傷物にされた私は幸せを掴む

４

「お母様、何言っているの」
「顔にそんな傷がある者を、大切なつながりのあるテイラー家と結婚させられるわけ無いでしょう」


私は今にもミアに殴りかかりたいのを我慢して、舌唇を噛んだ。


「ルイス様も、それでいいとおっしゃっておられるし、やっぱり傷物と結婚はできないそうよ」


ミアはにやにやとした嫌な笑みを私に向けてきた。私はとにかく流れ出そうな涙をこらえていた。時間は戻せない。どうすることも出来ない。


「それでエミリア、貴方は男爵家のウォルト・ベル様との結婚を決めておいたから」
「…そんな、せめて自分で結婚相手を探させてください」
「そんなの見つかるわけないだろ」


たしかに、確かに見つかるわけない。どこの誰がこんな右目の見えない女と結婚したがるのか。それでも、ここに一状いて、ミアにいじめられるなんて絶対に嫌。
私はベッドの上で正座をして、頭を下げた。


「どうか、結婚相手は自分で探させていただけませんか…一人で探せますから…絶対に見つけてまいります」



両親はやけにすんなりと、私が結婚相手を探すことを承諾してくれた。きっと両親が嫌いな私が土下座をして、頭を下げたから、優越感に浸って承諾したのだろう。




「リル先生、どうすればいいと思いますか？私に結婚相手なんて見つけられるわけないのに」


私は週に一度やってくるリル先生に相談していた。リル先生はいろんな人と関りがあるそうだから、力になってくれるかもしれないと相談していた。


「確かに君はこの家から、出た方が良い。でも貴族だから、家を出るにも色々納得がいく理由がいる。その上女性は留学へ行くことも出来ないし、結婚以外で家を出ることは中々許されれるものじゃない」
「私、なんでもいいんです。この家から出られるなら、なんだっていたします。医者になって家から出れるなら、そうしたいです。勉強は得意ですから」
「なら、家庭教師とか」
「家庭教師ですか？」


家庭教師は貴族の中でも位の高い人しか、雇わない。けれども、家庭教師は何でもできなければいけない。だから、なることが難しい。


「でも、先生、礼儀作法や、社交ダンス、それと音楽、芸術。それから、歴史に外国語に、いろんなことを勉強しなければ、いけないと聞いたことがあります。私が得意なこと言ったら、外国語ぐらいで、母国語に、リビア語に、フレディア語が少しできるぐらい。普通の勉強はそれなりにできますけれど、完璧でないですから、家庭教師にはなれないと思います」


私がそういうと、リル先生は驚いていた。


「三か国語も話せるのかい？」
「母がリビア国から来たので、母は今こそ、この国の言葉で話していますけれど、数年前までは私やミアと話すときにリビア語で話していました。フレディア語はメイドから。メイドにフレディア国出身の者がいて、お菓子をあげる代わりに教えてもらっていたんです」
「三か国語も話せれば十分だよ。それと芸術と音楽はできなくても大丈夫なんだよ。社交ダンスや礼儀作法は完璧でなければいけないけれども。僕の知人の中や、患者さんの中から家庭教師を探している人がいないか、探してみるよ」
「本当ですか！ありがとうございます！」





それから一週間経って、手紙が届いた。そこにはジャック・ビズマークと書かれていた。


「公爵家じゃない…」