粧でどうとでもなるでしょうよ」
「ありがとうエミリア」
「気にしないで。その代わり、しっかりつかんだら離しちゃだめよ」
真剣な眼差しでエミリアに言われた。その理由はもちろん分かってる。エリックのこと離すなってことでしょう?だから舞踏会でアタックしなさい。そう言うこと。
でも相手が何を考えているかよくわからないから、どうすればいいか分からない。
これからお茶でもしましょうかというとき、部屋がノックされ、エミリアが明けるとエリックが立っていた。ドレスだらけになった部屋を見て、怪訝そうな顔をした。
「これはさすがに持ってきすぎだ。エミリア」
「ええ?お姉様がおめかしするためだもの。それといろいろ持ってきたの。お姉様が退屈しないように本でしょ。ボードゲームでしょ」
「ガキみたいなもんばっか、持ってきやがって」
私とはそんな親し気に話をしてくれないくせに。それなのに寝ている私にキスをして。一体何のつもりなの。
私は心が締め付けられるようだった。子供じみて居る考えだってことは分かってる。でも私は彼が何度も離婚していたとしても、私のことをが嫌いでも、好きなんだわ。
「ビオラ、話がある」
「ええ……今行くわ」
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