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第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!
25.親子
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「お母様! このアップルパイ、とっても美味しいですわ」
「良かった。そうだ、今日はお肉のソースにも林檎を使ったの。どうかしら?」
「最高です! お肉が柔らかくて美味しいですわ」
「白雪姫様、こちらはどうですか?」
「このサラダも美味しいです。鏡先生が作ったんですか?」
「いいえ、こちらは白雪姫様のお父様がお作りになられたのですよ」
白雪は、むすっとしている。そんな姿も可愛いわ。
「……お父様、美味しいです」
「そ、そうか! 良かった!」
あの後、鏡とわたくしで白雪と話をした。わたくし達は白雪の味方だと話をして会いたくなければ夫と会わなくて良いと最初に伝えたおかげで、話を聞いてくれた。
わたくし達がしばらくは別れないと聞くと、ホッとした様子だったから複雑な気持ちもあるのでしょう。簡単に父親を受け入れられないのは当然だ。
難しい部分はあると思う。割り切れと言うには2年は長過ぎるし、白雪の傷は深い。けど、もう白雪がひとりで寂しく過ごす事はない。わたくしも、鏡も居るし少しずつでも傷を癒やしていって欲しい。
「こ、これはどうだ? お母様が作ったんだぞ!」
「……わたくしのお母様は、ミレーユお母様だけじゃなかったんですの?」
やっぱり、簡単には許せないか。夫は、土下座して白雪に詫びている。
「申し訳なかった!」
「先生、これは?」
「土下座です。心から詫びる場合に使われます。ただし、それでも許せない場合は無理に許す必要はありません。許せないと思うなら、頭を踏んでみてはいかがですか?」
「か、鏡! 変な事教えないでちょうだい!!! 白雪、駄目だからね! 許さなくても良いけど、そんな下品なことしちゃ駄目よ!」
「はいっ! 分かりましたお母様っ!」
「……鏡殿、酷いじゃないか」
「白雪姫様の傷はそれほど深いと思いまして」
「確かに……その通りだ……! マルガレータ、申し訳なかった……!」
「許しませんわ。けど、お母様はお許しになったようですから以前のようにわたくしを白雪と呼ぶ事は許します」
「そ、そうか! ありがとう白雪!」
「鏡、どういう事?」
「白雪姫様という渾名は、ミレーユ様がお付けになったのですよ。陛下から白雪姫様と呼ばれたくないと言う白雪姫様の態度は、陛下を父親と認めたくないと言うお心の表れでしょう。先程のご発言は、僅かではありますがお父上を受け入れるお気持ちになられたという事でしょうね」
「せ、先生! 違いますっ! そんなんじゃありません!! お父様の事はまだ許さないんですからっ!」
真っ赤に頬を染めた白雪が、必死で否定する。か、可愛いぃぃ……!
「緩んでんぞ」
鏡が、ボソリと言う。う、あまりに白雪が可愛くて緩んでたわ。
「う……美しくなかったかしら?」
「そんな事ありません! お母様は世界一お美しいですわ!」
「……う、うむ。とても可愛らしいと……思う……」
夫が、ボソボソとわたくしを褒める。そんなに無理して褒めなくて良いのに。でも、褒められて悪い気はしない。
「ありがとうございます。ふたりとも」
「……俺は?」
「鏡はわたくしを褒めたりしないじゃない」
「……う、そうだけど……」
「鏡先生、先程からいつもと少し違いますね?」
「白雪、鏡殿は男性なんだ。だから、あまり気を許してはいかん」
「え、先生は男性なんですの?」
「……鏡、男性の姿を白雪に見せて」
「おう」
鏡が男性になった姿を見せると、白雪は頬を真っ赤に染めた。
「鏡先生?」
「はい。そうですよ」
「どっちが本当の先生なんですか?」
「どちらかと言うと、こっちですかね。でも、俺は鏡の精なので、特に性別が決まっている訳ではありません。この姿も、人の形を模っているに過ぎません」
「とっても、かっこいいです……。お母様と並ぶと美し過ぎて……まるで絵画の様ですわ……」
「白雪、鏡殿に惚れては駄目だ!」
「別に、鏡先生を男性として好きな訳ではありません! 大体、お母様ならともかく今までわたくしを放置していたお父様にとやかく言われたくありませんわっ」
「すまなかった……!」
「面と向かって許せないと言える関係までは改善したようですね」
「鏡先生! 余計な事言わないで下さい!」
「うむ、鏡殿は優秀だが余計な事を言い過ぎる」
「俺はご主人様の命令しか聞かねぇよ」
「お母様ぁ……! 鏡先生が意地悪なんですの!」
「鏡っ! 白雪をいじめないでちょうだい!」
「だから色々甘いんだって言ってんだろ!」
突然、白雪が一筋の涙を流した。
「白雪?! どうしたの?」
「嬉しいんです。こんなに幸せな時間を……また味わえるなんて……ミレーユお母様も……きっと喜んでますよね?」
「もちろんよ! こんな可愛い娘を残して逝くなんて心配で仕方なかったでしょう。少しでもミレーユお母様が安心して下さるように、白雪はこれからもっともっと幸せになりましょうね」
「はい……わたくしのお母様になって下さって……本当にありがとうございます……!」
白雪姫の物語は、王子様と出会ってめでたしめでたし。だけど目の前に居る白雪は、これから無限の未来がある。未来は鏡にも分からない。
