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第三話
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いつもの作業のようにエリック・テイラーという男からの手紙を開封して、読み終わると、引き出しの中へ入れた。
離れに住んでいる女性の名前はミーナというらしい。フィリップ領で生まれて、育って、でも農業をできるほどに体力が無く、薬もまともに買うことが出来なかったらしい。
美人な上に、体が弱い、それを見たカールが可哀そうに思いここに置き生活をさせた。
「ビオラ、製糸工場を作らない?」
働きづめで頭が痛いまま「なぜ?」と聞いた。カールは顔色がよく、肌艶もよく、女の私なんかより良い生活をしているらしい。
「病弱な人だって、そこでなら働けると思うんだ」
「駄目よ。今はそんなことできない。穀物の研究が良いところなの。あとちょっとで前より品質のいい小麦を作れる。それに工場なら製粉工場があるわ」
「せめて、障害のある人とか、病弱の人への支援を手厚くしない?」
このフィリップ領は元々支援が手厚い。教育にもかなりお金をかけているし、孤児院、教会、病院への経営にも力を貸している。
これ以上お金をかけようとすれば様々なところにお金がかけられなくなる。もし失敗した最悪の場合、領民へ加税せざる終えなくなってしまうかもしれない。それと、なぜ障害者、または病人を働かせようとするのか。
「もうすでに支援は多くしているの。これ以上手を回すとなったら、貿易や将来にかかわる」
「それぐらいで将来って少し強引じゃない?」
その言葉にイラつくこともなくなった。確かにカールは仕事はできるけれども、それはマルチタスクに関して。経営的な才能は皆無。
それに今は恋煩いでミーナさんに心を囚われている。きっと今は正常な判断が出来なくなっているのだ。
昼休憩になると、カールは離れへ直行した。その間私はサンドイッチを紅茶で流し込みながら、これから王都へ提出しなければいけない種類を完成させなければならない。
過労のせいか、見直しても見直してもミスばかりある。経営者は労働者に対して、国が定める以上の仕事をさせてはいけないけれども、経営者や貴族は適用外。どれだけ仕事をしてもいい代わりに、法ではそういう人たちのことを守ってはくれない。
落ち着かなければいけないのは分かっているけれども、これから年末にかけて仕事が忙しくなる。次の年が始まる前に、片づければいけない仕事が山になっている。とにかくカールに行ってもらわなければならないけれども、ミーナさんのところへすぐ逃げるだろう。
あそこの入られては、私は近づくことが出来ない。あの離れの周りはカールが雇った私兵で固められており、私が立ち入ろうとしようとすれば、締め出される。
ここでは仕事に集中できないと、書類を持っていってくれた時は安心もしたけれども、次の日確認してみれば待った仕事が進んでいない上に、数枚の書類を紛失していた。あれから仕事を離れへは持ち込まないように言った。やめてくれたのは良かったが、根本的な問題が解決していない。
もうこうなったらミーナさんをせめて離れた別邸へ送るか、病院へ送るかしなければ。そうでないとこっちが壊れてしまう。
一応カールも伯爵家なので、会談や、会食がある。それも私が出席しない物も。その時をみはからい、私は離れへ向かった。カールに話が通じないなら、愛人に話をつけてしまえば良い。
それに頭がもう回らずに、それ以外の考えが浮かんでこない。
屋敷を出た時、庭で日の光を浴びるそのミーナさんを見つけた。白色のワンピースを着て、植えられている花を眺めていた。
私とは正反対。私は身長が高く、黒髪、ミーナさんの方が何倍も美人なことは分かっている。私が唯一ミーナさんに勝てるのはきっと生まれた家柄ぐらい。私は昔から自分にコンプレックスを持っているから。珍しい黒髪に、高い身長。
それがひどく嫌だった。
彼女の背後に近寄り、私は人呼吸した。
「ミーナさんでいらっしゃいますか?」
彼女は振り向くと、妹たちのように整った顔立ちをしていた。そして私を見るなり目を丸くして、後ずさりした。
「私は貴方のことを追いだそうとしているわけではありません。危害を加える気もありません。少しだけ話をさせていただけませんか」
