21 / 32
第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!
21.教えてお母様
しおりを挟む
「やです! お父様なんて知りません!」
「お父様がおかしかったのは叔母様の魔法のせいだったの。だからその……少しだけお父様の話を聞いてあげて欲しくて……」
「鏡先生から聞きました。魔法はそんなに長続きしないでしょう? お父様は顔も忘れるくらい会ってませんでした。わたくしを構ってくれたのはお母様だけです! わたくしの家族はお母様だけです!」
とりあえず国王を返して、白雪と話をしたんだけど……白雪は相当父親を嫌っている。ここまで明確に拒絶されていたら、無理に仲良くなれなんて言えないわね。
例え家族でも、受け入れられない事はあるもの。わたくしが無理矢理白雪を説得して父親と話をさせたら、余計拗れてしまう。
「……分かったわ。白雪は、お父様と会いたくないのね?」
「はい。わたくしはお母様さえ側に居てくれたらそれで良いのです!」
「わたくしは白雪の母よ。ちゃんと側に居るわ。無理にお父様と会えとも言わない。この城は白雪の物なんだから白雪が拒否した人は入れないわ。安心して」
白雪は成人したら誰かと家庭を築くだろう。姫なのだから、それなりのお相手と結婚すると思う。それまでは白雪を全力で守り抜くわ。仕事の合間に魔法の研究も進めている。今までの結界魔法や防護魔法を駆使して永続的に城を守れるようにするつもり。もちろん、城の外に出る時の事も考えて白雪の身体にも常に防護魔法をかけている。
「わたくしはずーっとお母様と一緒が良いです!」
やっぱり子どもの時に母親を亡くして、父親に放置された傷は深いみたいね。このくらいの歳なら親離れし始めて、親を鬱陶しく思う場合もあるのに、白雪はまるで幼い子どものように甘えてくる。
たまに一緒のベッドで眠りたいとか、仕事より自分を構って欲しいとか言ってくる事もあるわ。その度に白雪を優先する。そうすると、白雪は安心してくれる。きっと、試し行動の一種よね。もっと酷い我儘を言ったり困らせたりする事も覚悟してたけど、白雪の行動は大して困らない。愛しさが増していくばかりだわ。
もしかして、まだわたくしに遠慮してるのかしら。
「白雪が望む限り、わたくしは白雪の側にいる。だから、安心して好きに過ごしなさいな」
「ありがとうございますお母様! もうお父様の事は放っておきましょう」
「白雪は会いたくないなら例え父親でも会わなくて良い。貴女にはそれくらい言う権利があるわ。けど、わたくしは夫婦として夫と向き合わないといけないの。それに、お父様は国王よ。今のままで良いわけない。この城には入れないから、外で会って今後の話をしてくるわね」
「お父様は、必ず離婚すると仰いました! 今までだってずーっと引きこもってて何にもしてなかったんだから大丈夫ですわ! 今後縁が切れる男なんて放っておきましょう!」
「陛下と離婚したらわたくしは白雪の母ではなくなってしまうわよ」
「大丈夫です! お母様はわたくしの養育権を持っていますよね? だから、離婚してもお母様はわたくしのお母様のままですわ!」
「え、そうなの?」
「はい! 鏡先生と宰相様に確認しました! 我が国の法律では、養育権を持つ大人は子どもの母や父となります。養子縁組と同じ扱いですね」
「わたくしは誰と結婚しようが、独り身だろうが白雪の母でいられるの?」
「間違いなくそうです! 心配なら、明日にでも鏡先生に確認してみてください!」
「なんで鏡に聞くの……?」
「だって、お母様は鏡先生の事を信頼なさっているご様子ですもの。他の方のお言葉は必ず確認や調査をなさるのに、鏡先生の話はすぐに信じてらっしゃいますよね」
あ、あぅ。確かにそうかも。
そうか、白雪は鏡の正体を知らないから……。もう国王にもバラしちゃったし白雪にも教えようかしら。あの男が知ってるのに白雪が知らないなんて許せないもの。
「あ、あのね白雪。鏡は人間じゃないの。わたくしが作った、鏡の精なの。だから、鏡はわたくしには噓を吐かないの」
「やっぱりそうなんですね!」
「え、やっぱりって……」
一世一代の告白だった筈なのに、あっさりと受け入れられて戸惑う。
「だって、鏡先生は今までの先生と違い過ぎましたもの。今までの家庭教師の先生より所作も優雅で、貴族じゃないのに貴族達の事を知り過ぎていました。特に叔母様の事は宰相様も知らなかった。叔母様は、上手く隠していたんです。それを簡単に暴いて証拠も揃えるなんて、人間業じゃありません。だから、鏡先生は人間じゃないみたいって言ったんです」
「う……鏡はなんて答えたの?」
「その質問には答えられない。知りたいならお母様から聞くようにって仰いました。だから、先生が人間じゃない事は知ってました。お母様が言わないなら聞かない方がいいと思って黙っていたんです」
「そうだったのね。白雪に気を遣わせて申し訳なかったわ」
「良いんです。お母様にだって秘密はあるでしょうから。けど……わたくしはお母様の事をもっと知りたいのです! 教えて下さい。お母様の事を全部」
輝く目で質問してくる白雪に、ついついなにもかも話してしまったわ。
「お父様がおかしかったのは叔母様の魔法のせいだったの。だからその……少しだけお父様の話を聞いてあげて欲しくて……」
「鏡先生から聞きました。魔法はそんなに長続きしないでしょう? お父様は顔も忘れるくらい会ってませんでした。わたくしを構ってくれたのはお母様だけです! わたくしの家族はお母様だけです!」
