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青髭

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キャンプって楽しい!特にキャンプファイヤーは老若男女問わず騒いじゃう!ヽ(・∀・)ノ

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 深夜の出来事だ。
 何時もなら静寂に沈んでいる森から人為的な音が鳴り響いたのだ。
 金属と金属がぶつかる音、小枝が踏みつけられ枝が折られる音。
 それは次第に大きくなっていく。
 森から出てくるのは様々な鎧を着込んだ人、人、人だ。
 月明かりに照らされて先頭に立つ男の姿があらわになる。

 黒い髪に黒い瞳、髪の長さは短めで耳や眉毛辺りまでで切られている。
 しかし手入れされているというわけではなくそのままなのだ。汗のせいか髪は自然に塊整っているように見えるのだ。
 遠目から見れば様になっている程だ。
 容姿も整っている方でスタイルもスラっとしていてさぞ女性にモテることだろう。
 
 男の周囲には仲間と思われる者達が立っていた。先程言ったとおり様々な鎧を着ている。
 革の鎧、鉄の鎧、フルプレートに果てには騎士甲冑である。ただ一つ、先頭の男は異色だった。
 黒いV字のシャツに腰より5センチ程離れた黒の武将羽織。
 黒いズボン。手の甲から肘にかけての篭手と足首から膝にかけての脛当てまでもが黒である。
 無論靴等も黒一色である。腰にかけてある刀と思われる武器だけが赤と黒の二色ずつあった。

 最初に言っておくが彼はアサシンでは無い。
 必要とあれば暗殺もするだろうが基本的には違うのである。
 
 彼らの前には静まり返る小さな村があった。

「頭、ここですかい?」
「そうだ」

 確認とそれに対する返答を聞き周りの男たちが不敵に笑う。
 そう、彼らは盗賊だ。傭兵業を営む合間の盗賊である。
 そのリーダーがこの黒髪の男なのだ。
 名前を一久行にのまえひさゆき。異世界からこの世界へと転移してきた日本人だ。

 久行は懐から変わった御面を取り出した。それは顔全体を覆う面頬である。
 髭は付いていないが代わりに二本の鋭い牙が付いていた。
 その面を付けると不思議なことに紐などで結んでもいないのにぴったりと固定されたのだ。
 そしてその面から伸びるように段違いに後頭部を覆っていく、そして異形の角が兜の両側から突き出した。
 真横に数センチ伸び、そこから直角に折れ曲がって15センチ程伸びる。
 変化はそれだけにとどまらない。
 久行の目が紅く怪しく光る。体勢も少し前傾姿勢で獣感があった。
 
 そんな様子を見ても周りの男たちは驚いたりせず逆にニヤつく一方だ。
 そして号令が一言。

「行くぞ」

 異世界に現れた黒鬼が死刑宣告を下す。


――
―――。

 その村の名前はニース、大陸の右端にあるスーゼンベルトという王国内にあるどこにでもある至って普通の村だ。
 村人たちは農業をして生計を立てて暮らしておりそれを税として国に収めている本当に普通の村なのだ。
 ただ、その日はたまたま運が悪かっただけなのだ。

 村長の家は村の奥にあった。ごく普通の家でごく普通の家族である。
 歳は40とまだまだ若いのには負ける気はない。
 家族は妻と息子と娘の4人暮らし。
 妻は36、息子は16、娘は10だ。
 なんとも幸せな家族である。
 
 その日も仕事をこなしてから就寝した。
 普段ならそれで終わり、次の日が来るのを待つだけだ。
 しかし、その日は違った。真夜中に扉を叩く音が聞こえたのだ。
 重い瞼を持ち上げて村長は扉の前に立った。
 こんな夜中になんだというのだ。
 緊急にしては落ち着いたノックだったので不思議に思いながらも村長は扉に手をかけた。

「へ?」

 不思議なことにそこには私の手は無かった。先程まで有ったはずなのに今は無いのだ。
 寝ぼけているのかと持ち上げてみればあかいあかいちがどばどばと…。

「ぎぎゃ…!?」

 叫ぼうとした頃には既に村長の頭は宙を舞っていた。
 石が地面に落ちたようなボトンとした音で他の家族が目を覚ました。

「あなた誰か来たの?」

 愛しの妻の問いに答えるものは無く代わりに扉が軋みながらゆっくりと開かれた。
 月明かりを背景にソレは現れた。
 黒い鬼である。
 そして気づいてしまった。開かれたことにより明かりが入り頭と右手が無くなった夫の体が力なく崩れている様を。

「きゃああ…!?」

 それが合図だった。
 虐殺の合図だった。
 女の顔目掛けての渾身の右正拳突き。
 あまりの速さに顔面はひしゃげ、後頭部を貫通した。

「母さぁぁぁぁん!!」

 息子が叫ぶ、恐怖に顔を歪めて。
 久行が拳を引き抜いて息子の方を向くと健気にも妹の目と耳を両腕で覆い、見せないように。
 だが、そんな努力も虚しく妹の頭から兄の腕が解かれる。

