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第二章 白雪姫の誕生日

2.お兄様登場

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「カタリーナ! 元気だったか?!」

「ええ。とっても元気ですわ。こちら、夫のフリッツ様です。とてもお優しい方ですわ。そしてこちらが……わたくしの世界一可愛い娘、白雪ことマルガレータです!」

お兄様に、白雪を紹介する。
大丈夫。白雪はマナーも完璧でこんなに可愛いんだもの。お兄様だってすぐに白雪を好きになるわ。

『完全に国王サマの事忘れてるじゃねーか』
『良いでしょ。紹介はしたんだから』
『可哀想になってきたわ。助けてなんて、やんねーけどよ』

鏡が呆れながら、白雪の周りを確認してくれてる。白雪は、完璧なお辞儀でお兄様に挨拶をしているわ。

「初めまして。マルガレータ・フォン・ヴァルデックと申します。本日はわたくしの誕生日を祝って頂き、誠にありがとうございます。お祝いに頂いた美しい髪飾りを付けてみましたの。いかがですか?」

「……ふむ。よく似合っている。カタリーナから黒髪の美しい少女だと聞いていたが……妹の贔屓目ではなかったのだな」

「お兄様! 白雪は世界一美しいのですわ!」

これだけは譲れない。
白雪は、世界一可愛いわ!

「分かった分かった。確かに美しい少女だ。だが、カタリーナも美しい。そう思わないか? フリッツ殿」

「はい! とても美しく聡明で、優しい素晴らしい女性です! 私は、世界一幸せな男です!」

フリッツ様は、背筋を正してお兄様に向き合う。結婚式の時とは大違いね。あの最悪な結婚式のあと、お兄様はわたくしを連れて帰ると大騒ぎしたわ。困ったら魔法で帰るから大丈夫と宥めて、お父様が引きずるようにお兄様を連れて帰った。

あの後、怒ったお兄様はお父様から王位を奪い取った。お父様とお義母様は、お兄様に離宮に軟禁されてるらしいわ。

ま、元々お父様はあんまり仕事してなかったし良いわよね。お兄様は、王位を継いだらわたくしを連れて帰ると騒いでいたから、たまに魔法で帰って大丈夫だからと安心させていた。

けど、お兄様はずっとわたくしを心配してくれている。最近は、鏡にも協力してもらって白雪の可愛さをアピールしているのだけど、いまだに連れて帰るってうるさいのよね。

白雪と離れるなんて嫌だってこの間お兄様の前で泣いちゃったから、諦めてくれると良いけど。お兄様は幼い頃からお優しいから、ついつい甘えてしまうのよね。

お兄様は、とてもわたくしに甘い。お母様がお亡くなりになって、お父様が引きこもって、お兄様に全ての責任がのしかかった。わたくしはすっかり忘れられていたわ。まるで以前の白雪のようね。魔女になって鏡を作るまで、わたくしは一人だった。一人だと、思ってた。けど、本当はずっとお兄様はわたくしを気にかけて下さっていた。鏡が教えてくれて、初めて知ったわ。

わたくしが魔女になるくらい孤独だったのだと知ったお兄様は、すっかりわたくしに甘くなってしまったわ。魔女になったわたくしを厄介払いしようとお父様が決めた縁談に大反対してくれた。結局お父様には逆らえなくて……けど、魔女になったわたくしの縁談はなかなか決まらなくて……何年も経ってからわたくしとフリッツ様の縁談が決まったわ。

お兄様は心配してたけど、この結婚は大成功よ。だって、可愛い娘ができたんですもの。

『なぁ、ちょっとは国王サマの事も話してやらねーと兄上が疑うぜ』

鏡の忠告にあせっていると、お兄様が満面の笑みでフリッツ様の肩に手を置いた。

「そうかそうか。まさか娘がいたとはなぁ……。まぁしかし、カタリーナが可愛がっているか良しとしよう。マルガレータ姫、我々も白雪姫様とお呼びしてもよろしいか?」

お兄様が、大袈裟に手を振り上げてお辞儀をする。身内である事を差し引いてもお兄様の仕草はとても美しく洗練されているわ。以前の白雪ならオドオドしていたかもしれない。けど、今の白雪は違う。鏡の特訓で、どんな色男の挨拶も優雅にあしらえるようになった。

「カタリーナお母様は、わたくしの大切な家族です。カタリーナお母様のご家族に白雪と呼んで頂けるなんて、嬉しいですわ」

白雪は本当に可愛いわぁ。

『緩んでるぞ』

う、また……!
もう、ここは人目もあるからしっかりしないと。そう思っていたら、無邪気な声がした。

「カタリーナおばさま! お久しぶりです! 見て! 頂いた髪飾りをつけてきたの!」

お兄様の娘、可愛い姪っ子がわたくしに抱きついてきた。
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