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第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!
15. 美人の冷たい表情は怖い
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「陛下! 一体なにを考えておられるのですか!! 女王様を追い出したら、誰が執務をするというのです!」
「私がやる。以前も私1人でやっていたんだ。問題ない」
「2年もブランクがある方に大事な執務を全てお任せする訳には参りません。せめて、女王様を補佐に付けて下さい」
「ならん! こいつは悪女だ!!」
「女王様は悪女ではありません! 確かに、最初は私も疑いました! ですが違ったのです! 女王様は聖女です。こんなにお優しい方はいらっしゃいませんよ!」
わたくしが出て行くと分かると、まず宰相が大反対した。騎士団長は視線だけで人を殺せるんじゃないかって目で睨んでるけど、なにも言わない。けど、だいぶ怒ってるかも。こんな時に黙ってる人は要注意なのよね。ある日プツンとキレる。そうなったらもう取り返しはつかない。
「やっと出てきたと思ったら何なの?」
「女王様に嫉妬してるんじゃない?」
侍女頭が大量のメイドや侍女を引き連れて現れた。みんな明らかに不満そうで、新人の者達は堂々と国王の悪口を言っている。
そんな事したらクビになっちゃうわ。
「口を慎みなさい。国王陛下の命令は絶対よ」
「「「納得出来ません! 女王様を追い出すなら、私達も辞めます!」」」
そんな事したらホントにクビになるわよ。この世界、ボイコットやストライキなんて概念はないのよ。雇用主に逆らったらクビ。だから、使用人達は心配していても白雪を助けられなかった。このポンコツ国王が、引き篭もってて自分の考えを言わないからみんな白雪を大事にしたらクビになると思って何もできなかったのに。
けど、わたくしの心配をよそに使用人達は慇懃無礼な態度で国王に向き合う。
「使用人全員で話し合いました。全員、女王様を追い出すなら辞めさせて頂きます」
「ちょっと待って! 城で働いている人達は1000人を越えるわ。家庭がある人も、それぞれ事情を抱えてる人もいる! わたくしの為に辞める必要はないわ!」
「女王様はやはりお優しい。我々の事を把握して下さっている。正確に何名居るかご存知ですか?」
「1125人だったかしら。あ、昨日1人増えたわね。1126人ね」
「正解です」
「……嘘だろ。使用人の入れ替わりまで把握してるのか?」
そんなの当然じゃない。わたくしは美しいんだから自分の部下の事くらい把握してないといけないわ。メイド達の中に隠れていた白雪が頬を膨らませて父親を睨む。
「お父様、これでもお母様が悪女だと言いますか? お母様を追い出すのならわたくしも出て行きます。城の者も全員連れて行きます。みんな、わたくしに賛同してくれました。お父様はどうぞ誰も居ないこの城でお一人でお過ごし下さいませ。食事も出てきませんし、世話をする者をおりませんけど構いませんわよね。今までだって、部屋に篭っておられたのですから」
白雪が怒ってる。美人の冷たい表情ってこんなに怖いのね。隣で鏡がニヤニヤしてる。使用人を説得するなんて考え、まだ子どもの白雪にはない。絶対あの男……今は女だったわね……が糸を引いてるに決まってるわ。
鏡の仕業なら何か策があるのかもしれないけど、大量の使用人を引き連れて行くなんて現実的じゃない。
白雪は、完全に父親を嫌っている。なんでよ! わたくしが悪者になれば親子が仲良くなるんじゃなかったの?!
「落ち着いて白雪。使用人を全員連れて行ってどうするの? 城に住み込みの人も多いのよ。1000人以上の使用人を路頭に迷わせるつもり?」
「大丈夫です! わたくしが雇いますわ!」
「そんなお金ないでしょう?! それに、わたくし達の仕事は民を守る事。使用人だけじゃない。文官も騎士も居るのよ。仕事をしなければ困る人がたくさん居るわ。わたくしひとりが出て行けば良いんだから貴女は気にしないで。お友達も増えたでしょう? 大丈夫、貴女ならやれるわ」
「嫌です。お母様が居ないと頑張れません。それに、使用人の住む場所は問題ありません。文官や騎士にも話を通しました。お父様、ミレーユお母様の持ち物は全てわたくしの物、以前そう仰いましたよね?」
「あ、ああ……確かにそう言ったが……」
「ですが、わたくしはなにも持っておりません。鏡先生が調査して下さったのですが、本来ミレーユお母様から受け継ぐ筈だった不動産や金品などは全てとある女性に持って行かれておりました。全て取り返します。よろしいですね?」
「それは由々しき事態だ。ミレーユは全てマルガレータに渡すようにと頼んでいたのに。ミレーユの最後の願いだ。叶えるに決まっているだろう。誰だ。そんな事をした愚か者は」
「叔母様ですわ」
「姉上か……」
白雪の敵になりそうな叔母がいたなんて聞いてない。思わず鏡を睨むと意地悪そうに笑ってる。あの鏡の笑顔……絶対知ってたな……! 何で言わないのよっ!
「私がやる。以前も私1人でやっていたんだ。問題ない」
「2年もブランクがある方に大事な執務を全てお任せする訳には参りません。せめて、女王様を補佐に付けて下さい」
「ならん! こいつは悪女だ!!」
「女王様は悪女ではありません! 確かに、最初は私も疑いました! ですが違ったのです! 女王様は聖女です。こんなにお優しい方はいらっしゃいませんよ!」
わたくしが出て行くと分かると、まず宰相が大反対した。騎士団長は視線だけで人を殺せるんじゃないかって目で睨んでるけど、なにも言わない。けど、だいぶ怒ってるかも。こんな時に黙ってる人は要注意なのよね。ある日プツンとキレる。そうなったらもう取り返しはつかない。
「やっと出てきたと思ったら何なの?」
「女王様に嫉妬してるんじゃない?」
侍女頭が大量のメイドや侍女を引き連れて現れた。みんな明らかに不満そうで、新人の者達は堂々と国王の悪口を言っている。
そんな事したらクビになっちゃうわ。
「口を慎みなさい。国王陛下の命令は絶対よ」
「「「納得出来ません! 女王様を追い出すなら、私達も辞めます!」」」
そんな事したらホントにクビになるわよ。この世界、ボイコットやストライキなんて概念はないのよ。雇用主に逆らったらクビ。だから、使用人達は心配していても白雪を助けられなかった。このポンコツ国王が、引き篭もってて自分の考えを言わないからみんな白雪を大事にしたらクビになると思って何もできなかったのに。
けど、わたくしの心配をよそに使用人達は慇懃無礼な態度で国王に向き合う。
「使用人全員で話し合いました。全員、女王様を追い出すなら辞めさせて頂きます」
「ちょっと待って! 城で働いている人達は1000人を越えるわ。家庭がある人も、それぞれ事情を抱えてる人もいる! わたくしの為に辞める必要はないわ!」
「女王様はやはりお優しい。我々の事を把握して下さっている。正確に何名居るかご存知ですか?」
「1125人だったかしら。あ、昨日1人増えたわね。1126人ね」
「正解です」
「……嘘だろ。使用人の入れ替わりまで把握してるのか?」
そんなの当然じゃない。わたくしは美しいんだから自分の部下の事くらい把握してないといけないわ。メイド達の中に隠れていた白雪が頬を膨らませて父親を睨む。
「お父様、これでもお母様が悪女だと言いますか? お母様を追い出すのならわたくしも出て行きます。城の者も全員連れて行きます。みんな、わたくしに賛同してくれました。お父様はどうぞ誰も居ないこの城でお一人でお過ごし下さいませ。食事も出てきませんし、世話をする者をおりませんけど構いませんわよね。今までだって、部屋に篭っておられたのですから」
白雪が怒ってる。美人の冷たい表情ってこんなに怖いのね。隣で鏡がニヤニヤしてる。使用人を説得するなんて考え、まだ子どもの白雪にはない。絶対あの男……今は女だったわね……が糸を引いてるに決まってるわ。
鏡の仕業なら何か策があるのかもしれないけど、大量の使用人を引き連れて行くなんて現実的じゃない。
白雪は、完全に父親を嫌っている。なんでよ! わたくしが悪者になれば親子が仲良くなるんじゃなかったの?!
「落ち着いて白雪。使用人を全員連れて行ってどうするの? 城に住み込みの人も多いのよ。1000人以上の使用人を路頭に迷わせるつもり?」
「大丈夫です! わたくしが雇いますわ!」
「そんなお金ないでしょう?! それに、わたくし達の仕事は民を守る事。使用人だけじゃない。文官も騎士も居るのよ。仕事をしなければ困る人がたくさん居るわ。わたくしひとりが出て行けば良いんだから貴女は気にしないで。お友達も増えたでしょう? 大丈夫、貴女ならやれるわ」
「嫌です。お母様が居ないと頑張れません。それに、使用人の住む場所は問題ありません。文官や騎士にも話を通しました。お父様、ミレーユお母様の持ち物は全てわたくしの物、以前そう仰いましたよね?」
「あ、ああ……確かにそう言ったが……」
「ですが、わたくしはなにも持っておりません。鏡先生が調査して下さったのですが、本来ミレーユお母様から受け継ぐ筈だった不動産や金品などは全てとある女性に持って行かれておりました。全て取り返します。よろしいですね?」
「それは由々しき事態だ。ミレーユは全てマルガレータに渡すようにと頼んでいたのに。ミレーユの最後の願いだ。叶えるに決まっているだろう。誰だ。そんな事をした愚か者は」
「叔母様ですわ」
「姉上か……」
白雪の敵になりそうな叔母がいたなんて聞いてない。思わず鏡を睨むと意地悪そうに笑ってる。あの鏡の笑顔……絶対知ってたな……! 何で言わないのよっ!
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