「お兄ちゃんどうした…の…?」

 見上げた兄はこちらを向いていなかった。
 体はこちらを向いているのに顔だけは壁を向いているのだ。
 妹は兄の首が捻れている事に気がついた。

 そしてその頭部には兄の頭を鷲掴む手。
 妹は生気の薄れた目で手の持ち主を見た。
 黒い鬼。

「そんな目で俺を見るなよ」

 黒い鬼は、久行は多少イラついた様に吐き捨てると空いている左手の人差し指と中指を真っ直ぐにして娘の眼球へ突き刺した。
 ぐちゅりと眼球が潰れて中の水分が流れる感覚が伝わる。
 
「いやああああああああああああああああああああああああ!!」

 つんざく悲鳴に思わず耳を塞ぐ。
 それが引き金となり他の村人が目を覚ましてしまった。

「チッ、やっちまった。お前らぁ、おっぱじめろ!」

 久行は溜息をつきながら泣き叫ぶ娘の髪を掴んで家から引きずり出す。
 娘の弱々しい抵抗など意に介さず。久行は辺りを見渡した。
 扉は蹴破られ至る所から悲鳴が怒声が響く。
 久行にとって予想外だったのは村人が思いのほか抵抗を見せたことだった。
 曲がりなりにも久行は事前に各家々に手下を配置していたのだ。
 故に逃げ惑う村人を見て驚いていたのだ。
 家から出てきた村人達はこちらに気が付くと一瞬怯え怯むが手に掴んでいる少女を見て怒りをあらわにする。

「なんて酷いことを!」

 そんな声など久行には響かず僅かに視線を少女に移すだけだった。

「そう?」
「ッ!?」

 そう返事をすると村人は絶句した。
 まるで化物でも見るかのように。
 非道い話である。

 と、久行は先程考えていた失態に思い当たった。
 今回の失敗は俺が原因であると。
 その答えは手に持っている少女だ。
 泣き叫ぶのを許したせいで数秒であるが他の村人に緊急であると構える猶予を与えてしまったのだ。
 がっくりと久行は肩を落とす。
 
 が、次の瞬間には開き直ることにした。
 よし、とっとと済ませて帰ろう!
 手始めに騒ぎに乗じて逃げられないようにしなければ。
 どうせ殺すなら縁者から末代まで全てである。

「ガムル・ドゥーダ・ヨゥン」

 久行がそう口にした途端村を覆い尽くす炎の壁が現れた。

「ま、魔術だと…」

 村人の誰かがそう呟いた。
 久行は同じものを自身の目の前にも一つ細長く作った。

「誰か」
「へい、なんでしょう?」
「こん中ちょっと入って」
「了解しやした!」

 手下はなんの躊躇いもなく火柱へと入る。
 一瞬だけ見ていた村人は目を瞑るが悲鳴が聞こえないので見直した。
 そこには何度も行ったり来たりする手下の姿があった。
 挙句に火柱に体だけ残して手と足をブラブラとして踊っていた。

「は…はは…」

 こんな状況でなければ普通に笑っていたかもしれないが今のこの状況では渇いた笑いしかおきない。
 この火は人には無害と言いたいのだろうか?
 村人達はそんなことを考える。現に黒鬼の手下は平気なのだ。
 と、おもむろに黒鬼は持っていた少女を火柱の中で踊っている手下に投げ渡した。
 今度は何をと思ったが次に起きたのは至極簡単だった。
 少女が焼けているのだ。
 もがき、暴れ、必死になって手下の腕から、火柱から抜け出ようとする少女。
 
「や、やめてくれ!」

 老人が訴える。

「なぜこんなことをするんじゃ!?目的はなんなんじゃ!?金か?女か?わしらが何をしたと言うんじゃ!!」

 杖を黒鬼に突き立てながら叫ぶ。

「知りたいか?」

 気づけば老人の目前にまで久行は迫っていた。

「う、ぐ、こふ…」
「これが答えだ、俺たちは命を所望する。他は特にいらない」

 老人の胸からは赤い刀が生えていた。
 それが心臓を一突き、久行は刀を抜き取ると血を払った。
 最も、元が元なので血が払われたのか払われていないのかは目視ではわからない。

「さてお前ら、仕事は順調か!?」

 そう聞くと村の至る所からおおと唸り声が響いた。

「結構結構」

 火柱から手下が出てくる。
 その腕には既に少女の姿はない。
 きっと燃え尽きたのだろう。
 久行は今一度地獄絵図の様になったニース村を見渡す。

「ふわぁ~ねむ…」

 久行は欠伸をした。
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