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37.エドガーの自信

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「トム、お手柄だね」

「いや……これは俺の手柄じゃありません。裁定者でしょう」

「だよね。君がうぬぼれてなくて良かったよ。今まで見つからなかったのは、裁定者があの子を閉じ込めていたってことだよね?」

「そうだと思います。裁定者は女性のようですね」

「一人とは限らないけどね。美しいお嬢様って言われてもさっぱり分からない。城に何人美しい女性がいると思っているのだか。あ、でもこれでミランダは裁定者じゃないと分かった。今彼女は城にいないものね。良かったね、トム」

「ミランダを疑っていたのですか?」

「うん。そりゃ疑うでしょ」

「ミランダが裁定者なら、アルフレッド殿下の婚約者に収まったりしないと思いますけど」

「裁定者って、王族を試すためならなんでもやるらしいよ。過去に王妃になった裁定者もいたらしいし」

「王妃になって身内になったら、裁定者をやめたのですか?」

「ううん。やめなかった。王妃になっても裁定者の役割が優先だったそうだよ。王妃の死後、いろんな記録が見つかって裁定者だと分かった。結構辛辣な事も書かれていたよ。裁定者は血縁関係なく次世代に引き継ぐ者を選んで役割を受け継ぐと分かったのは快挙だね。けど、それすら裁定者の掌の上だと思う。記録を残したのは、わざとさ。その頃の王族は、風紀が乱れていたそうだから」

「身内にも容赦しないなんて、裁定者とはなんなのでしょうね」

「我々も分からない。警告が来たら五年以内に改めないと、確実に潰されると言われている。私たちは、正しく政を行うしかない」

「警告ですか?」

「そ、警告。印は教えられないけど、目に余る行動をした王族には裁定者と分かる印がついた警告文が届く。猶予期間は五年。その間に成果を上げないと、王族は潰される。暗殺されたり、廃嫡されたり、理由は様々だけど王族として生きていくことは出来ない。裁定者を探し出そうと動いた王族もいた。けど、探そうとした時点で全員破滅している」

「王族の方々は、裁定者に怯えながら政治を行うしかないのですか?」

「そんなことないよ。民の為であれば、どんなに非情な決断をしても裁定者は動かない。きちんと民に目を向けていれば、裁定者に怯える必要なんてない」

「なるほど。エドガー様のような王族が裁定者の理想なのですね」

「そう見える?」

「はい。エドガー様は俺のような平民にも気さくに話して下さる。最初は怖い人だと思っていましたけど、今は違うと分かります」

「あんな出会い方だったし、最初はしょうがないでしょ」

「そうですね。俺も最初はエドガー様が怖かったです。でも、今は怖くない。エドガー様は民を思いやっている王族です。自分は正しいのだから裁定者に怯える必要などない。そう思っているように見えます」

「その通り。いま裁定者から警告が来れば、私は王族をやめるよ。どうやって民を導けばいいのか分からないじゃないか」

「その笑み、怖いです」

「ひっどいなぁ。どこが怖いのさ」

「何かを企んでいるように見えます」

「企んでいるけど、まだ秘密。ねぇ、トムは裁定者の目星がついているよね?」

「……ほんと、エドガー様は怖いですね。何で分かるのですか」

「内緒。教えてくれるよね?」

「先に、エドガー様の意見を聞かせて下さい」

 二人の意見は一致していた。

「私は、裁定者を見つけた最初の王族になれるかな?」

「裁定者を探したら、まずいのでは?」

「そうだよ。でも、今回は裁定者を探そうとしたわけじゃない。たまたま、気になる人物がいただけ。それに、今まで破滅していた王族たちは裁定者に脅えて、保身の為に裁定者を探そうとした。私は、違う。裁定者は怖くない。だから、問題ない」

「……ほんとに大丈夫ですか? エドガー様以外に、王の器を持つ王族はいませんよ」

「嬉しい誉め言葉だねぇ。大丈夫だよ。裁定者と、自分たちの仕事を信じよう」

「分かりました。それで、今後はどのように動きましょうか?」

「アルフレッドを隠し続けるのは困る。そろそろ、兄上に覚悟を決めて貰おう」

 トムは城に戻り、エドガーの命令通り仕事を続けた。一週間経過した頃、とある人物に呼び出された。
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