だけどこれだけは言える。
白雪の未来は、物語よりも幸せに溢れている。だってわたくしが、白雪の幸せをサポートし続けるもの。
「良かった。そうだ、今日はお肉のソースにも林檎を使ったの。どうかしら?」
「最高です! お肉が柔らかくて美味しいですわ」
「白雪姫様、こちらはどうですか?」
「このサラダも美味しいです。鏡先生が作ったんですか?」
「いいえ、こちらは白雪姫様のお父様がお作りになられたのですよ」
白雪は、むすっとしている。そんな姿も可愛いわ。
「……お父様、美味しいです」
「そ、そうか! 良かった!」
あの後、鏡とわたくしで白雪と話をした。わたくし達は白雪の味方だと話をして会いたくなければ夫と会わなくて良いと最初に伝えたおかげで、話を聞いてくれた。
わたくし達がしばらくは別れないと聞くと、ホッとした様子だったから複雑な気持ちもあるのでしょう。簡単に父親を受け入れられないのは当然だ。
難しい部分はあると思う。割り切れと言うには2年は長過ぎるし、白雪の傷は深い。けど、もう白雪がひとりで寂しく過ごす事はない。わたくしも、鏡も居るし少しずつでも傷を癒やしていって欲しい。
「こ、これはどうだ? お母様が作ったんだぞ!」
「……わたくしのお母様は、ミレーユお母様だけじゃなかったんですの?」
やっぱり、簡単には許せないか。夫は、土下座して白雪に詫びている。
「申し訳なかった!」
「先生、これは?」
「土下座です。心から詫びる場合に使われます。ただし、それでも許せない場合は無理に許す必要はありません。許せないと思うなら、頭を踏んでみてはいかがですか?」
「か、鏡! 変な事教えないでちょうだい!!! 白雪、駄目だからね! 許さなくても良いけど、そんな下品なことしちゃ駄目よ!」
「はいっ! 分かりましたお母様っ!」
「……鏡殿、酷いじゃないか」
「白雪姫様の傷はそれほど深いと思いまして」
「確かに……その通りだ……! マルガレータ、申し訳なかった……!」
「許しませんわ。けど、お母様はお許しになったようですから以前のようにわたくしを白雪と呼ぶ事は許します」
「そ、そうか! ありがとう白雪!」
「鏡、どういう事?」
「白雪姫様という渾名は、ミレーユ様がお付けになったのですよ。陛下から白雪姫様と呼ばれたくないと言う白雪姫様の態度は、陛下を父親と認めたくないと言うお心の表れでしょう。先程のご発言は、僅かではありますがお父上を受け入れるお気持ちになられたという事でしょうね」
「せ、先生! 違いますっ! そんなんじゃありません!! お父様の事はまだ許さないんですからっ!」
真っ赤に頬を染めた白雪が、必死で否定する。か、可愛いぃぃ……!
「緩んでんぞ」
鏡が、ボソリと言う。う、あまりに白雪が可愛くて緩んでたわ。
「う……美しくなかったかしら?」
「そんな事ありません! お母様は世界一お美しいですわ!」
「……う、うむ。とても可愛らしいと……思う……」
夫が、ボソボソとわたくしを褒める。そんなに無理して褒めなくて良いのに。でも、褒められて悪い気はしない。
「ありがとうございます。ふたりとも」
「……俺は?」
「鏡はわたくしを褒めたりしないじゃない」
「……う、そうだけど……」
「鏡先生、先程からいつもと少し違いますね?」
「白雪、鏡殿は男性なんだ。だから、あまり気を許してはいかん」
「え、先生は男性なんですの?」
「……鏡、男性の姿を白雪に見せて」
「おう」
鏡が男性になった姿を見せると、白雪は頬を真っ赤に染めた。
「鏡先生?」
「はい。そうですよ」
「どっちが本当の先生なんですか?」
「どちらかと言うと、こっちですかね。でも、俺は鏡の精なので、特に性別が決まっている訳ではありません。この姿も、人の形を模っているに過ぎません」
「とっても、かっこいいです……。お母様と並ぶと美し過ぎて……まるで絵画の様ですわ……」
「白雪、鏡殿に惚れては駄目だ!」
「別に、鏡先生を男性として好きな訳ではありません! 大体、お母様ならともかく今までわたくしを放置していたお父様にとやかく言われたくありませんわっ」
「すまなかった……!」
「面と向かって許せないと言える関係までは改善したようですね」
「鏡先生! 余計な事言わないで下さい!」
「うむ、鏡殿は優秀だが余計な事を言い過ぎる」
「俺はご主人様の命令しか聞かねぇよ」
「お母様ぁ……! 鏡先生が意地悪なんですの!」
「鏡っ! 白雪をいじめないでちょうだい!」
「だから色々甘いんだって言ってんだろ!」
突然、白雪が一筋の涙を流した。
「白雪?! どうしたの?」
「嬉しいんです。こんなに幸せな時間を……また味わえるなんて……ミレーユお母様も……きっと喜んでますよね?」
「もちろんよ! こんな可愛い娘を残して逝くなんて心配で仕方なかったでしょう。少しでもミレーユお母様が安心して下さるように、白雪はこれからもっともっと幸せになりましょうね」
「はい……わたくしのお母様になって下さって……本当にありがとうございます……!」
白雪姫の物語は、王子様と出会ってめでたしめでたし。だけど目の前に居る白雪は、これから無限の未来がある。未来は鏡にも分からない。
だけどこれだけは言える。
白雪の未来は、物語よりも幸せに溢れている。だってわたくしが、白雪の幸せをサポートし続けるもの。
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