2 / 10
黒い過保護
しおりを挟む
「先輩、めっちゃ見られてましたよ。やっぱり外食やめましょうよー…」
「年中発情期だと思ってる輩は年中あんな目で見てくるけどね」
キーマカレーとナンをたらふく楽しみ、気分良く会社に戻る道中、浄が情けない声で懇願してくる。
兎族の発情はフェロモンを発して相手を発情させ、その相手から精を得ることで発情を一時的に治める。
それ故合意無しに交合することも可能で、節操のない種族という認識が定着しているのだ。
兎族同士での繁殖を続けてきた純血種ならかなり早い周期で発情することが可能だが、俺は何代も続く異種族との交配により、一定周期で発情期が来る。
それでも軽蔑と欲情の目線を浴び続け、何も思わなくなってどのくらいだろうか。
「そうなんですね…。会社でそーゆう目を向けてくる人って居ますか?」
浄が心配そうに、だがどことなく別の意図を含みながら話しているように感じて、当たり障りない回答を考える。
「打農部長とかかな。あの人って根っからの兎嫌いだから」
浄が手出しできない役職に居て、なおかつ社内でも有名な兎嫌いとなると、権力に生きる化石爺が適任だろう。あの部長は兎族と同じ空間に居るのも嫌がるから、エレベーターで一緒に乗ろうものなら根も葉もない兎族の悪口で追い立ててくる。お陰ですっかりエレベーターに寄りつかなくなってしまった。
「あー居ましたね、禿げ散らかしたデバネズミ。ド派手に差別発言するのになんで首切られないんだろうって不思議だったんですけど、我が社のヒット商品の生みの親だからなんでしょう?」
「正確な理由は分からないけど、まぁそうだと思うよ。そろそろ定年だから耐えようってつもりかもしれない」
「面倒ですねー」
暗い内容に似合わない爽やかな笑い声を上げて、俺の手をとる。
「罵声に凛と立ち向かう葉梨先輩の姿、綺麗で好きですよ」
光り輝く笑顔とウィンクのコンボを受けてときめかない人なんて居るのだろうか。気絶しそうなのを必死に堪えて強気を貫く自分を好きだと言ってくれることが、こんなに嬉しいものだとは。
「かっこいい、って言って」
浄の額にデコピンしてそっぽを向く。
そうしないと、火照った頬に気付かれてしまうから。
「年中発情期だと思ってる輩は年中あんな目で見てくるけどね」
キーマカレーとナンをたらふく楽しみ、気分良く会社に戻る道中、浄が情けない声で懇願してくる。
兎族の発情はフェロモンを発して相手を発情させ、その相手から精を得ることで発情を一時的に治める。
それ故合意無しに交合することも可能で、節操のない種族という認識が定着しているのだ。
兎族同士での繁殖を続けてきた純血種ならかなり早い周期で発情することが可能だが、俺は何代も続く異種族との交配により、一定周期で発情期が来る。
それでも軽蔑と欲情の目線を浴び続け、何も思わなくなってどのくらいだろうか。
「そうなんですね…。会社でそーゆう目を向けてくる人って居ますか?」
浄が心配そうに、だがどことなく別の意図を含みながら話しているように感じて、当たり障りない回答を考える。
「打農部長とかかな。あの人って根っからの兎嫌いだから」
浄が手出しできない役職に居て、なおかつ社内でも有名な兎嫌いとなると、権力に生きる化石爺が適任だろう。あの部長は兎族と同じ空間に居るのも嫌がるから、エレベーターで一緒に乗ろうものなら根も葉もない兎族の悪口で追い立ててくる。お陰ですっかりエレベーターに寄りつかなくなってしまった。
「あー居ましたね、禿げ散らかしたデバネズミ。ド派手に差別発言するのになんで首切られないんだろうって不思議だったんですけど、我が社のヒット商品の生みの親だからなんでしょう?」
「正確な理由は分からないけど、まぁそうだと思うよ。そろそろ定年だから耐えようってつもりかもしれない」
「面倒ですねー」
暗い内容に似合わない爽やかな笑い声を上げて、俺の手をとる。
「罵声に凛と立ち向かう葉梨先輩の姿、綺麗で好きですよ」
光り輝く笑顔とウィンクのコンボを受けてときめかない人なんて居るのだろうか。気絶しそうなのを必死に堪えて強気を貫く自分を好きだと言ってくれることが、こんなに嬉しいものだとは。
「かっこいい、って言って」
浄の額にデコピンしてそっぽを向く。
そうしないと、火照った頬に気付かれてしまうから。
10
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説



獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

率先して自宅警備員してたら宅配業者に両思い判定されてた話
西を向いたらね
BL
[配達員×実家暮らしニート]
・高梨悠斗 (受け)
実家住みのニート。常に家にいるため、荷物の受け取りはお手の物。
・水嶋涼 (攻め)
宅急便の配達員。いつ荷物を届けても必ず出てくれる受けに対して、「もしかして俺のこと好きなのでは…?」となり、そのままズルズル受けの事が好きになる。
反応がよければ攻め視点も書きます。
「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩
ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。
※現在、加筆修正中です。投稿当日と比較して内容に改変がありますが、ご了承ください。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる