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24.まいた種

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 人混みから、険しい表情のバーナード侯爵と夫人が現れた。国王の顔が強張る。バーナード侯爵は、怒りを隠そうとせず周りを威圧した。

「バーナード侯爵……」

 夫人がすかさずミランダを抱きしめ、ヒースと共にミランダを守るように王の前に立ち塞がった。家長は真っ直ぐ王の目を見つめ、厳かな声で宣言した。

「謝罪など、不要です」

「し、しかしだな……」

「娘は今まで王家に尽くしてまいりました。アルフレッド殿下と心を通わせられなかったのは娘の落ち度かもしれませんが、婚約破棄を宣言するのではなく穏便に婚約を白紙にすることはできたでしょう。それをしなかったのは、王家が我々を軽んじているからですよね。ですから、謝罪は不要です。ミランダ、ヒース、帰るぞ」

「ま、待ってくれ!」

「国王陛下、これ以上ミランダを犠牲にするおつもりなら、我々にも考えがあります。ヒースが言った通り、我々は貴族の義務を果たしません」

 真珠は渡さない。そう告げるとアルフレッドが騒ぎ出した。

「その態度はなんだ! 貴族籍をはく奪しても良いのだぞ!」

 アルフレッドの発言に、王とエドガーが固まった。先に口を開いたのはエドガーだ。

「アルフレッド、貴族籍のはく奪は王族の一存でできるものではない。半数以上の貴族の承認がいる。これ以上恥を広げるな。お前は、ミランダに感謝していたのではないのか? ソフィア嬢を側妃に推薦したのは王妃様のようだが、これではまるでソフィア嬢を正妃にしたいためにミランダの罪を捏造していたようではないか。ミランダが代筆をしていたのはお前の勘違いだったようだが、実は勘違いではなく、お前の作戦だったのではないか?」

 叔父の質問に、アルフレッドが固まる。その通りだから、何も言えない。黙れば黙るほどアルフレッドは疑われる。

 国王は慌てて、温和な笑みを浮かべ事態を収束させようとした。

「エドガー、今ここでアルフレッドを責めても仕方ない。ミランダは何一つ悪くない。ミランダはいつも息子を支えてくれていた。そんなミランダに勘違いとはいえ疑いの目を向け、婚約破棄を宣言したのは間違いなくアルフレッドの落ち度だ。バーナード侯爵、大事なご令嬢をお預かりしたのにこの体たらく。本当に申し訳なかった。息子を再教育すると約束する」

 これ以上アルフレッドが余計な事を言わないように、王は頭を下げるとすぐに会場を出て行った。もちろん、アルフレッドを連れて。逃げようとしたソフィアはエドガーが捕まえて連行して行った。

「再教育ですか」

 バーナード侯爵がポツリと呟いた一言は、会場内にいた貴族の心に深く突き刺さった。
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