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第二十二話

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「申し訳ありません、悪役令嬢とは何でしょうか?」

「そのまんまですね、悪役になる令嬢」

「その……まるで物語の中のようですわね」

ここは、現実のはずなのですが、彼女の中では物語の中なのでしょうか。確かに、以前の生活と全然違いますし、わたくしも子供のころは物語の中のようだとも思いましたけどこの年齢になれば現実として受け止めないでしょうか? それとも家族に虐待されていたから現実を見るようになってしまっただけなのでしょうか?

「マリー様も『薔薇証』やってました?!」

クリスティーナ様は、急にグイグイ来られました。ちょっと、顔が近いですわ!

「も、申し訳ありません。存じませんの……」

「そうですか、残念です」

『薔薇証』とは、正式名称が『薔薇園で愛の証を』という恋愛趣味レーションゲームだそうです。わたくし、ゲームはほとんどしたことがありませんので存じません。
クリスティーナ様が言うには、そのゲームの世界と現実がとても似通っているそうです。学園の名称も同じでしたし、小さなころクリスティーナ様が経験した出来事もゲームのオープニングと場所もシチュエーションもそのまま同じなのだそうです。

クリスティーナ様が主人公で、4人の男性と愛を育むのだそうです。

「その……4股というのはあまりにも……」

「大丈夫です! このゲームにハーレムルートはないので!」

ハーレムルートとは全ての男性と恋仲になってみんな幸せという結末だそうです。物語としては良いでしょうけど、現実にそんな女性がいたら支持されるのでしょうか? 誰の子か分からないなんて、絶対に認められませんわよね。

それに、この国は基本的に一夫一妻です。王族だけは、跡継ぎの関係で側妃が認められていますが、現国王もセドリックも弟君も側妃という制度自体を嫌っています。廃止したいと常々仰っていますわ。なかなか難しいですけどね。貴族は愛人を持つ人も多いですが、産んだ子は基本的に跡継ぎとは認められません。妻に子がいない、または子があまりに跡継ぎに向かない場合のみ認められます。

そんな国で、ハーレム……。批判の的になる事うけあいですね。ハーレムルートとやらがなくて良かったです。

「それでですね、攻略対象は4人いるんですけど、王子が二人と、宰相の息子、騎士団長の息子です」

王子が……2人? この国の王子は2人だけです。

「セドリックも……対象ですか?」

わたくしは思わず、低い声でクリスティーナ様に問いかけます。

「マリー様! 怖いです! 大丈夫です、私セドリック様に興味ありません。あれだけマリー様を探していて、見つかったら溺愛してるのにそこに割り込めるわけないです。前世から夫婦なんて、どこに割り込む余地があるんですか! 私だって、国がめちゃくちゃにならないならこんなこと話しませんよ! 痛い子だって思われますもん! でも、死にたくないんです!」
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