とにかく心を落ち着かせて、話したためにミーナさんも分かってくれたらしい。
「わ、分かりました」
離れに住んでいる女性の名前はミーナというらしい。フィリップ領で生まれて、育って、でも農業をできるほどに体力が無く、薬もまともに買うことが出来なかったらしい。
美人な上に、体が弱い、それを見たカールが可哀そうに思いここに置き生活をさせた。
「ビオラ、製糸工場を作らない?」
働きづめで頭が痛いまま「なぜ?」と聞いた。カールは顔色がよく、肌艶もよく、女の私なんかより良い生活をしているらしい。
「病弱な人だって、そこでなら働けると思うんだ」
「駄目よ。今はそんなことできない。穀物の研究が良いところなの。あとちょっとで前より品質のいい小麦を作れる。それに工場なら製粉工場があるわ」
「せめて、障害のある人とか、病弱の人への支援を手厚くしない?」
このフィリップ領は元々支援が手厚い。教育にもかなりお金をかけているし、孤児院、教会、病院への経営にも力を貸している。
これ以上お金をかけようとすれば様々なところにお金がかけられなくなる。もし失敗した最悪の場合、領民へ加税せざる終えなくなってしまうかもしれない。それと、なぜ障害者、または病人を働かせようとするのか。
「もうすでに支援は多くしているの。これ以上手を回すとなったら、貿易や将来にかかわる」
「それぐらいで将来って少し強引じゃない?」
その言葉にイラつくこともなくなった。確かにカールは仕事はできるけれども、それはマルチタスクに関して。経営的な才能は皆無。
それに今は恋煩いでミーナさんに心を囚われている。きっと今は正常な判断が出来なくなっているのだ。
昼休憩になると、カールは離れへ直行した。その間私はサンドイッチを紅茶で流し込みながら、これから王都へ提出しなければいけない種類を完成させなければならない。
過労のせいか、見直しても見直してもミスばかりある。経営者は労働者に対して、国が定める以上の仕事をさせてはいけないけれども、経営者や貴族は適用外。どれだけ仕事をしてもいい代わりに、法ではそういう人たちのことを守ってはくれない。
落ち着かなければいけないのは分かっているけれども、これから年末にかけて仕事が忙しくなる。次の年が始まる前に、片づければいけない仕事が山になっている。とにかくカールに行ってもらわなければならないけれども、ミーナさんのところへすぐ逃げるだろう。
あそこの入られては、私は近づくことが出来ない。あの離れの周りはカールが雇った私兵で固められており、私が立ち入ろうとしようとすれば、締め出される。
ここでは仕事に集中できないと、書類を持っていってくれた時は安心もしたけれども、次の日確認してみれば待った仕事が進んでいない上に、数枚の書類を紛失していた。あれから仕事を離れへは持ち込まないように言った。やめてくれたのは良かったが、根本的な問題が解決していない。
もうこうなったらミーナさんをせめて離れた別邸へ送るか、病院へ送るかしなければ。そうでないとこっちが壊れてしまう。
一応カールも伯爵家なので、会談や、会食がある。それも私が出席しない物も。その時をみはからい、私は離れへ向かった。カールに話が通じないなら、愛人に話をつけてしまえば良い。
それに頭がもう回らずに、それ以外の考えが浮かんでこない。
屋敷を出た時、庭で日の光を浴びるそのミーナさんを見つけた。白色のワンピースを着て、植えられている花を眺めていた。
私とは正反対。私は身長が高く、黒髪、ミーナさんの方が何倍も美人なことは分かっている。私が唯一ミーナさんに勝てるのはきっと生まれた家柄ぐらい。私は昔から自分にコンプレックスを持っているから。珍しい黒髪に、高い身長。
それがひどく嫌だった。
彼女の背後に近寄り、私は人呼吸した。
「ミーナさんでいらっしゃいますか?」
彼女は振り向くと、妹たちのように整った顔立ちをしていた。そして私を見るなり目を丸くして、後ずさりした。
「私は貴方のことを追いだそうとしているわけではありません。危害を加える気もありません。少しだけ話をさせていただけませんか」
とにかく心を落ち着かせて、話したためにミーナさんも分かってくれたらしい。
「わ、分かりました」
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