とりあえず国王を返して、白雪と話をしたんだけど……白雪は相当父親を嫌っている。ここまで明確に拒絶されていたら、無理に仲良くなれなんて言えないわね。
例え家族でも、受け入れられない事はあるもの。わたくしが無理矢理白雪を説得して父親と話をさせたら、余計拗れてしまう。
「……分かったわ。白雪は、お父様と会いたくないのね?」
「はい。わたくしはお母様さえ側に居てくれたらそれで良いのです!」
「わたくしは白雪の母よ。ちゃんと側に居るわ。無理にお父様と会えとも言わない。この城は白雪の物なんだから白雪が拒否した人は入れないわ。安心して」
白雪は成人したら誰かと家庭を築くだろう。姫なのだから、それなりのお相手と結婚すると思う。それまでは白雪を全力で守り抜くわ。仕事の合間に魔法の研究も進めている。今までの結界魔法や防護魔法を駆使して永続的に城を守れるようにするつもり。もちろん、城の外に出る時の事も考えて白雪の身体にも常に防護魔法をかけている。
「わたくしはずーっとお母様と一緒が良いです!」
やっぱり子どもの時に母親を亡くして、父親に放置された傷は深いみたいね。このくらいの歳なら親離れし始めて、親を鬱陶しく思う場合もあるのに、白雪はまるで幼い子どものように甘えてくる。
たまに一緒のベッドで眠りたいとか、仕事より自分を構って欲しいとか言ってくる事もあるわ。その度に白雪を優先する。そうすると、白雪は安心してくれる。きっと、試し行動の一種よね。もっと酷い我儘を言ったり困らせたりする事も覚悟してたけど、白雪の行動は大して困らない。愛しさが増していくばかりだわ。
もしかして、まだわたくしに遠慮してるのかしら。
「白雪が望む限り、わたくしは白雪の側にいる。だから、安心して好きに過ごしなさいな」
「ありがとうございますお母様! もうお父様の事は放っておきましょう」
「白雪は会いたくないなら例え父親でも会わなくて良い。貴女にはそれくらい言う権利があるわ。けど、わたくしは夫婦として夫と向き合わないといけないの。それに、お父様は国王よ。今のままで良いわけない。この城には入れないから、外で会って今後の話をしてくるわね」
「お父様は、必ず離婚すると仰いました! 今までだってずーっと引きこもってて何にもしてなかったんだから大丈夫ですわ! 今後縁が切れる男なんて放っておきましょう!」
「陛下と離婚したらわたくしは白雪の母ではなくなってしまうわよ」
「大丈夫です! お母様はわたくしの養育権を持っていますよね? だから、離婚してもお母様はわたくしのお母様のままですわ!」
「え、そうなの?」
「はい! 鏡先生と宰相様に確認しました! 我が国の法律では、養育権を持つ大人は子どもの母や父となります。養子縁組と同じ扱いですね」
「わたくしは誰と結婚しようが、独り身だろうが白雪の母でいられるの?」
「間違いなくそうです! 心配なら、明日にでも鏡先生に確認してみてください!」
「なんで鏡に聞くの……?」
「だって、お母様は鏡先生の事を信頼なさっているご様子ですもの。他の方のお言葉は必ず確認や調査をなさるのに、鏡先生の話はすぐに信じてらっしゃいますよね」
あ、あぅ。確かにそうかも。
そうか、白雪は鏡の正体を知らないから……。もう国王にもバラしちゃったし白雪にも教えようかしら。あの男が知ってるのに白雪が知らないなんて許せないもの。
「あ、あのね白雪。鏡は人間じゃないの。わたくしが作った、鏡の精なの。だから、鏡はわたくしには噓を吐かないの」
「やっぱりそうなんですね!」
「え、やっぱりって……」
一世一代の告白だった筈なのに、あっさりと受け入れられて戸惑う。
「だって、鏡先生は今までの先生と違い過ぎましたもの。今までの家庭教師の先生より所作も優雅で、貴族じゃないのに貴族達の事を知り過ぎていました。特に叔母様の事は宰相様も知らなかった。叔母様は、上手く隠していたんです。それを簡単に暴いて証拠も揃えるなんて、人間業じゃありません。だから、鏡先生は人間じゃないみたいって言ったんです」
「う……鏡はなんて答えたの?」
「その質問には答えられない。知りたいならお母様から聞くようにって仰いました。だから、先生が人間じゃない事は知ってました。お母様が言わないなら聞かない方がいいと思って黙っていたんです」
「そうだったのね。白雪に気を遣わせて申し訳なかったわ」
「良いんです。お母様にだって秘密はあるでしょうから。けど……わたくしはお母様の事をもっと知りたいのです! 教えて下さい。お母様の事を全部」
輝く目で質問してくる白雪に、ついついなにもかも話してしまったわ。
8
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】真実の愛はおいしいですか?
ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。
稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。
王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。
お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。
でも、今は大きくなったので見えません。
―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語
※童話として書いています。
※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる