鏡よ鏡、うちの白雪が世界一美しいわよね?!

編端みどり

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第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!

16.鏡、バラす

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叔母様と呼ばれた方は、あっという間に粛正された。国王が全てやった。それはもう鮮やかな手腕だったわ。白雪に渡るはずだったドレス、宝飾品、ミレーユ王妃の名義だった別の城に沢山の金銭。国王は心からミレーユ王妃を愛していてかなりの財産があった。換算すると1年くらいは国を運営して使用人を全て雇えるんじゃないかって位のお金が全て白雪のものになったわ。

「どうだ、宰相。私はちゃんと働けるだろう?」

ドヤ顔の国王を冷めた目で見る宰相。

「さようでございますね」

「だから仕事は私がやる。あんな悪女は要らん」

周りの殺気に気が付かない国王は、呑気に笑っている。白雪が笑顔で父親に笑いかける。けど、その笑みが怖い。背後でニヤニヤしてる鏡が居るし!

「お父様、あのお城はわたくしが貰ってよろしいんですよね?」

「もちろんだ! 今まですまなかったな」

「悪かったと思うなら、わたくしのお願いを聞いて下さいますか?」

「ああ、なんでも言ってくれ!」

「本当に、なんでも叶えて下さいますか?」

「うむ。今までの詫びだ。だから、あんな悪女でなく私を頼ってくれ」

「では、城の者を全員連れて叔母様が使っておられた城へ移りますね。お父様はここでしっかりお仕事なさってくださいませ。今まで通り、週に1回宰相様に来て頂きましょう。文官は全員連れて行きます。お父様の護衛は要りますから、騎士達は交代でお父様の護衛として残ってくれるそうですよ。良かったですね」

「……え」

「お母様!! これなら使用人達もクビになりませんし、お仕事も滞りませんわ! あの城は空っぽですから、今までより少し狭いですけど使用人達は全員住めます」

「落ち着いて白雪! 引越しは手間も時間もかかるでしょ?! それに、せっかくお父様が元気になられたんだから仲良くしましょうよ」

わたくしの魔法なら一発だけどそれは言えないし。何台の馬車が要る? ふたつの城は近いから国の運営はそんなに困らない。けど、普通に引越ししたら半年はかかる。お金も勿体無いし。

白雪は、頬を膨らませてわたくしの腕に抱きつく。う……か、可愛いっ……。

「嫌です。あんな人知りません。引っ越しはお母様の魔法ならすぐでしょう? 鏡先生に聞きましたわ。わたくしは絶対にお母様と一緒が良いです」

か、鏡ぃぃぃ……なんでバラすのよ!!!
鏡は、わたくしが睨んでもどこ吹く風で飄々と笑う。

「女王様が魔法を使える事は国王陛下以外は全員ご存知ですよ。魔法に頼るようになってはいけないと我々の為に使わないでいて下さった事も知っています。ですが、今回ばかりはよろしいのでは? 白雪姫様の初めての我儘でございますよ」

う。そんな事言われたら叶えたくなるじゃない。白雪は、とっても良い子なの。我儘なんて一回も言わなかった。苦手な食べ物も頑張って食べてるし、あんなに酷い家庭教師も庇っていた。本当は白雪を打った家庭教師は国から追い出してやろうと思ってたのに、白雪が庇うからなにもしない事にしたの。

そんな良い子がおねだりしてきたら……完敗よ。

「お母様、わたくしと一緒にお引越ししましょう! お願いです! わたくし、お母様と一緒が良いのです!」

何度もわたくしと一緒が良いと言われ、涙目で強請る白雪に勝てる方法があれば教えて欲しい。

「みんなは、納得してるの?」

誰か反対しないかと聞いてみたけど、誰も反対しない。それどころかニコニコと賛成している。唯一反対しそうなわたくしの夫は、呆然として固まってる。白雪は、わたくしや使用人達には優しく微笑むのに、父親は完全無視。

これ、相当怒ってるわよね。思春期の娘に嫌われる父親はあるあるだけど、そんな甘いものじゃないわよね。どうしよう……わたくしが悪役を演じれば仲良くなれる段階は過ぎ去ってるわ……。

なんとかならないかと口を開こうとすると、鏡がわたくしの前に立ち、人差し指で唇をそっと押さえウインクした。

「女王様、観念して魔法を使って下さい」

「……分かったわ」

「やった! ありがとうお母様! 大好きよ!」

くっ……! さすが白雪……! 笑顔も世界一可愛いわ!

「女王様、国王陛下の護衛は私ひとりでお願いします。城の外に居る騎士は転移しなくて大丈夫です。みんな、手筈通り頼む」

「「「「はっ!」」」」

騎士団長も、宰相も、使用人も文官も……。みんな引越し準備をしてる。もう良い! やってやるわよ!

「この城に居る者はみんな納得してるんでしょうね?」

「もちろんですよ。女王様。この城に居る国王陛下以外の方は女王様の魔法で引越しする事に同意しておられます」

鏡がニヤニヤと笑う。鏡が言うなら嘘ではないのだろう。くっ……後で覚えてなさいよ。わたくしは諦めて魔法を起動する。

夫と騎士団長を残し、全員が城から消えた。
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